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AI活用#引き継ぎ#チャット管理

新しいAIに引き継ぐとき、最初に聞く7つの質問

自社実測:司令塔チャットの交代20回起動時に見つかった抜け 6件・5件・3件2026年9月16日時点

著者:酒井大輔(ITコーディネータ) | 公開日:2026年9月17日 | 読了目安:約20分

この記事の要点AIとのやりとりが長くなると、動きが鈍くなったり、前に決めたことを忘れたりします。そこで新しいチャットを開いて引き継ぐわけですが、引き継ぎ書を丁寧に書いても抜けます。当社は2026年6月以降、司令塔にしているチャットを20回交代させ、そのたびに抜けを数えてきました。この記事では、交代の直後に必ず答えさせている7つの質問と、7問をやってもなお抜けた実例を、そのままお渡しします。
📌 30秒まとめ引き継ぎ書を渡しても、新しいAIは抜けます。抜けを見つけるのは引き継ぎ書ではなく、引き継いだ直後の質問です。
  • 新しいAIは「自分が何を知らないか」を知らない。だから黙って仕事を始め、抜けたまま進みます。
  • 当社は交代のたびに7つの質問へ声に出して答えさせ、最後に人が1回だけ確認します。それでも直近3回の交代で6件・5件・3件の抜けが出ました(2026年9月16日に数え直し)。
  • ゼロにはなりません。目的は抜けを無くすことではなく、仕事を始める前に見つけることです。
酒井大輔 ITコーディネータ ユーチューブビジネスサポート代表

この記事の著者

酒井 大輔(Sakai Daisuke)|ユーチューブビジネスサポート 代表

ITコーディネータ。中小企業のWebマーケ・動画活用・SEOを支援。2008年から企業のYouTube活用を支援し、自社サイトの公開記事は664本(投稿640本+固定ページ24本・2026年9月16日時点)。代表プロフィール

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引き継ぎ書を渡しても、新しいAIは抜ける

📌 このセクションの要点引き継ぎ書は「渡すもの」です。抜けているかどうかは、渡した側にも渡された側にも見えません。見つける役目は、引き継ぎ書ではなく質問が持ちます。

AIとのやりとりが長くなると、返事が遅くなる、前に決めたことを忘れる、同じ説明を繰り返させられる——そんな状態になります。そこで新しいチャットを開き、これまでの経緯を書いた文章を貼って続きをやってもらう。多くの会社がやっている「引き継ぎ」です。

当社もそうしていました。うまくいきませんでした。引き継ぎ書を丁寧に書いても、新しいAIは平気で抜けたまま仕事を始めます。しかも本人は困っていません。知らないことがあると気づいていないからです。

いちばん痛かったのは2026年8月28日です。この日、当社の司令塔にしていたチャットは13件の誤った指示を出しました。そのうち1件は、サイトの一括変換の指示で、79ページを壊しました(同日中に全復旧)。翌日も続き、作業側のチャットが司令塔の誤りを止めた回数は通算9回になりました。原因を並べてみると、5つの型に整理できました。そのうち2つが「古い観測のまま指示を出す」「見つからないことを、存在しないと読む」——つまり引き継ぎのときに持ち越された、古い情報と抜けた情報でした。

そこで運用を変えました。引き継ぎ書を渡すのをやめたのではありません。渡したあとに、7つの質問へ声に出して答えさせるようにしたのです。書いてあることを読んだかどうかではなく、答えられるかどうかで確かめる。答えられない項目が、その時点での抜けです。

この記事は、その7つの質問と、7問をやってもなお抜けた実例を、社長が自分の会社でそのまま使える形にしたものです。チャットのエクスポート方法や、AIの仕組みの話は出てきません。これは道具の話ではなく、担当者が替わるときの管理の話だからです。

表1:AIの言葉を、会社の言葉に置き換えると分かりやすくなります(2026年9月16日時点)
AI側の言い方会社に置き換えるとだから起きること
チャットが長くなった担当者が疲れて、記憶があいまいになった古い話を今の話として喋る
新しいチャットを開く担当者が交代する前任の頭の中は引き継がれない
引き継ぎ書を貼る引き継ぎメモを渡す書いた範囲しか渡らない
コンテキストが足りない新任が事情を知らない本人は知らないことに気づかない
ハルシネーション知らないことを、知っているつもりで答えるもっともらしい間違いが出る

