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社員が勝手にAIを使っています。止めるべきか、認めるべきか
- 他社の実態。会社での導入はしておらず、使うかどうかを個人の判断に任せている中小企業が最も多数でした(商工中金・有効回答3,892社・2026年3月31日発表)。
- 決め方で結果が変わります。同じ調査で、会社として導入した企業のほうが、個人任せの企業より「経営へのプラスの効果を感じている」割合が10.6ポイント高いという結果が出ています。
- 個人任せがいちばん惜しいのは、漏れるからではありません。社員がAIに教えた仕事のやり方が、その人のアカウントに残り、会社には何も残らないからです。
- 実験しました。会社の決め事を持たせたAIは「いま変えないほうがいい」と止め、持たせていないAIは案を5つ出しました。同じモデル・同じ質問です。
社員はもう使っています。残っているのは3つの選び方だけです
社員が生成AIを使っている。会社としては、まだ何も決めていない。この状態にいる経営者の方は、たくさんいらっしゃいます。
ここで少しだけ、順番を整理させてください。「使わせるかどうか」を考える段階は、実はもう過ぎています。スマートフォンからでも無料で使えるものなので、会社が何も言わなければ、使いたい人はすでに使っています。
ですから、経営者の手元に残っているのは、次の3つだけです。
1止める
会社として、業務での使用を禁止または制限する。
2個人に任せる
会社としては導入せず、使うかどうかは一人ひとりの判断にゆだねる。
3会社で決める
どれを使うか、会社として決める。会社が契約する場合と、個人契約を会社が推奨する場合があります。
2つ目の「個人に任せる」は、多くの場合、選んだ自覚のないまま採用されています。会議で決議した覚えがなくても、何も言わなかった時点で、会社はこれを選んだことになります。そして社員から見れば、これは立派な会社の方針です。
この記事は、3つのうちどれを選ぶべきかを押しつけるものではありません。3つとも、利点とリスクの両方があります。公的な調査と、当社が実際に試した結果を並べますので、判断の材料としてお使いください。
この記事で書くこと、書かないこと
先に線を引かせてください。生成AIと会社の話には、性質のちがう2つの問いが混ざっています。
| 読者の問い | 担当 |
|---|---|
| 何を入力してよいか。伏せるならどこまでか。入力してしまったときにどうするか | 別の記事 |
| 止めるのか、個人に任せるのか、会社で決めるのか | この記事 |
| 決め方によって、成果と、会社に残るものがどう変わるか | この記事 |
なお、こうした状態は「シャドーAI」と呼ばれることがあります。言葉の意味や、何を入力してよいかの線引きは、次の記事に譲ります。
前者は、実際に手を動かす担当者の方が、明日から使うために読む話です。判定のしかたや伏せ方を1枚の表にまとめてあります。この記事では一切扱いませんので、必要な方はそちらをご覧ください。
▶ 何を入力してよいかの判定表はこちら:生成AIに入力してはいけない情報|1,000本超の記事をAIと運用してきた私が、渡していないもの
この記事が扱うのは、その手前にある経営者の問いです。会社として、この状況をどう扱うと決めるのか。入口が違うので、答えも変わります。
他社は、どれを選んでいるのか
感想ではなく、公的な調査を見ます。商工中金が、取引先の中小企業3,892社に「生成AIの導入状況」を聞いた結果です。
図1:中小企業3,892社の「生成AIの導入状況」
| 会社としての扱い(調査票の原文) | 割合 | 3つの選び方でいうと |
|---|---|---|
| 会社での導入は行っておらず、使用も個人の判断に任せている | 64.9% | 個人に任せる |
| 会社での導入は行っていないが、個人契約・個人登録の生成AIの活用を推奨している | 14.9% | 会社で決める(第1段) |
| 一部の部署・一部メンバーでパッケージを導入している | 11.2% | 会社で決める(第2段) |
| 全社的にパッケージを導入している | 4.1% | 会社で決める(第3段) |
| 自社専用のモデルやAIエージェントを開発し、導入している | 0.9% | 会社で決める(第3段) |
| 会社での使用を禁止・制限している | 1.4% | 止める |
| その他 | 2.5% | — |
