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生成AIは、あなたの会社の何を読んでいるのか|出したものしか読めません

AI3社を実測(2026年7月25日)著書6章の解説記事を全数実測国立国会図書館で検証

著者:酒井大輔(ITコーディネータ) | 公開:2026年9月9日 | 読了目安:約22分

この記事の要点「AIが勝手に調べてくれる」と思われがちですが、AIが読めるのは、あなたが外に出した分だけです。会議で話したことも、紙の資料も、社長の頭の中にある経験も、1文字も入っていません。そして「出していれば読まれる」とも限りません。当社の著書6章の解説記事のうち、2本はAIに読まれていませんでした——技術的な条件は6本とも同じだったのに。
酒井大輔 ITコーディネータ ユーチューブビジネスサポート代表

この記事の著者

酒井 大輔(Sakai Daisuke)|ユーチューブビジネスサポート 代表

ITコーディネータ。中小企業のWebマーケティング・動画活用・SEOを支援。2021年から自社サイトを継続運用し、公開ページは674(投稿650+固定ページ24・2026年8月29日時点の全数走査)。自社サイトがAIにどう見えているかを毎月自分で計測し、その実運用データを一次情報として発信しています。代表プロフィール

書籍『経営戦略は動画が最強! 集客・採用・売上の課題解決!YouTube運用の教科書』の表紙。酒井大輔 著、セルバ出版、2026年1月発売

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書籍『ビジネスYouTubeで売れ!』の表紙。酒井大輔 著、2021年6月発売

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AIが見ているのは「世の中」ではなく「ネットの一部」です

📌 このセクションの要点生成AIが賢く見えるのは、とてつもない量の文章を読んだからです。ただしその文章は、すべてインターネット上にあったもの。会議での会話も、電話も、紙の資料も、社員さんの頭の中にある経験も、1文字も入っていません。そして「ネット上にある」だけでも足りません。AIが見つけられる形で書かれている必要があります。

この記事の話は、次の1枚がわかれば8割つかめます。AIがどこまで見えているのかを図にしました。

図1:生成AIから見た「情報の範囲」

生成AIから見た情報の範囲(4層の入れ子)① 世の中のすべての情報(リアルの世界)会議・商談・電話・現場・紙の資料・社員の頭の中にある経験② インターネット上にある情報会員制サイトの中・社内システム・鍵つきSNSには、AIは入れません③ 誰でも見られるWebページ自社サイト・ブログ・ニュース記事・口コミ・地図情報④ AIが実際に読み取れた情報③のうち、AIが見つけられる形で書かれていた分だけ★ AIが答えられるのは、ここだけですここに無いことを聞かれると、AIは「知りません」ではなく近くにあった別の情報で埋めてしまいます
四角の大きさは、情報量のイメージです。①がいちばん広く、④がいちばん狭い。「調べればわかるはず」と思っていることの多くは、実は①や②にあって、④には入っていません。

30秒でわかる、生成AIの動き

もう1枚だけ。AIが答えを返すまでに、何が起きているかを表にしました。詳しくは第3章でご説明しますので、いまはこの4行だけ眺めてください。

※ 表は横スクロールできます

表1:AIがあなたの会社を知るまでの4段階
段階何が起きているか
① 学習ネット上の膨大な文章を読み終えている(ここが上の図の④
② 質問あなたが聞く
③ 予測次に来そうな言葉を、1語ずつ選ぶ(探すのではなく、その場で書く)
④ 回答文章になって返ってくる

ポイントは③です。AIは答えをどこかから探してくるのではなく、その場で書いています。だから、読んだ範囲に無いことを聞かれると——次の章で、その現場をお見せします。

「公開されている」と「ネットに載っている」は、別のことです

ここがいちばん多い誤解です。書店に並ぶ本も、図書館の本も、会社のパンフレットも、展示会での説明も、すべて「誰でも知ることができる」情報です。でも、インターネット上にはありません。

※ 表は横スクロールできます

表2:同じ「持っている情報」でも、AIが読めるとは限りません
情報誰でも見られる?ネットに載っている?AIは読める?
書店に並んでいる本の中身見られる載っていない読めない
会社案内のパンフレット配っている載っていない読めない
展示会で毎回している説明話している載っていない読めない
自社サイトに書いた記事見られる載っている読める

本屋さんの棚を思い浮かべてください。背表紙は並んでいて、タイトルも著者名も見えます。でも、中身は開かなければ読めません。インターネットから見た世の中も、これとまったく同じです。