出典:当社の管理運用記録(2026年8月28日〜9月16日)より作成。表の「起きること」はすべて自社で実際に起きた事象です。

新しいAIは「自分が何を知らないか」を知らない

📌 このセクションの要点人の新任は「これ、聞いていません」と言えます。AIはそれを言いません。知らないことに気づく手段を持っていないからです。

新しく入った社員なら、仕事を始めて違和感があれば「その件、引き継ぎを受けていません」と言ってくれます。AIはそれを言いません。渡された文章の中だけが世界なので、そこに書かれていない案件は、最初から存在しないものとして扱われます。

実際に起きた例です。当社では記事を公開してから28日間、本文やタイトルを触らずに効果を測る決まりがあります。この「触ってはいけない期間」の一覧は台帳にありますが、引き継ぎ書に載っていなければ、新しいチャットにとっては存在しません。存在しないルールは守れません。実際に、触ってはいけないページを触りかけたことが複数回あります。

もうひとつ、根が深い例があります。2026年8月31日、当社の司令塔チャットが自分で時計を測ったところ「8月31日21時55分」でした。ところが同じ時刻に動いていた別の作業役は「今日は9月3日です」と報告してきました。どちらが正しいか、AI同士では決められません。日付が1日ずれると、28日後の判定日もずれます。結局、人の画面で今日の日付を見てもらうまで確定できませんでした。

この2つに共通しているのは、「知らない」ではなく「知らないことに気づけない」という点です。だから、引き継ぎ書をどれだけ厚くしても安心にはなりません。厚くすれば読み飛ばしが増え、薄くすれば抜けが増えるだけです。厚さで解決しようとするのをやめて、答えさせて確かめる——それが7つの質問です。

図1:引き継ぎで渡せる範囲と、実際に伝わる範囲

引き継ぎで渡せる範囲と、実際に伝わる範囲前任が持っていた情報を全体とすると、引き継ぎ書に書けたのはその一部で、新しいAIが実際に把握したのはさらにその一部。差の部分に気づけるのは人だけであることを示した横棒の図。前任が持っていた情報これが全体引き継ぎ書に書けたこと書いた分だけ新しいAIが実際に把握したこと読み取れた分だけこの差にAIは気づけません。気づけるのは、質問した人だけです。
当社の運用記録をもとに作成(2026年9月16日時点)。棒の長さは概念を示すもので、実測値ではありません。

当社は司令塔のチャットを20回替えました

📌 このセクションの要点交代は事故ではなく、決めてやっています。長くなったチャットは、古い話を今の話として喋りはじめるからです。

当社ではサイトの改修・新記事・保守を、役割ごとに分けた複数のAIチャットで進めています。そのうち1つを「司令塔」と決めて、全体の進行と裁定を持たせています。この司令塔を、2026年6月以降で20回交代させました(2026年9月16日時点)。

20回司令塔チャットの交代
(2026年6月以降・9月16日時点)
203本同じ期間に公開した記事
(公開日が6月1日以降の投稿・9月16日実測)
664本公開中のページ総数
(投稿640+固定24・9月16日実測)

なぜ替えるのか。長く使ったチャットは、古い観測のまま喋りはじめるからです。すでに終わった作業を「まだ残っています」と報告する、撤回されたルールを根拠に指示を出す。実際、当社の記録には「本部14の誤り3件」として、完了済みの是正を未完了として言明した例が残っています。⚠この現象は上位モデルに替えても消えませんでした。頭の良し悪しではなく、持っている情報が古いという問題だからです。

交代の密度も書いておきます。ある代は1日で約80件の裁定を出し、そのあいだに7件の誤りを出して、作業側のチャットから6回止められました。別の代は1日でキュー約140件をさばきました。次の代は4日もちました。密度が上がるほど、交代は早く来ます。

ここまでは、当社が特殊だと思われるかもしれません。しかし「担当者が替わる」「引き継ぎが抜ける」「前任の判断が分からない」は、どの会社にもあります。AIを業務で使い始めると、この交代が月に何度も起きるだけの話です。だから私は、これをAIの話ではなく管理の話だと考えています(関連=生成AIを使いこなせない人に足りないのは、マネジメント能力です)。