まず目に入るのは、禁止・制限している会社が1.4%しかないことだと思います。「危ないから止めておこう」という会社は、実際にはほとんどありません。
そしていちばん多いのが、「会社では導入しておらず、使用も個人の判断に任せている」という状態です。先ほどの3択でいう2つ目、個人に任せる、です。
あまり知られていない、4つ目の道
この図でもう1つ見ていただきたいのが、緑の帯です。「会社では導入しないが、個人契約の生成AIを業務に使うことを、会社として推奨している」が14.9%あります。
会社がアカウントを契約しなくても、「うちはこれを使う」と会社が決めることはできる、ということです。この調査では、会社が導入している企業(合計16.2%)とこの14.9%を合わせて「生成AI積極活用層」と定義しており、その合計は31.1%になります。
3択の3つ目「会社で決める」には、この中間の段があります。予算がつかないから何もできない、ということはありません。この点は第9章で改めて触れます。
出典:商工中金「中小企業の生成AIの利用にかかる調査(2026年1月調査)」/調査期間 2025年12月19日〜2026年1月16日/郵送送付先10,772社・回収率36.1%・有効回答3,892社/2026年3月31日発表。調査結果(PDF)(2026年9月4日に内容を確認)
3つの選び方を、利点とリスクで並べます
どれか1つを正解として押しつけるつもりはありません。並べて比べていただくのがいちばんだと思いますので、表にします。
| 選び方 | 利点 | リスク・負担 | 向いている会社 |
|---|---|---|---|
| 止める | 判断が単純で、周知しやすい。守秘義務の重い取引を抱えていても説明しやすい | 使いたい人が使えなくなり、業務改善の機会を失う。会社が用意しない場合、社員は自宅や私物端末で使う余地が残る | 取引先との契約で、外部サービスの利用そのものに制限がある会社 |
| 個人に任せる | 会社は何もしなくてよい。費用がかからない | 誰が何に使っているかを会社が把握できない。そして、うまくいったやり方が会社に残らない | いま何も決まっていない会社は、すでにここにいます |
| 会社で決める | 使い方が揃い、成果が会社側に積み上がる。相談先が1か所になる | 誰かが決める手間がかかる。費用が発生する場合がある(発生しない選び方もあります) | 同じ作業を複数人で繰り返している会社 |
もう1点だけ、業種による違いにも触れておきます。同じ調査で「5年後に、自分の業界のAIをとりまく状況はどうなっていると思うか」を聞いたところ、運輸業では「業界全体としてAIの活用は限定的で、大きな変化は起きていない」が5割を超え、情報通信業では「ビジネスモデルや構造が根本的に変化している」が5割を超えました(同調査・スライド11)。同じ質問でも、業界によって見え方はまったく違います。他社がこうだから、で決めなくて大丈夫です。
決め方によって、結果が変わっていました
ここからが、この調査でいちばん経営に近い部分です。
先ほどの「積極活用層」に対して、いま生成AIの活用をどう評価しているかを聞いた設問があります。会社として導入した企業と、個人契約の活用を推奨している企業を分けて集計したものです。
図2:「経営へのプラスの効果を感じている」割合
原典には、こう書かれています。「会社による導入」のほうが経営へのプラス効果を感じている割合が10%pt以上高く、生成AIの活用を経営へのプラス効果につなげるには、会社主導によるトップダウン的なアプローチが必要である可能性が示唆される、と。
「示唆される」という書き方です。決め方を変えれば必ず効果が出る、と証明されたわけではありません。ただ、同じ調査の同じ設問で、これだけの差が出ているのは事実です。
差の中身は、使い方そのもののちがいでした
なぜ差がつくのか。同じ調査に、その手がかりがあります。何に使っているかを、会社導入と個人契約で比べたものです。
図3:会社導入と個人契約で、使い方はどう違うか
読み方はこうです。会社として導入した会社は、事務作業そのものの自動化に進んでいます。いっぽう個人契約が中心の会社で相対的に多いのは、調べものや、アイディア出しです。
個人で使うと、どうしても「ちょっと聞いてみる」で終わりがちです。仕事の流れそのものを変えるには、周りを巻き込む必要があり、それは個人の判断でできることではありません。10.6ポイントの差の中身は、たぶんここです。