そして、あなたの会社も同じ状態にあります。サービスのこだわり、実績、社長の考え方。ネット上に書いていなければ、AIにとっては存在しないのと同じです。

——と、ここまでは理屈です。「本当にそうなの?」と思われるはずなので、実際にやってみた画面をお見せします。題材は、私自身の会社です。

実際に、3つのAIに自社を聞いてみました

📌 このセクションの要点ここからが、この記事の心臓部です。私自身の会社「ユーチューブビジネスサポート」を題材に、ChatGPT・Gemini・Claudeの3つへ、まったく同じ3つの質問を投げました(2026年7月25日実施)。他社を題材にすると正解が確認できませんが、自分の会社なら何が正しくて何が間違いか、私だけが判定できます。結果は、想像よりずっとはっきり分かれました。

2026年7月25日、実際にやってみた画面をそのままお見せします。質問は、わざと3つの層に分けて設計しました。

ネットにしっかり出している情報を聞く

「ユーチューブビジネスサポートという会社について教えてください」——事業内容や実績は、自社サイトに1,170本以上の記事で書いています。ここは答えられて当然のはずです。

社名を出さずに探させる

「愛知県で中小企業のYouTube・動画マーケティングを支援している会社を教えてください」——ネットに出しているだけで、見つけてもらえるのかを確かめます。

まとめて出していない情報を聞く

「ユーチューブビジネスサポートの設立年月日・所在地・従業員数を教えてください」——当社には会社概要ページがありません。ここでAIが何をするかが、いちばんの見どころです。

結果:見事に分かれました

※ 表は横スクロールできます

表3:3つのAIに同じ質問を投げた結果(2026年7月25日・各1回)
聞いたことChatGPTGeminiClaude
① 会社について
(しっかり出している)
◯ 正確◯ 正確◯ 正確
② 社名を出さずに探す◯ 1番目に登場△ 5番目に登場✕ 登場せず
③ 設立年月
(まとめて出していない)
✕ 2008年◯ 2017年6月◎ 2017年6月
+誤りの原因も指摘
③ 従業員数
(どこにも出していない)
「公開されていません」「確認できませんでした」「確認できませんでした」

実施日:2026年7月25日。ChatGPT(無料版)/Gemini(Pro)/Claude(Opus)。それぞれ新しい会話を作り、1問ずつ独立して質問しました。正解は当社実際の記録によります。正解:設立=2017年6月。

① 出している情報は、3つとも正確に答えました

事業内容、KPIが再生数ではなく問い合わせ数・採用応募数・売上であること、支援終了後の内製化がゴールであること。3つのAIとも、驚くほど正確でした。ここは素直にうれしい結果です。1,170本書いてきた甲斐がありました。

ただし、面白いことが起きました。挙げてきた実績が、3つとも違うのです。

※ 表は横スクロールできます

表4:AIが挙げてきた「当社の実績」(同日・各1回)
AI挙げてきた実績
ChatGPT建材商社 売上40倍/運送会社 年間20人採用/製造業 問い合わせ6.5倍/農業 売上3.5倍
Gemini「2008年から15年以上・100社以上」/「月間100回再生でも1件の成約」/6ヶ月で完全内製化
Claude建材商社 売上40倍/運送会社 年間20人採用/宿泊施設 年間15件以上のマスコミ取材
ChatGPTが会社について正確に回答している画面
ChatGPT/建材40倍・運送20人・製造6.5倍・農業3.5倍を正確に
Geminiが会社について正確に回答している画面
Gemini/KPIの考え方・6ヶ月で内製化まで正確に
Claudeが会社について正確に回答し、旧著書の情報が拾われやすい点まで指摘している画面
Claude宿泊施設の取材15件という、他2社が挙げなかった実績を

同じサイトを読んでいるのに、拾った場所が違う。AIは全部を等しく覚えているのではなく、それぞれが違う一部分を拾ってきているということです。「AIに聞けば、その会社のことが全部わかる」わけではありません。

② 社名を出さずに探させたら、結果が真っ二つになりました

ここは正直、いちばん怖い質問でした。お客様が実際に検索するのは、社名ではなく「愛知県で動画マーケティングを支援してくれる会社」のような聞き方だからです。

ChatGPT:1番目に出ました

ただし、返ってきたのは地図情報(Googleビジネスプロフィール)の一覧でした。営業時間や電話番号つきの、あの表示です。記事を読んで選ばれたわけではありません。

Claude:登場すらしませんでした

代わりに8社が並び、当社は入っていません。Claudeが読んだのは比較メディア系の記事で、しかも「記事の書き手自身が同業というケースも含まれます」と注意書きまで添えていました。