交代のときに必ず答えさせる7つの質問

📌 このセクションの要点引き継ぎ書を読ませたあと、7つの質問に声に出して答えさせます。読んだかどうかではなく、答えられるかどうかで確かめます。

手順はかんたんです。①引き継ぎ書を渡す ②7つの質問に答えさせる ③人が1回だけ確認する ④仕事を始める。この順番を崩さないことだけが決まりです。質問は、答えを探しにいく先まで一緒に指定します。探し先を言わないと、AIは「たぶんこうです」と埋めてしまうからです。

図2:交代のときの手順(この順番を崩さない)

交代のときの手順引き継ぎ書を書く、新しいAIに読ませる、7つの質問に答えさせる、人が1回だけ聞く、仕事を始める、の5段階を左から右へ並べた流れ図。3番目と4番目が抜けを見つける工程。引き継ぎ書を書く新しいAIに読ませる7つの質問に答えさせる人が1回だけ聞く仕事を始める赤い2つが「抜けを見つける」工程です。ここを飛ばすと、抜けたまま仕事が進みます。所要=7問の回答に3〜5分、人の確認に1分。1回の交代あたり10分かかりません。
当社の運用(2026年8月28日開始・9月16日時点)。所要時間は当社での実測ではなく、運用上の目安です。
表2:新しいAIに最初に答えさせる7つの質問(当社が実際に使っている項目を、一般の会社向けに言い換えたもの・2026年9月16日時点)
#質問どこを見て答えるか答えられないと起きること
1いま壊れている、途中で止まっているものは何か未了リスト直しかけの仕事が放置される
2今日から明日、誰が何をするか担当表二重作業、または誰も手をつけない
3人の判断を待っている案件は何件か判断待ちリスト同じ質問を何度も聞かれる
4いま触ってはいけないものはどれか「触るな」一覧(当社は公開後28日の測定期間)測定が壊れ、やり直しになる
5直近でこちら側が犯した誤りは何か失敗の記録同じ失敗をもう一度やる
6未読の連絡は残っていないか連絡箱・受信トレイ現場からの質問が放置される
7いま走っている案件は何本か進行中リスト手が足りなくなる、重複して着手する

出典:当社の管理運用手順書(2026年8月28日制定・9月16日時点の版)。当社では①〜⑦を新しいチャットの最初の発言で答えさせています。

7問のうち、効き目がいちばん大きいのは4番です。「触ってはいけないもの」は、知らなければ悪気なく触れてしまいます。当社の場合は公開から28日間の測定期間ですが、一般の会社なら締めた帳簿、送付済みの見積、他部署が進めている案件がこれにあたります。

次に効くのが3番です。人の判断を待っている案件は、引き継ぎ書に書き忘れられる筆頭です。書き忘れると、新しい担当は同じ質問をもう一度してきます。当社ではこれが3代にわたって持ち越された案件がありました。

あとから足した2問は「日付」と「現物」

📌 このセクションの要点7問では足りませんでした。AIは今日の日付を間違え、台帳を現物の代わりに読みます。だから2問を足しました。

運用を始めて2週間ほどで、7問をすり抜ける抜けが2種類あることが分かりました。そこで質問を2つ足しました。

表3:あとから足した2つの質問と、足した理由(2026年9月16日時点)
#質問足した理由(実際に起きたこと)
8今日の日付を、人の画面でも確認したか2026年8月31日、司令塔は「8月31日」、別の作業役は「9月3日」と報告。AI同士では決着がつかず、人の画面で確定させた
9直近の実績を、台帳ではなく現物で突き合わせたか台帳に「検収待ち」と書かれていた2本が、実際にはすでに公開済みだった(2026年9月3日)

出典:当社の管理運用記録(2026年8月31日・9月3日の事象)。いずれも当社サイト上で確認した事実です。

9番は、言い換えると「台帳を現物の代わりにしない」ということです。管理表は、書いた瞬間から古くなります。人間の会議でも「リストに載っていないから終わっている」と判断して失敗することがありますが、AIはこれを迷わずやります。疑いません。

そして8番。日付は、AIが最も自信を持って間違える項目です。締切、支払日、契約更新——日付がずれる業務にAIを使うなら、この1問は入れてください。

最後に人が1回だけ聞く「認識に抜けはありますか」

📌 このセクションの要点7問は自己申告です。自己申告だけでは、抜けている項目そのものが申告されません。最後に人が1回だけ聞くのは、そのためです。

当社の手順では、新しいチャットは7問に答えたあと、必ずこの一言を出してから作業に入ります。

「引き継ぎました。未了は◯件、判断待ちは◯件、触ってはいけないものは◯本です。認識に抜けはありますか。」

短い一言ですが、これが最後の網です。理由は単純で、抜けているかどうかを判定できるのは、両方を知っている人間だけだからです。前任のチャットは閉じていて、もう答えられません。新任は自分の抜けに気づけません。残っているのは社長(または担当者)の記憶だけです。

