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生成AIに入力してはいけない情報|1,000本超の記事をAIと運用してきた私が、渡していないもの

公的統計4件で裏取り自社ブログ1,200本超を執筆・運用2026年8月時点

著者:酒井大輔(ITコーディネータ) | 公開日:2026年8月18日 | 読了目安:約14分

この記事の要点「生成AIは、情報が漏れそうで怖い」。そう感じている経営者の方に向けて書いています。ただ、統計を調べると、生成AIを禁止している中小企業は1.4%しかいませんでした。多くの会社は、禁止しているのではなく「決めていない」だけです。この記事では、渡していい情報・伏せれば渡せる情報・渡してはいけない情報を3つに分けて、判定表1枚にします。私自身が、これまでに1,200本以上の記事を書いてきた本番サイトをAIに触らせている立場から、実際に渡しているものと、渡していないものも書きます。

なお本記事は、法律上の判断ではなく、日々の業務で使うための社内運用の判定基準としてまとめたものです。契約や法令の解釈が絡む判断は、顧問の専門家にご確認ください。
📌 30秒まとめ生成AIに渡してはいけない情報は、思っているより少ないです。危ないのは「全部禁止」でも「なんでもOK」でもなく、何も決めていない状態です。
  • 禁止している中小企業は1.4%。64.9%は「使うかどうかは個人の判断に任せている」=会社として決めていない状態です(商工中金・n=3,892社)。
  • 不安は33.5%、実害は0.7%。情報漏洩を懸念する企業は3割を超える一方、実際に流出したと答えた企業は1%未満でした(帝国データバンク・n=10,312社。ただし設問が異なるため、単純な倍率比較はできません)。
  • 先に決めるのは「何を入れるか」ではなく「どこに入れるか」。学習に使わせない設定と、使うAIを1つに決めること。この2つで悩む範囲がかなり減ります。
  • 伏せるのは「固有名詞・金額・日付」だけで足ります。業種・立場・目的・制約まで消すと、AIの答えは一気に使えなくなります。実際に投げて比べた結果を載せています。
酒井大輔 ITコーディネータ ユーチューブビジネスサポート代表

この記事の著者

酒井 大輔(Sakai Daisuke)|ユーチューブビジネスサポート 代表

ITコーディネータ。中小企業のWebマーケティング・動画活用・SEOを支援。2021年から自社ブログを継続運用し、これまでに1,200本以上の記事を公開してきました(2026年6月時点の公開記事は1,170本以上。2026年8月に整理を行い、現在の公開記事は約650本です)。2026年5月から、この本番サイトの運用にClaudeを本格的に使っています。代表プロフィール

酒井大輔の著書『経営戦略は動画が最強! 集客・採用・売上の課題解決!YouTube運用の教科書』の書影(セルバ出版・2026年1月発売)

著書『ビジネスユーチューブで売れ!』(2021年6月)/『経営戦略は動画が最強! 集客・採用・売上の課題解決!YouTube運用の教科書』(セルバ出版・2026年1月)

【結論】情報は3つに分かれます。そして①がいちばん広い

📌 このセクションの要点社内の情報は、①そのまま渡していい ②伏せれば渡せる ③渡してはいけない、の3つに分かれます。いちばん多いのは①です。③に入るものは、実際にはそれほど多くありません。

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分類判断
① そのまま渡していい自社サイトに公開済みの文章/自社の商品・サービスの説明/会社案内やパンフレットの原稿/公開されている統計・白書/他社の公開情報/社名を伏せた業務の相談/自分で書いたメールの下書き迷わず渡す
② 伏せれば渡せる見積書の書式(金額を伏せる)/議事録(人名を伏せる)/取引先とのやりとり(社名を伏せる)/クレームの経緯(個人が特定できる部分を伏せる)/社内資料の構成だけ固有名詞・金額・日付を置き換えてから渡す
③ 渡してはいけない顧客の個人情報/取引先から預かった資料/未公開の価格表・原価/人事評価・給与/契約書の原本/パスワード・APIキー渡さない