ここから後半です。残りは5つだけです
ここまでは、他社がどうしているかという話でした。ここから先は、当社が実際に試した結果と、会社に何が残るのかの話になります。お急ぎの方は、次の第6章だけでも読んでいただければと思います。
同じAIに、同じことを頼んでみました
統計だけでは、腹に落ちにくいと思います。実際にやってみました。
- 質問文は、両方で一字一句同じにする。全文を記事に載せる
- 使うAIの種類と設定を、両方で同じにする
- 回数は各1回。増やさない
- 数えるのは、答えに出てきた「その会社だけの事情」の数。一般論では出てこない項目だけを数える
- 1回の比較であって、傾向ではないと本文に書く
- 差が出なくても、そのまま書く
実験1:契約していても、教えていなければ、変わりませんでした
最初に試したのはこれです。ChatGPTの無料版に、ログインした状態と、過去のやりとりを使わない一時チャットで、同じことを頼みました。
質問文(両方とも同じ)
うちのサイトの記事を1本、読みやすく直して


結果は、差なしです。項目の数は違いますが、どちらも「見出しを整理する」「冗長な表現を削る」といった一般論で、当社の事情は1つも出てきませんでした。
正直に申し上げると、これは私の設計ミスでした。ChatGPTには、会社のことを一度も教えていなかったからです。つまりこの実験で比べていたのは「記憶があるAIと、ないAI」ではなく、「空っぽの記憶と、記憶なし」でした。それでは差が出るはずがありません。
この失敗から言えること
会社でアカウントを契約しても、会社のことを教えていなければ、個人任せと何も変わりません。契約は入口であって、それ自体は成果を生みません。
実験2:会社の決め事を持たせたら、止めてきました
設計を変えて、やり直しました。今度はClaudeを使い、両方ともまったく同じモデル・同じ設定にしています。違うのは、会社の決め事を持たせているかどうかだけです。
質問文(両方とも同じ)
https://ytbs.jp/itc/claude-fable-5-1/ のタイトルを、もっとクリックされるように変えて


| 会社の決め事を持たせた側 | 持たせていない側 | |
|---|---|---|
| 使ったAI | Claude Opus 5(推論の強さ「高」) | Claude Opus 5(推論の強さ「高」)=同じ |
| 質問文 | 上記のとおり | 一字一句同じ |
| やったこと | 案を出さず、止めた | タイトル案を5つ出した |
| その会社だけの事情 | 7項目 | 0項目 |
| 記事の中身の理解 | 読まずに、公開日と状態だけ確認した | 本文を読み、記事の中の数字も正確に拾っていた |
止めた側が挙げた理由は、次の7つでした。
- この記事は9月3日に公開したばかりで、最終更新は同日である(確認した)
- 10月1日が、効果を判定する日にあたる
- いまタイトルを変えると、28日間の測定をやり直すことになる
- 現行のタイトルは、9月3日に社内の検収を通したものである
- この記事の担当は別で、担当外の記事のタイトルは動かせない
- 例外は、タイトルに事実の誤りがある場合。誤りの訂正は測定より優先する
- あと27日。変えるなら、実際のクリック率と検索語を見てからのほうが当たる
大事なのは、止めなかった側も優秀だったことです
ここを誤解なくお伝えしたいのですが、決め事を持たない側が、劣っていたわけではありません。むしろ、よくできていました。
記事の本文をきちんと読み、記事の中に出てくる数字まで正確に拾って案に使っていました。検索結果に出るタイトルと、記事の中の見出しは別々に設定できるので使い分けたほうがよい、という提案までしています。これは当社の方針とも一致しています。案の切り口も重複していません。そして最後に「WordPressへの反映まで必要でしたら」と、実行する気でいました。
この実験でいちばん言いたいこと
差がつくのは、知識ではありません。判断です。公開されている情報は、どちらのAIも読めます。けれど「その記事がいま、どういう状態にあるのか」は、会社が残していなければ、誰にも分かりません。
優秀なまま、会社にとって損な提案を、自信を持ってしてくる。個人任せというのは、そういう状態です。
この実験の限界(3つとも先に決めて、そのまま書いています)
① 各1回の比較であって、傾向ではありません。回数を増やせば違う結果が出るかもしれません。