実務上のコツが2つあります。ひとつは件数を言わせること。「引き継ぎました」だけでは、聞く側も抜けを探せません。「未了3件、判断待ち5件」と数字が出ると、人は「あれ、あの件が入っていない」と気づけます。もうひとつは作業を頼まれていても、先にこの一言を出させることです。急ぎの仕事があると、確認は後回しにされ、そのまま消えます。

表4:引き継ぎ書だけの運用と、7問+人の確認を足した運用の違い(当社の実運用・2026年9月16日時点)
比べる点引き継ぎ書だけ引き継ぎ書+7問+人の確認
渡るもの書いた範囲だけ書いた範囲+答えられなかった項目が見える
抜けに気づく人誰も気づかない(事故で気づく)質問に答えられない時点で分かる
気づくタイミング仕事が進んだあと仕事を始める前
人の手間ゼロ(そのかわり手戻りが出る)1回の確認・1分程度
当社で実際に起きたこと1日で13件の誤った指示、うち1件で79ページが破損(2026年8月28日)直近3回の交代で、着手前に6件・5件・3件の抜けを発見

出典:当社の管理運用記録(2026年8月28日〜9月16日)。件数は2026年9月16日に記録を数え直した実数です。

7問をやっても抜けました(6件・5件・3件)

📌 このセクションの要点7問と人の確認を入れても、抜けはゼロになりません。直近3回の交代で6件・5件・3件。狙いは全滅ではなく、着手前に見つけることです。

正直に書きます。この手順を入れても抜けます。直近3回の交代で、新しいチャットが7問に答えた直後、前任や人の側から訂正が入った件数は、6件・5件・3件でした。2026年9月16日に、当社の起動記録を1件ずつ数え直した実数です。

図3:7問に答えた直後に見つかった「抜け」の件数

7問に答えた直後に見つかった抜けの件数直近3回の交代で見つかった抜けの件数を示す横棒グラフ。9月10日の交代で6件、9月6日の交代で5件、9月5日の交代で3件。合計14件がすべて着手前に見つかった。数え直し=2026年9月16日(当社の起動記録より)9月10日の交代6件9月6日の交代5件9月5日の交代3件合計14件。全部、仕事を始める前に見つかりました。
当社の管理運用記録(2026年9月5日・9月6日・9月10日の各交代時)を2026年9月16日に数え直したもの。
表5:直近3回の交代で、着手前に見つかった抜け(2026年9月16日に数え直し)
交代した日時件数抜けていた中身(要約)
2026年9月10日 8時43分6件3代にわたって持ち越されていた「人の判断待ち」/同じページへの当日作業が3つ重なっていた/別プロジェクトの公開が一覧に未登録/決めたルールの転記が未着手/誰が更新したか未確認の1件/判定日の誤り
2026年9月6日 0時5x分5件別プロジェクトの作業を自分の未了として抱えていた/公開の確認と期間登録/転記もれ4件/終了操作待ちを「完了」と読んでいた/未了の転送設定
2026年9月5日 14時3x分3件連絡箱が別の場所にあることが申し送られていなかった/「1日1本」という存在しないルールを前任が作っていた(正しくは1日2枠)/測定期間中に更新された3件の未確認

出典:当社の起動記録(各交代時に作成)。2026年9月16日に該当箇所を開いて件数を数え直しました。

並べてみると、抜け方には型がありました。4つです。

表6:抜けの4つの型と、止め方(2026年9月16日時点)
どう抜けるか止め方
持ち越しを載せ直さない前任が「人の判断待ち」にしていた案件を、新任が一覧に書き写さない判断待ちは件数で引き継ぐ(3番の質問)
他部署の仕事を混ぜる・落とす別プロジェクトの作業を自分の未了に入れてしまう、または完全に落とす「誰の仕事か」を1行で書き分ける(2番の質問)
数え直さない「転記しました」の件数を確かめず、抜けたまま先へ進む転記の前後で件数を突き合わせる
終了待ちを完了と読む「作業は終わりました」を「閉じてよい」と読む閉じる前の3問で確かめる(次章)