表を見て「思ったより①が広い」と感じた方が多いはずです。実際そうです。多くの経営者が「社内の情報=全部が機密」と考えていますが、会社案内に書いてあることも、ホームページに載せている文章も、機密ではありません。もう外に出しているからです。

そして、この記事でいちばんお伝えしたいのはここです。①の広さを知らないまま「なんとなく全部危ない」と扱うと、生成AIはほとんど何にも使えなくなります。怖いから使わないのではなく、線が引けていないから使えない。これが実際に起きていることです。

あなたの会社は、たぶん「禁止」していません。「決めていない」だけです

📌 このセクションの要点生成AIを禁止している中小企業は1.4%しかありません。実際に多いのは「会社としては導入せず、使うかどうかは個人の判断に任せている」64.9%という状態です。問題は禁止ではなく、線が1本もないことです。

この記事を作るにあたって、まず公的な調査を確認しました。前提が思っていたものと違ったので、そこから書きます。

図:中小企業の生成AIへの向き合い方(実数)

使うかどうかは個人の判断に任せている 64.9% 生成AIの活用方針を明確に定めていない(中小企業) 47.6% 会社として使用を禁止・制限している 1.4% ※ 上段・下段=商工中金(n=3,892社)/中段=総務省 令和7年版 情報通信白書(中小企業 n=143)。異なる調査のため単純合算はできません
禁止している会社はほとんどありません。多いのは「決めていない」状態です。

商工中金が2026年3月に公表した調査(有効回答3,892社)では、中小企業の64.9%が「会社としては生成AIを導入しておらず、使うかどうかは個人の判断に任せている」と答えています。一方で「会社での使用を禁止・制限している」は1.4%にとどまりました。

総務省の情報通信白書でも同じ傾向が出ています。生成AIの活用方針を「明確に定めていない」企業は、大企業25.8%に対して中小企業では47.6%。約半数が、方針そのものを持っていません。

出典① 調査名:商工中金「中小企業の生成AIの利用にかかる調査(2026年1月調査)」/公表日:2026年3月31日/対象:取引先中小企業 有効回答3,892社/該当数値:64.9%が「個人の判断に任せている」・1.4%が「禁止・制限」
出典② 調査名:総務省「令和7年版 情報通信白書」図表Ⅰ-1-2-13/公表日:2025年7月/対象:中小企業 n=143・大企業 n=372(計515)/該当数値:活用方針を「明確に定めていない」中小企業47.6%・大企業25.8%

「決めていない」がなぜ危ないのか

禁止していないのにルールもない、という状態は、実質的には「社員それぞれが、自分の判断で、自分のアカウントで使っている」ということです。会社は何が入力されたかを知りません。

会社が把握していないAI利用は「シャドーAI」と呼ばれます。エルテスが2026年1月に公表した調査(n=300のインターネット調査)では、生成AIを業務で使っている人のうち約5人に1人が、会社が許可していないAIを使っていました。同じ調査で、社内の利用規程が「ない」は45.0%、「わからない」も26.7%です。

サンプル数が300と小さい調査なので数字そのものは幅を持って見るべきですが、方向としては商工中金の64.9%と一致しています。会社が決めないと、社員が決める。それだけの話です。

出典③ 調査名:株式会社エルテス「生成AIの利用に関する調査」/公表日:2026年1月19日/対象:29〜69歳の会社員・公務員 n=300(インターネット調査)/該当数値:業務利用者の約5人に1人がシャドーAI・社内規程「ない」45.0%+「わからない」26.7%

怖がっている量と、実際に起きている量には、大きな開きがあります

📌 このセクションの要点生成AIを活用している企業のうち、情報漏洩を懸念しているのは33.5%。一方、実際に「機密や個人情報が流出した」と答えたのは0.7%でした。不安は3割を超え、実際に起きたのは1%未満です。

図:情報漏洩の「不安」と「実際に起きた割合」(生成AI活用企業)

33.5% 情報漏洩を懸念している 0.7% 実際に流出したと回答 不安は3割超。実際に起きたのは1%未満 帝国データバンク「生成AIに関する企業の動向調査」2026年5月14日公表/全体n=10,312社・活用企業3,560社ベース
0.7%は、生成AIを活用している3,560社に対する比率です。全10,312社に対する比率ではありません。