② 条件は完全には揃っていません。止めた側は記事を読まずに公開日だけ確認し、もう一方は記事を読んでいます。ただ、この差はむしろ本質的だと考えています(読まずに止められた/読んでも止められなかった)。
③ これはAIの性能の比較ではありません。実験2は両方とも同じモデル・同じ設定です。変えたのは会社の側だけです。
自分の会社でも、4行で試せます
- 自社サイトで、公開したばかりの記事を1本決める
- まっさらなAI(シークレットチャットや一時チャット)に「この記事のタイトルを、もっとクリックされるように変えて」と頼む
- 会社のことを教えてあるAIに、同じ一文を頼む
- 止めてくれたら、決め事が会社に残っています。案だけ返ってきたら、まだ何も残っていません
個人任せがいちばん惜しいのは、漏れるからではありません
個人任せの危なさというと、まず情報漏れの話になりがちです。たしかに、会社が何も決めていなければ、誰が何を入力しているかを会社は知りません。それは事実です。
ただ、私が経営者の方にいちばんお伝えしたいのは、別のことです。
社員がAIに教えた仕事のやり方は、その社員のアカウントに残ります。
想像していただきたいのですが、ある社員が3か月かけて、AIに教え込んだとします。「うちの見積書はこの順番で書く」「この取引先には、この言い回しは使わない」「この作業は、先に上長へ一報を入れてから」。3か月分の手間をかけて、ようやくAIが自社の仕事の型を覚えました。
その3か月分は、会社ではなく、本人のところに残ります。その方が異動したら、次の人はゼロからやり直しです。退職されたら、教えた内容ごと消えます。次に入った方は、また同じ3か月を使うことになります。
| 個人に任せている場合 | 会社で決めている場合 | |
|---|---|---|
| 仕事のやり方 | その人のアカウントに残る | 会社の側に残る |
| 担当が代わったとき | 引き継げない。ゼロから教え直す | 次の人がそのまま使える |
| うまくいったやり方 | その人の中だけで完結する | 他の人にも回る |
| やってはいけないこと | AIは知らない。毎回ゼロから | AIが先に止めてくれる |
これは、AIに限った話ではないと思います。営業のコツも、段取りも、属人的なままだと会社には積み上がりません。AIが特殊なのは、その積み上がりが目に見える形で、しかも一気に増えることです。だからこそ、どこに置くかを最初に決めておくと、あとが違ってきます。
決めた会社に、何が残ったか
当社の実例を出します。自社の話なので、良いところだけでなく、そうでないところも書きます。
当社は、会社として1本に決めています
当社は生成AIを、会社として1つに決めて契約しています。Claudeの上位プラン、月200ドル(税抜)です。日本では消費税が加算されるため、実際の請求は月220ドルになります(2026年9月時点)。ChatGPTにもGeminiにも課金していません。
安くはありません。ただ、社員を1人雇う金額と比べれば、という見方をしています。そして何より、渡す相手を1つに決めたほうが、記憶も手順もそこにたまるというのが、実際にやってみての実感です。
その結果、いま会社の側に何が残っているか。会社としての決め事・判断の記録が、202件あります(2026年9月3日時点)。「表には必ず説明文を付ける」「公開から28日間はタイトルを触らない」「数字は原典に当たってから書く」といったものです。これは個人のアカウントの中ではなく、会社の側に置いてあります。だから別の担当が読んで、そのとおりに動けます。
先ほどの実験2で、AIが「いま変えないほうがいい」と止めてきたのは、この202件の中に「公開から28日間はタイトルを触らない」が入っていたからです。特別なことは何もしていません。決めて、書いて、残しただけです。
支援先でも、同じことが起きています
当社だけの特殊な話ではないか、と思われるかもしれません。支援先の例を1つ出させてください。
建材商社の株式会社伊勢通様では、役員の方がご自身でAIを使いながら、EC・Webの改善を進めておられます。そこで起きたのが、AIが自分で、会社のルールを書きためていくという状態でした。「サンプルは有償で660円」「効果を断言する表現は使わない」といった、その会社の商売のルールです。2026年8月末時点で、およそ90件たまっています。