出典:当社の起動記録に記載された「型」の分類(2026年9月6日・9月10日)。

ここで大事なのは、この14件が全部、仕事を始める前に見つかっていることです。8月28日の13件は、仕事を始めたあとに見つかりました。だから79ページが壊れました。同じ抜けでも、見つかる時点が違うだけで被害額が変わります。

チャットを閉じる前に聞く3つの質問

📌 このセクションの要点引き継ぎの失敗は、受け取る側だけでなく渡す側でも起きます。閉じたチャットの中にあるものは、全部消えます。

7問は「受け取る側」の仕組みです。渡す側にも1つ作りました。チャットを閉じる前に、3つ聞く。2026年8月29日に作って、同じ日に2回とも効きました。

表7:チャットを閉じる前に聞く3つの質問と、実際に出てきたもの(2026年8月29日)
#聞くこと実際に出てきたもの
1どこにも記録していない未記録は残っていないか(聞くつもりだった質問、出しかけの判断、測ったが登録していない数字)前任から7件出てきた。聞かなければ全部消えていた
2成果物は保存済みか(置き場所を、名前ではなく実際の場所で確認する)別チャットの8ファイルが未保存だった
3そのチャットに、まだ走っている別案件はないか「作業は完了」と報告されたが、別案件が進行中で閉じられなかった

出典:当社の管理運用手順書「チャットを閉じる前の3問」(2026年8月29日制定)と、同日の実例。

2番について補足します。当社では「プロジェクトフォルダに保存しました」という言葉で合意して、実際には保存されていなかったことがありました。原因は、そのチャットからはフォルダが読み取り専用で、保存できなかったからです。置き場所は、名前ではなく実際の場所で確認してください。「共有フォルダに入れました」は、人同士でも危ない言い方です。

そして3番。「作業は完了しました」は、閉じてよいという意味ではありません。これは人の退職や異動でも同じです。目の前の案件が終わっていても、その人が抱えている別件は終わっていないことがあります。

引き継ぎ書そのものが消えた日

📌 このセクションの要点2026年9月16日、当社の起動手順書が保存場所の移し替えで消えました。引き継ぎ書は、それ自体が失われる前提で置き場所を決めてください。

この記事を書いている当日に起きたことを、そのまま書きます。

2026年9月16日の朝、当社がAI側に持たせていた記録の保存場所を移し替える作業が入りました。そのとき、ある大きさを超えたファイルが4枚、移し替えの対象から外れて消えました。消えた1枚が、この記事の主題である「新しいチャットの起動手順書」=7つの質問が書かれた引き継ぎ書そのものでした。

サイズを測ると、上限は49,152バイト。起動手順書は52,019バイトで、2,867バイトだけ超えていました。原稿用紙に直すと7枚分ほどの超過です。復元できたのは、やりとりの記録が別の場所に残っていたからで、そこから原文のまま書き戻しました(復元後のファイルを当社で測り直した値も52,019バイトです)。

図4:引き継ぎ書が消えた理由(2026年9月16日)

引き継ぎ書が消えた理由移し替えの上限が49,152バイトだったのに対し、起動手順書は52,019バイトあり、2,867バイト超過したため対象から外れて消えたことを示す図。復元はやりとりの記録から行った。2026年9月16日・当社実測移し替えの上限49,152バイト起動手順書の大きさ52,019バイト上限を2,867バイト超過しました結果=対象から外れて消失(同じ理由で4枚が消えました)復元=やりとりの記録に原文が残っていたため書き戻し
当社の実測(2026年9月16日)。バイト数は復元後のファイルを測り直した値です。

この事故から学んだことは2つあります。ひとつは、引き継ぎ書は1か所にしか無いと消えるということ。当社は原文がやりとりの記録に残っていたので助かりましたが、それが無ければ20回分の経験が消えていました。もうひとつは、引き継ぎ書は太らせないほうがいいということです。厚くするほど読み飛ばされ、置き場所の制約にも引っかかります。

いまは、引き継ぎ書を「7つの質問に答えられる材料」だけに絞り、詳しい記録は別ファイルに分けています。紙1枚に戻す——結論はそこでした。AIの道具立てを増やすより、渡すものを減らすほうが効きます(当社がAIの司令塔を入れ替えたときの記録はClaudeの司令塔をFable 5から半額のOpus 5に替えた2日間にまとめています)。