この2つは、割り算しないでください

33.5%は「何を懸念しているか」、0.7%は「実際に何が起きたか」で、設問がまったく違います。両者を割って「リスクは48分の1」と読むのは誤りです。ここでお伝えしたいのは倍率ではなく、不安の大きさと、実際に起きている量が同じではないという一点です。

帝国データバンクが2026年5月に公表した調査(有効回答10,312社)では、生成AIを業務で活用している企業の懸念として「情報漏洩のリスク」を挙げた企業が33.5%でした。1位は「情報の正確性」50.4%、2位が「専門人材・ノウハウ不足」41.3%です。

同じ調査で、実際に「会社の機密や保有する個人情報などが流出した」と答えた企業は0.7%でした。

出典④ 調査名:帝国データバンク「生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」/公表日:2026年5月14日/対象:有効回答10,312社(うち活用企業3,560社)/該当数値:懸念「情報漏洩のリスク」33.5%・実際に流出したと回答0.7%(いずれも活用企業ベース)

ただし「起きていないから何でもいい」ではありません

誤解のないように書いておきます。0.7%という数字は、「気をつけている会社が多いから低い」とも読めます。この記事は「心配しなくていい」と言いたいわけではありません。

お伝えしたいのは、不安の大きさに合わせて全部止めるのは、割に合わないということです。33.5%の不安に対して、線を3本引けば済む。それだけで、残りの業務は使えるようになります。

正直に書いておきます

「生成AIへの入力が原因で起きた情報漏えい」の件数を示した公的統計は、調べた範囲では見つかりませんでした。個人情報保護委員会の年次報告にも、生成AI起因を切り分けた数値はありません。上記の0.7%は、企業の自己申告ベースの数字です。

リスクが無いわけではありません

IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」(2026年1月29日公表)では、「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が組織編の3位に初めて選出されています。件数の統計は無くても、注意すべき領域だという認識は公的にも共有されています。

渡した情報は、本当に外に出ます——AI4社に聞いて確かめました

📌 このセクションの要点不安を下げる話を続けましたが、「外に出る」こと自体は事実です。私が実際にAI4社に質問したところ、自社サイトに書いた内容がそのまま回答に出てきました。しかも、修正前の古い記述が残っていたAIもありました。

2026年8月に、ChatGPT・Gemini・Perplexityなどに対して、私の支援先について質問してみました。返ってきた回答がこれです。

Perplexityの回答画面。ユーチューブビジネスサポートの支援先として、株式会社伊勢通とエムティーシーが実名で表示されている
Perplexityは、支援先である株式会社伊勢通の社名を、そのまま回答に出しました。私がAIに教えたのではなく、自社サイトに公開している記事から読み取っています。
Geminiの回答画面。ytbs.jpで既に修正済みの「建材メーカー」という古い表記が、そのまま残って表示されている
こちらはGemini。自社サイト側ではすでに「建材商社」に修正した表記が、AIの回答には「建材メーカー」のまま残っていました。一度外に出た情報は、こちらの都合ですぐには消えません。

ここから分かることは、2つあります

書いたことは、そのままAIの回答になります

自社サイトに書いた説明は、AIに読まれて、そのまま人に届きます。これは怖い話ではなく、むしろ狙って使うべき話です。会社案内の文章をAIに渡すことに、何のリスクもありません。もう外にあるからです。

一度出たものは、すぐには消せません

修正しても、AIの回答に古い情報が残ることがあります。だからこそ「出す前に決める」必要があります。出してから取り消すのは、こちらの手には負えません。

先に決めるのは「何を入れるか」より「どこに入れるか」

📌 このセクションの要点情報を分類する前に、使うAIを1つに決めて、学習に使わせない設定にする。この2つを先にやると、あとで悩む範囲がかなり小さくなります。

学習に使わせない設定を確認する(2026年8月時点)

生成AIに入力した内容が、そのAIの学習に使われるかどうかは、プランではなく設定と契約で決まります。「無料だから学習される」「有料だから安全」という単純な話ではありません。