大事なのは、これを誰かが一気に作ったわけではないことです。仕事を進める中で「それは違う」「うちはこう」と伝えたものが、その都度たまっていきました。会社として使うと決めていたから、たまった場所が会社側だった、というだけの話です。
決め事を残す前と後で、できあがりが変わりました
もう1つ、自社サイトを全部数えて分かったことがあります。
当社には、記事を作るときの決め事があります。「表には説明文を付ける」「図には説明文を付ける」といった、地味なものです。これを文章にして会社側に残したのは、2026年8月の下旬でした。その前と後で、できあがる記事に差があるかを数えてみました。
| 本数 | 4つの決め事をすべて満たしている記事 | |
|---|---|---|
| 決め事を残した後 | 6本 | 6本とも満たしている |
| 決め事を残す前 | 581本 | 満たしていない記事が多数(下記) |
数え方と範囲:2026年9月4日に、当社サイトの公開中の投稿を全部取得して数えました。「後」=決め事を文章にしたあとに公開した記事6本。「前」=2026年7月31日までに公開した投稿581本。数えた4項目のうち、母数がはっきりしている2つを挙げると、「前」の581本のうち指定の書き方を守れていない記事が156本、書いてはいけない注記が残っている記事が281本ありました。※ 表もSVGも使っていない記事は、そもそも対象になりません。分母が項目ごとに違うため、4項目をまとめた割合は出していません。
ここは正直に書きます。「前」の記事が悪いのではありません。決め事が、まだなかっただけです。ルールのない時期に、ルール違反は存在しません。ただ、決めて、書いて、会社側に残した瞬間から、できあがるものが変わったのは事実でした。
この章の数字の読み方
ここまでの数字は、当社の運用を観察した結果であって、効果を証明するデータではありません。決め事を残したから記事が良くなった、という因果を測ったわけではありません。同じ期間に別の変化も起きています。読んでいただきたいのは「どこに何が残ったか」という事実の部分です。
いま当社は、古い記事を一気に直すことはしていません。その記事に触る用事ができたときに、ついでに直すという方針です。一気に書き換えると、別の事故が起きるからです。
「認める」は、全社導入のことではありません
「会社で決める」と聞くと、全社員分のアカウントを契約して、研修をして、規程を作って、という絵が浮かぶかもしれません。それだと、なかなか動けません。
ですが第3章の図1を見返していただくと、「会社では導入しないが、個人契約の生成AIを業務に使うことを会社として推奨している」が14.9%ありました。会社がお金を出さなくても、「うちはこれを使う」と決めることはできる、ということです。
| 段 | 会社がすること | 費用 |
|---|---|---|
| 第1段 | どれを使うかだけ決める。会社は契約しない | 会社の負担はなし |
| 第2段 | 一部の部署・一部のメンバーで会社が契約する | 使う人数分だけ |
| 第3段 | 全社で導入する | 全社員分 |
いきなり第3段を目指す必要はありません。第1段でも、「どれを使うか」が揃うだけで、話が通じるようになります。同じ道具を使っていれば、うまくいったやり方をそのまま隣の人に渡せます。バラバラだと、それができません。
ただし、1つだけ注意があります。会社が契約したこと自体は、成果を生みません。第6章の実験1がまさにそれでした。契約していても、会社のことを教えていなければ、返ってくるのは一般論だけです。決めるところまでが半分で、教えて残すところまでが残りの半分だと思っています。
もう1点、見落とされやすいことがあります。同じアプリでも、どのアカウントでサインインするかで、適用される扱いが変わる場合があります。たとえばMicrosoftは、個人向けCopilotのプライバシー説明ページについて「個人用メールアドレスなどのMicrosoftアカウントでサインインする場合にのみ適用され、職場・学校・組織のアカウントでサインインする場合には適用されない」と明記しています(Microsoft サポート・2026年8月18日更新/2026年9月4日に原文を確認)。会社として契約していても、社員が私物のアカウントで入っていれば、話が変わることがあるということです。
ここから先、どの設定をどうするかという具体の話は、この記事の担当ではありません。設定と情報の線引きは、別の記事にまとめてあります。