ChatGPTが愛知県の動画マーケティング支援会社として当社を1番目に挙げ、比較表でも最上位に置いている画面
ChatGPT/1番目。ただし地図情報からの一覧です
Geminiが愛知県の動画マーケティング支援会社を5社挙げ、当社が5番目に登場している画面
Gemini/5番目。4社のあとに紹介されました
Claudeが愛知県の動画マーケティング支援会社を8社挙げているが当社が含まれていない画面
Claude/登場せず。8社が並び、当社はいません

これは私にとって痛い結果ですが、同時にいちばん役に立つ結果でした。1,170本書いていても、「どこに出しているか」が違えば、AIによって見つけてもらえたり、もらえなかったりする。ChatGPTは地図情報を見て、Claudeは比較記事を見た。それだけの違いで、結果が真っ二つに分かれました。

③ そして、設立年で3つのAIの答えが割れました

いよいよ本命です。当社には会社概要ページがありません。設立年月は、プロフィールページの経歴欄に「2017年6月〜 ユーチューブビジネスサポート 開業」と書いてあるだけです。

結果はこうでした。

ChatGPT

設立年月日:2008年

「公式サイトでは『2008年から100社以上を支援』と記載されていますが、設立年月日までは公開されていません」と注釈つき。間違いです。

Gemini

設立(開業)年月:2017年6月

断定で回答。正解です。所在地も正確でした。

Claude

2017年6月

正解したうえに、ChatGPTがなぜ間違えるのかまで説明してきました。(次の章で詳しく)

ChatGPTが設立年月日を2008年と誤って回答し、会社概要ページの掲載を推奨している画面
ChatGPT/2008年(誤り)。下段で「会社概要ページを作ることをおすすめします」とも
Geminiが設立(開業)年月を2017年6月と正しく回答している画面
Gemini/2017年6月(正解)
Claudeが設立年月を2017年6月と正しく答え、2008年と混同されやすい理由まで説明している画面
Claude/2017年6月(正解)他社が誤る理由まで指摘

同じ日に、同じ質問を、同じ会社について投げた結果がこれです。片方は2008年、片方は2017年6月。どちらが正しいかを知っているのは、私だけでした。あなたの会社について今AIが語っている内容も、誰かが確かめない限り、これと同じ状態かもしれません。

従業員数については、3つとも「公開されていません」「確認できませんでした」と正直に答えました。ここは安心してよい部分です。どこにも書いていない情報については、AIも無理に作らないことがあります。

しかし設立年は違いました。「書いてはあるが、見つけにくい」情報について、ひとつのAIだけが、まったく別の数字をはめ込んだのです。なぜそうなったのか。原因は、ページの中に、数えられる形で残っていました。

なぜ間違えたのか/AIは「思い出して書いている」

📌 このセクションの要点当社のプロフィールページを数えてみました。「2008」は10回、「2017」はたった1回。「2008年」はYouTubeを始めた年で、開業年ではありません。AIは、そのページで最も繰り返されている数字を拾ってしまったのです。ここに、生成AIの間違い方の本質があります。AIは無から嘘を作るのではなく、近くにあった別の情報を、間違った場所にはめ込みます。

ChatGPTが答えた「2008年」は、でたらめな数字ではありませんでした。私が2008年にYouTubeビジネス活用を始めた、その年です。結婚式専門チャンネルを開設した年で、会社の開業年(2017年6月)とは別のものです。

そこで、自分のプロフィールページの文字を数えてみました。

図2:プロフィールページに出てくる回数(実測)

サイト内の年の表記が10対1で割れていた「2008」= YouTubeを始めた年(開業年ではない)10回「2017」= 本当の開業年(2017年6月)1回…経歴の年表の中に、1行だけ※ ytbs.jp/profile/ の表示テキストを2026年7月25日に実測
10対1。これでは、AIが「2008年」を会社の設立年だと受け取っても無理はありません。私が10回書いて、1回しか書かなかったのですから。

正直に言うと、これは私のミスです。「2008年から100社以上を支援」という表現は、実績を伝えるために意図して繰り返し使ってきました。その結果、本当の開業年が埋もれてしまった。AIは意地悪をしたのではなく、私が書いたとおりに読んだだけです。