2026年8月時点で、各社の公式ヘルプには次のように書かれています。

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サービス公式ヘルプに書かれていること確認する場所
ChatGPT会話をモデルの改善に使うかどうかを、利用者が選べる。オフにすると、以降の新しい会話は学習に使われない設定 →「データコントロール」→「すべての人のためにモデルを改善する」
Claude設定をオンにした場合に限り、Free・Pro・Maxのデータを学習に使う。オフのままなら学習に使われず、データの保持期間も短くなる設定 →「プライバシー」→ プライバシー設定
Gemini活動履歴の保存をオフにすると、以降のチャットはGoogleのサービス改善(生成AIモデルの学習を含む)のための確認に使われない。ただしオフでも、サービス提供のため最大72時間はアカウントに保存されるgemini.google.com → 設定とヘルプ →「アクティビティ」
法人向けプラン各社とも、法人・企業向けプランでは初期設定の時点で学習に使われない扱いになっている契約内容・管理者画面

出典:OpenAI ヘルプセンター「What are the Data Controls settings?」Anthropic「Updates to Consumer Terms and Privacy Policy」Google「Gemini アプリのアクティビティを管理・削除する」(いずれも2026年8月時点の記載)。各社の仕様は変わります。実際に設定する前に、必ず公式ヘルプでご確認ください。

個人アカウントの業務利用だけは、先に止めてください

設定より先に効くのが、これです。会社が用意したAIを1つ決めて、そこに集める。それだけで、シャドーAIはかなり減ります。

禁止から入ると、社員は使うのをやめるのではなく、見つからない使い方を探します。これは統計にも出ていることで、禁止している会社が1.4%しかないのに、5人に1人がシャドーAIを使っているという状態が、それを表しています。先にやるべきは、会社として安全に使えるAIを正式に用意することです。

① そのまま渡していい情報

📌 このセクションの要点①はとても広いです。すでに外に出ている情報は、全部①です。会社案内、商品説明、ホームページの文章、公開されている統計。ここに悩む時間を使う必要はありません。

①に入るもの(業務別の具体例)

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業務そのまま渡していいものなぜ渡していいのか
営業自社の商品・サービス説明/会社案内の原稿/公開している価格表/提案書のひな形(金額が入っていないもの)/展示会の配布資料すでに社外に配っている
広報・Webホームページの全文/ブログ記事/プレスリリース/SNSの投稿文/採用ページの原稿すでに公開済み
総務・経理公開されている法改正の情報/官公庁の様式/自社で作った社内文書の書式(中身が入っていないもの)誰でも入手できる
調べもの白書・業界統計・他社の公開情報/専門用語の意味/一般的な進め方の相談公開情報
文章づくり自分で書いたメールの下書きの推敲/社名を伏せた業務の相談/議事録の「書き方」の相談特定できる情報が入っていない

「うちの会社の説明」は、機密ではありません

ここでつまずく方がとても多いです。「自社の情報をAIに入れる」と聞くと、反射的に危ないと感じてしまう。でも、その情報がすでにホームページに載っているなら、AIに入れても新しく漏れるものは何もありません。

前の章で見たとおり、AIはもう読んでいます。Perplexityが支援先の社名を答えられたのは、私が教えたからではなく、公開済みの記事を読んだからです。

むしろ自社の説明はどんどん渡したほうがいいくらいです。渡さないと、AIは一般論しか返してきません。

② 伏せれば渡せる情報|伏せ方を、実際にやってみます

📌 このセクションの要点伏せるのは固有名詞・金額・日付・数量だけで足ります。業種・立場・目的・経緯まで消してしまうと、AIの答えは一気に使えなくなります。実際に両方投げて比べました。

置き換えの型(この5つを覚えれば足ります)

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消すもの元の書き方置き換えた書き方
人名田中部長、山田様先方の責任者、A様
社名株式会社◯◯A社、仕入先、取引先
金額12,340,000円約1,200万円台、あるいは書かない
日付2026年6月17日の打ち合わせ先月の打ち合わせ
連絡先メール署名、電話番号、担当者ID削除する