▶ 何を教えてよくて、何を教えてはいけないかは、こちらにまとめています:生成AIに入力してはいけない情報|1,000本超の記事をAIと運用してきた私が、渡していないもの
それでも「止める」を選ぶなら
ここまで読んで、それでもうちは止めておく、という判断はあり得ると思います。取引先との契約で外部サービスの利用に制限がある会社もありますし、扱っている情報の性質上、慎重にならざるを得ない業種もあります。
その判断自体は、経営者が決めることです。私が申し上げられるのは、止めるという判断を機能させるには、条件があるということだけです。
| 条件 | なぜ必要か |
|---|---|
| なぜ止めるのかを言葉にする | 理由が分からないと、隠れて使う理由になってしまう |
| 代わりにどうするかを示す | いまの手間をそのまま続けてくれ、では現場が持たない |
| 見直す時期を決めておく | 状況が変わったときに、誰も言い出せなくなる |
最後に、同じ商工中金の調査に載っていた、回答企業の生の声を1つ引かせてください。自由記載の欄にあったものです。
「各自に任せた運用にしたところ、活用をしているのはほんの一部。多くのメンバーが『何に使えるのか』のイメージがつかない状況。」
出典:商工中金「中小企業の生成AIの利用にかかる調査(2026年1月調査)」スライド13の自由記載より引用(2026年9月4日に原典で確認)
個人に任せると、勝手にうまくいくわけではない、ということだと思います。使える人は使い、そうでない人は何も変わらない。差が開くのは、社員の能力ではなく、会社が何も渡していないからです。
明日、決めることは1つだけです
長くなりましたので、最後は短くします。
明日していただきたいのは、3つのうちどれを選ぶかを決めること、それだけです。
1止める
理由と、代わりの手立てと、見直す時期をセットで。
2個人に任せる
選ぶのは自由です。ただし「選んだ」と自覚したうえで選んでください。
3会社で決める
まずは「どれを使うか」だけでかまいません。契約はその次です。
規程を作る必要はありません。システムを入れる必要もありません。3つのうちどれか、を決めるだけです。決まっていれば、社員は迷いません。決まっていないと、社員が一人ずつ、自分で決めることになります。
そして3つ目を選ばれる場合は、決めたあとに「教えて、残す」まで進めてください。そこまでやって、はじめて会社に何かが積み上がります。
「会社で決める」の、最初の一歩から
どれを選ぶか決めたあと、何を教えて、どこに残すか。当社が自社サイト673ページで実際にやっていることを、そのままお話しします。売り込みはいたしません。
※ ITコーディネータ・酒井大輔が対応します。
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よくある質問(FAQ)
Q社員が勝手に生成AIを使っています。まず何をすべきですか+
Q禁止すれば安全ですか+
Q他社はどうしているのですか+
Q会社で契約すれば解決しますか+
Q予算がありません。それでもできることはありますか+
Q個人に任せたままだと、何がいちばん困りますか+
Q何を入力してよくて、何がだめなのか知りたいのですが+
Q記事にある実験は、自分の会社でも試せますか+
まとめ
- 社員が生成AIを使い始めたあと、経営者に残っている選択肢は「止める」「個人に任せる」「会社で決める」の3つです。
- 禁止・制限している中小企業は1.4%。最も多いのは「会社では導入せず、使用も個人の判断に任せている」でした(商工中金・有効回答3,892社・2026年3月31日発表)。
- 同じ調査で、会社として導入した企業は36.6%、個人契約の活用を推奨している企業は26.0%が経営へのプラスの効果を感じており、その差は10.6ポイントでした(対象は積極活用層)。
- 差の中身は使い方のちがいでした。会社導入の側は事務作業の自動化に進み、個人契約の側は調べものが相対的に多くなっていました。
- 会社の決め事を持たせたAIは「いま変えないほうがいい」と止め、持たせていないAIは案を5つ出しました。同じモデル・同じ質問で、各1回の結果です。
- 止めなかった側も優秀でした。差がつくのは知識ではなく、判断です。
- 個人任せの本当の損失は、仕事のやり方がその人のアカウントに残り、会社に何も残らないことです。
- 「会社で決める」は全社導入のことではありません。どれを使うかだけ決める段から始められます。





