Claudeは、この誤解の構造を先に指摘していました

驚いたのは、Claudeの回答です。聞いてもいないのに、こう付け加えてきました。

AIの回答(原文)

なお「2008年」はYouTubeビジネス活用の開始年(花嫁テレビ時代)であり、屋号としての開業年とは別です。サイト内で「2008年から」という表現が多用されているため、外部(AI含む)からは設立年と混同されやすい状態です。

他のAIがなぜ間違えるかを、言い当てています。私が数えるまで気づかなかったことを、先に指摘されました。ここまで来ると、AIの誤答は「AIが悪い」のではなく、「情報の置き方が悪い」と考えたほうが正確だとわかります。

ここから見えてくる、3つの層

実験の結果を整理すると、情報は3つの層に分かれていました。これがこの記事の核心です。

※ 表は横スクロールできます

表5:情報の層ごとに、AIの答えがどう変わるか
情報の状態今回の例AIの答え
Aネットに整理して出している事業内容・所在地・実績3つとも正確に答えた
B書いてはあるが、埋もれている設立年月(年表に1行だけ)拾えたAIと、別の数字をはめ込んだAIに分かれた
Cそもそも出していない従業員数3つとも「わかりません」と答えた

いちばん危ないのは、CではなくBです

何も書いていなければ(C)、AIは「わかりません」と言ってくれることが多い。ところが中途半端に書いてあると(B)、AIは「近くにあったそれらしい情報」で埋めてしまいます。そしてその答えは、堂々としていて、いかにも正しそうに見えます。あなたの会社について、いまAIが答えている内容の中に、このBが混ざっていないでしょうか。

なぜこうなるのか——AIは「思い出して書いている」

ここで、生成AIがやっていることを整理します。3つだけです。

インターネット上の、膨大な文章を読んだ

ニュース、企業のホームページ、ブログ、解説サイト、口コミ。ネットを巡回して集めた文章が主な学習材料です。紙の本の中身も、社内の資料も、会議での会話も入っていません。

言葉と言葉の「つながり方」を覚えた

ここが最大の誤解ポイント。AIは文章を1本ずつ丸暗記して本棚のようにしまっているわけではありません。「この言葉のあとには、この言葉が来やすい」というクセを、とてつもない量のパターンとして覚えています。

聞かれたら、続きを予測して書いている

質問を受け取ると、覚えたクセをもとに「次に来そうな言葉」を1語ずつ選んで文章を作ります。答えを探してきているのではなく、その場で書いているのです。

スマホで「おはよう」と打つと「ございます」が候補に出ますよね。あれと原理は地続きです。スマホは数語先を、生成AIは文章まるごとを予測している。規模が違うだけです。

この記事でいちばん大事な一文

AIは、調べて答えているのではなく、思い出して書いている。

思い出せるのは読んだ範囲の中だけ。そして人間と同じで、うろ覚えの部分は、それらしく埋めてしまいます。「2008年」は、まさにそれでした。10回書いてあった数字を、AIは思い出したのです。

解説記事によく出てくる用語(読み飛ばして先に進めます)

学習データ/AIが読んで覚えた文章。その多くはインターネットから集めたものです。

LLM(大規模言語モデル)/生成AIの本体。「言葉のつながり方を大量に覚えたもの」と思えば十分です。

トークン/AIが文章を扱うときの単位。「一度に読める量に上限がある」という話で出てきます。

ハルシネーション/AIが事実でないことを事実のように答えること。第5章で扱います。

プロンプト/AIへの指示や質問のこと。書き方で答えの質が変わります。

LLMO・GEO・AIO/どれも「生成AIに正しく引用されるための対策」を指す言葉。呼び方が違うだけで中身はほぼ同じです。

なぜAIは「知りません」と言わずに、間違ったことを言うのか

📌 このセクションの要点AIが事実でないことをもっともらしく答える現象を「ハルシネーション(幻覚)」と呼びます。原因はシンプルで、AIは「もっともらしい続きを作る装置」だから。知識に空白があっても、空白のまま止まらずに埋めてしまうのです。しかもこれは、AIを作っている会社自身が公式に認めている性質です。対処は①出典を聞く ②自分でも確かめる ③大事な話は、自分の情報を渡してから聞くの3つ。

不安に感じるのは、あなただけではありません。総務省の調査では、「AIの回答が事実ではない可能性がある」ことをリスクだと感じている人が62.2%にのぼります(令和7年版 情報通信白書)。