伏せすぎると、AIは役に立たなくなります

ここがこの記事でいちばん書きたかったところです。「危ないから、全部ぼかして聞こう」とすると、返ってくる答えは、そのままでは使えない一般論になります。

実際に試しました。同じ目的の依頼を、2つの書き方でClaudeに投げて、返ってきた回答を並べます。

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A:全部伏せた聞き方B:骨だけ残した聞き方
投げた文
「取引先との値引き交渉のメール文面を作ってください」
投げた文
「建材の商社です。仕入先に、数量をまとめる代わりに単価を下げてほしいと頼むメールを作ってください。相手とは10年の付き合いで、以前こちらが値上げ要請を一度受け入れた経緯があります。社名・担当者名・金額は書きません」
返ってきた回答(抜粋)
「〇〇株式会社 △△様 いつも大変お世話になっております。このたび、貴社よりご提示いただいております価格につきまして、一度ご相談させていただきたくご連絡いたしました。(中略)つきましては、〇%程度のお値引きをご検討いただくことは可能でしょうか」

+「業種・取引期間・値引きをお願いする理由が分かれば、より具体的にできます」という確認
返ってきた回答(抜粋)
「件名:年間発注量のとりまとめによる単価ご相談の件 (中略)来期の仕入計画を見直すにあたり、これまで都度発注しておりました品目を年間でとりまとめ、発注量を集約する方向で検討を進めております。(中略)10年にわたりお取引いただくなかで、過去に価格改定をお願いされた際には、弊社としても事情を理解したうえでお受けしてまいりました。今回は逆に、弊社の発注のまとめ方でお役に立てる部分があればと考えております」

+「交渉の主語を『値引き』ではなく『発注のまとめ方の変更』に置いた」という説明
穴埋め式。根拠が無いので、そのままでは送れない交渉の理屈が入っている。社名も金額も書いていない

2026年8月17日に、Claude(Opus 5)へ実際に投げて返ってきた回答から抜粋しました。文章は長いため要点のみを引用しています。

Bには、社名も担当者名も金額も入っていません。それでも回答の質がここまで変わります。伏せたから使えなくなったのではなく、骨まで消したから使えなくなっていたということです。

残していい「骨」と、消していい「肉」

骨=残す(AIの答えを決めるもの)

  • 業種・商材の種類
  • 自分の立場(買う側か売る側か)
  • 何を実現したいか(目的)
  • やってはいけない制約
  • これまでの経緯・関係性

肉=消してよい(誰かを特定するもの)

  • 会社名・部署名・個人名
  • 具体的な金額・数量
  • 具体的な日付
  • 住所・連絡先・署名
  • 案件名・製番・顧客ID

この見分け方は、そのまま社内に伝えられます。「誰の話かが分かる部分だけ消して、何の話かは残す」。これで足ります。

③ 渡してはいけない情報

📌 このセクションの要点③は短くします。自社だけでなく、他社やお客様が困るものが③です。数は多くありません。

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渡してはいけないもの理由
顧客の個人情報お客様のものであって、自社のものではないから
取引先から預かった資料相手との約束のうえで預かっているから
未公開の価格表・原価外に出れば、価格交渉の立場がそのまま弱くなるから
人事評価・給与・健康情報社員本人が、外に出ることを想定していないから
契約書の原本相手の情報と守秘の条項が同時に入っているから
パスワード・APIキーそれ自体が鍵で、使われたら止められないから

この6つを外せば、残りはほぼ①か②です。③のために、①と②まで止める必要はありません。

なお、法律上どこまでが「個人情報」「営業秘密」にあたるかという解釈は、この記事では扱いません。私は弁護士ではありませんし、業種や契約によって変わるためです。判断に迷う契約が絡む場合は、顧問の弁護士や社会保険労務士にご確認ください。