社長が自社で使うときの手順

📌 このセクションの要点紙1枚で足ります。引き継ぎ書に7項目、交代のときに7問、最後に人が1回確認、閉じる前に3問。これだけです。

そのまま使える形にまとめます。特別な道具は要りません。メモ帳でもWordでも構いません。

表8:自社で使う1枚(引き継ぎ書の項目・交代時の7問・閉じる前の3問/2026年9月16日時点)
場面やること目安
ふだん引き継ぎ書に7項目だけ書き足しておく(未了/担当/判断待ち/触るな/直近の失敗/未読/進行中)1日5分
交代のとき①引き継ぎ書を渡し、7つの質問に声に出して答えさせる3〜5分
交代のとき②日付と、直近の実績を現物で確認させる(8番・9番)1分
交代のとき③人が1回だけ聞く「未了◯件、判断待ち◯件です。認識に抜けはありますか」1分
閉じるとき3問を聞く(未記録/保存場所/別案件)2分
月1回引き継ぎ書が太っていないか見て、詳細は別ファイルへ逃がす10分

出典:当社の管理運用手順書(2026年8月28日制定・9月16日時点の版)を、一般の会社向けに整理したものです。

最後に、この記事で触れなかったことを1つだけ。過去のやりとりを新しいチャットへ移す操作そのもの(設定画面での引っ越しなど)については、初心者向けClaudeの始め方|登録から会社で安全に使う設定で手順を説明しています。操作を探している方はそちらへどうぞ。この記事が扱ったのは、操作のあとに残る管理の話でした。

中小企業の社長向け

AIの引き継ぎで、毎回同じ説明をしていませんか

当社は自社サイトの運用をAIで回しながら、この手順を作りました。同じ形を、御社の業務に合わせて組み立てるところからご相談いただけます。

※ ITコーディネータ・酒井大輔が対応します。

よくある質問(FAQ)

FAQ実際にご相談の場でよく聞かれる7つに、当社の運用実績をもとにお答えします。
Q引き継ぎ書には何を書けばいいですか?
未了、担当、判断待ち、触ってはいけないもの、直近の失敗、未読の連絡、進行中の案件の7つです。7つの質問に答えられる材料がそろっていれば十分で、それ以上は厚くしないほうが効きます。
Q7つの質問は毎回やる必要がありますか?
毎回やってください。当社では省略した回に、完了済みの案件を未完了として報告するなどの誤りが出ています。所要は3〜5分です。
Q質問に答えられなかったときはどうしますか?
答えられない項目が、その時点の抜けです。仕事を始めさせる前に、その項目だけを追加で渡してください。全部を渡し直す必要はありません。
Q社内で1人だけがAIを使っています。それでも必要ですか?
必要です。抜けは人数ではなくチャットの交代で起きます。1人で使っていても、新しいチャットを開いた時点で担当者の交代と同じことが起きています。
QどのAIを使っても同じですか?
同じです。当社はClaudeで運用していますが、抜けの型はツールの性能ではなく引き継ぎの構造から出ています。上位のモデルに替えても同じ現象が出ました。
Qチャットを交代させず、長く使い続けてはいけませんか?
長くなるほど、終わった作業を未完了と言うなど古い情報で答え始めます。当社は密度の高い日で1日、通常でも数日で交代させています。
Q前と同じチャットに戻すときも7問は要りますか?
要ります。当社では2日離れて戻った回に、知っているつもりで話して2件を誤りました。「前にいたから分かる」がいちばん危ない場面です。

まとめ

  • 引き継ぎ書を渡しても、新しいAIは抜けます。抜けを見つけるのは引き継ぎ書ではなく、引き継いだ直後の質問です。
  • 当社は司令塔のチャットを20回交代させ、そのたびに7つの質問へ答えさせています(2026年9月16日時点)。
  • 7問をやっても直近3回で6件・5件・3件が抜けました。ただし全部、仕事を始める前に見つかっています。
  • 最後は人が1回だけ聞きます。「認識に抜けはありますか」——抜けを判定できるのは人だけです。
  • 閉じる前にも3問。未記録7件、未保存8ファイルが実際に出てきました。
  • 引き継ぎ書そのものが消えることもあります(2026年9月16日)。太らせず、置き場所を2か所にしてください。

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