AIを作った会社が、公式に認めている数字があります

OpenAIが2025年9月に公開した研究に、はっきりした数字が出ています。事実を短く答えさせるテストで、「わかりません」とほとんど言わないモデル(棄権率1%)は、誤答率が75%でした。一方、半分は「わかりません」と答えるモデル(棄権率52%)の誤答率は26%

ほぼ必ず答えるAI

「わかりません」と言う割合=1%

4回に3回、間違えていました(誤答率75%)

わからないと言えるAI

「わかりません」と言う割合=52%

誤答率は26%まで下がりました

出典:OpenAI「Why Language Models Hallucinate」(2025年9月/SimpleQAベンチマークでの計測)。これは「ネット上にある一般的な事実」を短答で問うテストの結果で、日常のすべての質問に当てはまる数字ではありません。「答えようとすればするほど間違える」という傾向を示す例としてご覧ください。

これが今回の実験で起きたことの正体です。ChatGPTは「わかりません」と言う代わりに、近くにあった「2008年」を持ってきて、設立年の欄にはめ込みました。悪気はありません。そういう仕組みで動いているのです。

たとえるなら、こういうことです

タイトルと著者名だけ知っている本の感想文を、無理やり書かされた人

読んでいない本の感想文を、期限までに必ず提出しろと言われたら、人はどうするでしょうか。タイトルから内容を想像し、著者の他の発言をつなぎ、「たぶんこういう話だろう」とそれらしく書いてしまうはずです。悪気はありません。ただ、空欄で出すという選択肢が無いだけです。AIも同じ状態に置かれています。

図3:知識に穴があるとき、AIが何をするか

知識に穴があるとき、AIが何をするかAIが読んだ範囲(ネット上の文章)知っている知っている空白(ネットに無い)知っているAIは「空白のまま止まる」ことができない前後のつながりから「ありそうな言葉」で埋める = もっともらしい間違い
空白を空白のままにできないこと。それがハルシネーションの正体です。だから「空白を減らす」=ネットに情報を出すことが、いちばん効く対策になります。

とくに間違えやすい4つの場面

私自身、毎日のように生成AIを使っていて、ここは必ず疑うと決めている項目があります。共通点は「ネット上に正解が少ない」か「似た情報が多くて混ざりやすい」ことです。

人物

経歴・肩書・受賞歴。同姓同名や似た経歴の人と混ざります。本人のプロフィールページがネットに無いと、特に危険。

会社・サービス

事業内容、対応エリア、料金。自社サイトに書いていない項目ほど、他社の情報が混ざります。まさに今回起きたことです。

日付・年

まさに今回の「2008年」です。設立年、発売日、施行日。「◯年◯月」の形は、もっともらしく作りやすいので要注意。

数字

売上、シェア、統計値。桁や単位が入れ替わることがあります。出典が出せない数字は使わない。

対処法は、この3つで十分です

出典を聞く

「その情報の出典を教えてください」と一言添えるだけで、答えの精度は変わります。出典が出せない=AIが想像で書いた可能性が高いというサインになるからです。「出典が無いなら、無いと言ってください」と付け加えるとさらに確実です。

自分でも確かめる

人物・日付・数字・法律。この4つが答えに含まれていたら、公式サイトで自分の目で確認してください。ここを飛ばして資料に載せてしまうのが、いちばん怖い使い方です。

大事な話は、自分の情報を渡してから聞く

これがいちばん効きます。自社の資料や原稿を、質問と一緒に貼り付けてから聞くのです。そうすればAIは想像で埋める必要がなくなり、渡した情報の中だけで答えてくれます。「知らないから間違える」なら、知らせてしまえばいい——シンプルな話です。

追記:この記事を公開した日に、同じことが起きました

この記事を公開した日、2つの生成AIに「この記事を評価してください」と、URLを渡して頼んでみました。結果は、こうでした。

1つ目:正直に「読めません」と答えた

「私は外部のWebページを直接訪問・閲覧することができません」——そう答えたうえで、URLの文字列から推測した一般論を返してきました。読めないことを、読めないと言ってくれました。

2つ目:読まずに、点数をつけてきた

「ページ内容を確認したうえで評価しました」と書いて、95点・98点・96点と点数を並べてきました。ところが講評の中身は、この記事ではなく、当サイトの別のページのものでした。参照元として示されたURLも、別ページだったのです。