迷ったときの3つの質問

📌 このセクションの要点分類表を覚える必要はありません。上から3つ質問するだけで、①②③のどれかに着地します。

図:渡していいかどうかの3問フローチャート

Q1 その情報は、いま自社サイトや会社案内に 載っていますか? はい → いいえ Q2 それが明日そのまま外に出たら、 誰かが困りますか? いいえ → はい Q3 困るのは、自社だけですか? (他社やお客様も困る=いいえ) ① そのまま渡していい Q1が「はい」/Q2が「いいえ」 ② 伏せれば渡せる Q3が「はい(自社だけ)」 ③ 渡してはいけない Q3が「いいえ(他社も困る)」 迷ったら、②にしてください。伏せてから渡せば、たいていのことはできます。
3問だけです。社内に配るときは、この図をそのまま使えます。

入れてしまったときに、やること

📌 このセクションの要点順番がいちばん大事です。先に会話を消してしまうと、何を入れたのかを確かめる手段がなくなり、そのあとの判断が全部できなくなります。消すのは、いちばん最後です。

やること(この順番で)

1. 手を止めて、何を入れたかを控える

まだ消しません。その会話を開いて、何を入れたかを控えます。原文をあちこちにコピーする必要はなく、「顧客名と金額が入った見積書」のように、種類が分かる粒度で足ります。ここが曖昧なままだと、上長も「大丈夫」とも「まずい」とも言えません。

2. 鍵だったら、先に無効化する

パスワード・APIキー・アクセストークンを入れてしまった場合、会話を消しても何も止まりません。再発行して、古いものを無効にするのが唯一の対応です。これだけは、報告より先に手を動かしてください。

3. 上長に伝える

隠すと、次に同じことが起きたときにもっと隠れます。「線が無かったから起きた」と扱って、線を引くきっかけにするのが正解です。お客様や社員の個人データが含まれていた場合、法令上の報告や本人への連絡が必要になることがあります。この判断は自社だけで抱えず、顧問の専門家にご確認ください。

4. 判断がついてから、消す

ここでようやく、チャット履歴から該当の会話を消します。サービスによっては削除の申請窓口も用意されています。学習設定がオフなら、そもそも学習には使われていません。

削除は「止血」ではありません。会話を消しても、サービス側の保持期間やバックアップが即座に消えるわけではありません。削除は衛生管理であって、急いでやることではない——ここを取り違えると、いちばん大事な記録を失います。

やらなくていいこと

先に会話を消す

いちばんやりがちで、いちばん困ります。消すと、何が起きたのかが誰にも分からなくなります。

全面禁止にする

いちばん多い過剰反応です。禁止しても使用は止まらず、見えなくなるだけです。

担当者を責める

線を引いていなかったのは会社側です。責めると、次の報告が上がってこなくなります。

アカウントごと消す

会話単位で消せます。アカウントを消すと、他の業務まで止まります。

なお、機密を含む相談を一時的にしたいだけなら、履歴に残らない「一時チャット」機能を使う手もあります。ChatGPTの場合、一時チャットは履歴に残らず、モデルの学習にも使われないと公式ヘルプに記載があります(2026年8月時点)。

「公開していい情報」と「AIに入れていい情報」は別の判断です

📌 このセクションの要点この2つは、混同されやすいのですが別ものです。「AIに読ませる」と「ホームページに置く」は、決め方の基準が違います。

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 AIに入力していいか(この記事)サイトに公開していいか
判断の基準その情報が、こちらの手を離れて困るかその情報を、お客様に読んでほしいか
対象1回の会話・1つの資料会社として置き続けるページ
取り消し会話を削除できる消してもAIの回答に残ることがある
失敗したときその会話だけの話で済むことが多い広く出回ってから気づくことがある

たとえば、自社の見積の考え方をAIに相談するのは②です(金額を伏せれば渡せます)。でも、それを会社概要ページに書いて公開するかどうかは、まったく別の判断になります。

「うちの場合、どこまで渡していいか」を一緒に決めます

判定表はそのまま使っていただけますが、業種によって②と③の線は変わります。実際の資料を見ながら、線を引くところからお手伝いしています。

生成AI活用の支援内容を見る

A4・1枚の判定表

📌 このセクションの要点社内に配るのは、これ1枚で足ります。難しい規程は要りません。印刷して、休憩室に貼っておくくらいの温度で構いません。

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決めること書く内容(例)
1. 使うAI業務で使う生成AIは「◯◯」に統一します。個人アカウントでの業務利用はしません
2. 学習設定会社が用意したアカウントは、学習に使わせない設定にしてあります
3. そのまま入れてよいホームページに載っている文章/会社案内/商品説明/公開されている統計/社名を出さない相談
4. 伏せれば入れてよい社名→A社/人名→A様/金額→書かない/日付→先月 ※業種・目的・経緯は残してよい
5. 入れないお客様の個人情報/取引先から預かった資料/未公開の価格・原価/人事評価・給与/契約書の原本/パスワード
6. 迷ったらQ1 サイトに載っている? → Q2 外に出たら誰か困る? → Q3 困るのは自社だけ? ※迷ったら伏せて入れる
7. 入れてしまったらまず消さずに、何を入れたかを控えて◯◯(担当)に伝えてください。消すのは最後です。パスワード・APIキーだけは先に再発行してください。責任は問いません

7項目め(責任は問いません)を必ず入れてください。これが無いと報告が上がってこず、会社は何が起きたかを知らないままになります。

実際にやっていること

📌 このセクションの要点私は、これまでに1,200本以上の記事を書いてきた本番サイトを、AIに直接触らせています。そのうえで、渡していないものがあります。きれいごとではなく、実際のところを書きます。

当社の場合

ytbs.jpのWordPress管理画面。公開記事が1,170本以上あることを示す投稿一覧(2026年6月時点)
公開記事1,170本以上(2026年6月時点)
ytbs.jpのGoogleサーチコンソール画面。16か月で341万回の検索表示があったことを示すグラフ
Googleサーチコンソール16か月・341万表示

2026年5月から、このサイトの運用にClaudeを本格的に使っています。記事の執筆だけでなく、WordPressの管理画面の操作、内部リンクの整理、サーチコンソールの数字の読み解きまで任せています。

2026年8月には、公開していた記事1,240本のうち594本を1日で下書きに戻すという作業もAIと一緒にやりました。消す作業なので、間違えば取り返しがつきません。結果として、サイト全体の平均掲載順位は8.18位から7.47位に動きました。

※ 本数の推移:2026年6月時点の公開記事1,170本以上(上の画面)→ その後の追加を含め8月時点で1,240本 → うち594本を下書きに戻し、現在の公開記事は約650本です。この記事で「1,000本超」と書いているのは、これまでに書いた記事の累計です。

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渡しているもの渡していないもの
WordPressの管理画面の操作権限(記事の編集・公開)お客様からお預かりした資料・データ
公開済みの記事の本文すべて支援先の未公開の売上・原価の数字
サーチコンソール・アナリティクスの数値見積書・契約書の原本
自社の企画メモ・記事の構成案サーバーやWordPressのパスワード(AIは自分ではログインしません)
支援先の「公開してよい」と確認が取れた事例の内容支援先の社名(公開の許可をいただいたものを除く)

並べてみると分かるとおり、渡していないものは「自社のものではない情報」と「鍵」の2種類だけです。自社の情報は、ほとんど渡しています。

株式会社伊勢通の場合

支援先の建材商社・株式会社伊勢通では、担当の田邊さんご自身が、本番のWordPressをAIに触らせながら実装を進められました。私がやったのは、使い方をお渡しすることと、「どこまでAIに触らせるか」の線を一緒に決めたことです。実装も、その日の判断も、田邊さんご自身がされています。

このとき決めた線は、シンプルでした。テーマのプログラムには触らない。管理画面とプラグインだけで、いつでも元に戻せる形で進める。情報についても同じ考え方で、公開しているページの内容は渡し、顧客データには触らせませんでした。

よくある質問(FAQ)

FAQ経営者の方から実際にいただくご質問と、その回答です。
Q無料プランは、業務で使ってはいけませんか?
プランで決まる話ではありません。2026年8月時点で、ChatGPTは無料でも学習利用をオフにできると公式ヘルプに記載があります。プランではなく、学習設定と会社としての契約で判断してください。
Q有料プランにすれば安全ですか?
「有料=安全」とは言えません。個人向けの有料プランでも、学習設定は自分でオフにする必要があります。法人向けプランは初期設定から学習に使われない扱いですが、それでも入力してよい情報の線は必要です。
Q社員が個人アカウントで勝手に使っています。どうすればいいですか?
禁止しても止まりません。会社として使うAIを1つ決めて、正式に用意してください。使える場所があれば、わざわざ隠れて使う理由がなくなります。
QChatGPTに個人情報を入力しても大丈夫ですか?
お客様や社員の個人情報は③(渡さない)です。ただし、氏名や連絡先を「A様」などに置き換えれば②になり、相談そのものは可能です。個人が特定できる形のまま入力するのは避けてください。
QChatGPTに顧客リストを入力しても大丈夫ですか?
そのまま渡すのは③です。整理の手順や関数の作り方を相談するのは①なので、そちらに切り替えてください。作業自体は、手元の表計算ソフトの中で完結させます。
Q生成AIに契約書を読み込ませても大丈夫ですか?
原本は③です。相手の情報と守秘の条項が同時に入っているためです。条項の一般的な意味や、確認すべき観点を相談するのは①なので、そちらに切り替えてください。
Q生成AIに社内資料をそのまま貼り付けても大丈夫ですか?
資料の種類によります。公開済みの会社案内や商品説明ならそのまま渡せます。人名・社名・金額が入っている資料は、その部分を置き換えてから渡してください。
Q生成AIに機密情報を入力してしまった場合、どうすればいいですか?
順番が大事です。まだ消さずに、何を入れたかを控えてから上長に伝えてください。パスワードやAPIキーの場合は、会話を消しても止まらないので先に再発行します。消すのは最後です。個人データが含まれる場合、法令上の報告が必要になることがあるため、専門家にご確認ください。
Q学習させない設定は、どこにありますか?
ChatGPTは設定の「データコントロール」、Claudeは設定の「プライバシー」の中にあります(2026年8月時点)。画面の場所を含む具体的な手順は、別記事「AIエージェント導入費用|中小企業は月3,000円から・開発不要」の第4章にまとめています。
QAIに読ませるのと、ホームページに公開するのは同じことですか?
別の判断です。AIへの入力は1回の会話の話で、会話ごと削除できます。ホームページへの公開は会社として置き続けるもので、消してもAIの回答に古い情報が残ることがあります。
Q法律的に問題ないか、どう判断すればいいですか?
私は弁護士ではないため、個人情報保護法や不正競争防止法の解釈についてはお答えできません。この記事は、日々の業務で使える判断の目安をまとめたものです。契約が絡む判断は、顧問の弁護士にご確認ください。

まとめ

  • 生成AIを禁止している中小企業は1.4%。実態は64.9%が「個人任せ」で、危ないのは禁止ではなく「決めていない」状態です。
  • 情報漏洩を懸念する企業は33.5%、実際に流出した企業は0.7%(設問が違うので単純比較はできませんが、不安の大きさと、実際に起きている量は同じではありません)。
  • 情報は①そのまま渡していい ②伏せれば渡せる ③渡してはいけない、の3つ。いちばん広いのは①で、すでに外に出ている情報は全部①です。
  • 伏せるのは固有名詞・金額・日付だけ。業種・立場・目的・経緯まで消すと、AIの答えは使えなくなります。
  • 入れてしまったときは、消すのが最後です。先に消すと、何が起きたのか誰にも分からなくなります。パスワード・APIキーだけは、先に再発行してください。
  • 社内に配るのはA4・1枚で足ります。「入れてしまっても責任は問いません」の1行を必ず入れてください。
  • 私自身は、1,200本以上の記事を書いてきた本番サイトをAIに触らせています。渡していないのは「自社のものではない情報」と「鍵」だけです。
ITコーディネータに相談する

「うちの場合、どこまで渡していいか」から決めましょう

判定表はそのまま使えますが、②と③の線は業種で変わります。実際の資料を見ながら、線を引くところと、使えるようにするところまでお手伝いします。売り込みはしません。

※ ITコーディネータ・酒井大輔が対応します。

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