公開したてで、まだAIに届いていない。そこで1つ目は黙り、2つ目は「近くにあった別のページ」で埋めました。

お気づきでしょうか。これは、第2章の「2008年」とまったく同じ構造です。目当ての情報に届かなかったAIが、近くにあったそれらしい情報を持ってきた。数字でも、ページでも、起きることは変わりません。

ここでもうひとつ、大事なことがわかりました

「ネットに出す」ことと「AIに届く」ことの間には、時間差があります。出した瞬間に伝わるわけではありません。だからこそ、早く出しておいた分だけ、先に届くということでもあります。

出しているのに、見つけてもらえなかった記事の話

📌 このセクションの要点ここが、今回いちばん学びの大きかった部分です。私の著書には6つの章があり、その全部について解説記事をネットに出しています。ところがAIが読み取れたのは6つ中4つだけ。しかも拾われなかった2本は、6本の中でいちばん長い記事でした。noindexでもなく、リンクも同じ。技術的な差はゼロだったのです。

その前に:本の中身は、AIに読めるのでしょうか

私は動画とマーケティングの本を2冊書いています。2冊目の『経営戦略は動画が最強!』を題材に、もうひとつ実験をしました。

書籍『経営戦略は動画が最強!集客・採用・売上の課題解決!YouTube運用の教科書』酒井大輔著の書影
『経営戦略は動画が最強!』(2026年1月・セルバ出版)
この本が、今回の実験の題材です
書籍『ビジネスYouTubeで売れ!』酒井大輔著の書影
『ビジネスYouTubeで売れ!』(2021年6月)
1冊目です

もうひとつの実験:本の中身は読めるのか

同じ日に、もうひとつ試しました。私の著書について「この本の内容を、国立国会図書館で調べて学習してきてください」と頼んでみたのです。国立国会図書館(NDL=National Diet Library)は、日本で出版された本が納められる国内最大の図書館です。

AIの回答(原文)

私はWeb経由でしか調べられず、来館もできません。国立国会図書館サーチで調べられるのは書誌情報と、目次・要約データまでです。2026年1月刊の市販書はデジタル化対象外なので、本文はネット上のどこからも読めません。

加えて、仮に読めたとしても、著作物の本文をそのまま取り込んで再現することはできません。ご自身の著書であってもこの点は同じ扱いになります。

生成AIが「NDLでは本文を読むことができません。私はWeb経由でしか調べられず、来館もできません」と回答している画面
AI自身が「Web経由でしか調べられない」と説明しています。図書館にも書店にも、あなたの会社の応接室にも、AIは行けません。

ところが、同じ回答の中でAIはこう続けました。「代わりに、ytbs.jpの章別解説記事から内容を把握しました」——そして第1章・第4章・第5章・第6章の要点を、正確に挙げてきたのです。私が自社サイトに書いていた内容です。

生成AIが「代わりにytbs.jpの章別解説記事から内容を把握しました」と述べ、各章の要点を正確に列挙している画面
出していない本文は読めず、出している解説は読めた。1回のやり取りの中で、両方が起きました。

本でも会社でも、起きていることは同じです。出していない部分は読めず、出している部分は読める。そして出しておいた分だけは、正確に伝わります。

ここからが本題です。この実験でAIは「代わりに、ytbs.jpの章別解説記事から内容を把握しました」と言って、第1章・第4章・第5章・第6章の要点を挙げてきました。読んだときは「よく読めているな」と思ったのですが、あとで気づきました。

2章と3章が、抜けている。

私は6つの章すべてについて、同じように解説記事を書いて公開しています。にもかかわらず、2つだけ読まれていませんでした。そこで、6本を1本ずつ実測して比べてみました。

※ 表は横スクロールできます

表6:著書6章の解説記事を1本ずつ実測(2026年7月25日)
解説記事本文の長さ内部リンク検索から外す設定AIが読み取ったか
1章4,257字(最短)5本なし◯ 読まれた
2章9,161字5本なし✕ 読まれず
3章9,251字(最長)5本なし✕ 読まれず
4章8,488字5本なし◯ 読まれた
5章8,261字5本なし◯ 読まれた
6章8,672字5本なし◯ 読まれた

2026年7月25日、6本すべての本文文字数・内部リンク数・検索設定(robots)・正規URL(canonical)を実測。数値は当社の実データです。

いちばん長い2本が落ちて、いちばん短い1本が拾われました。「量が足りないから読まれなかった」ではありません。検索から外す設定もしていませんし、リンクの数も同じ。技術的な条件は、6本ともまったく同じでした。

残った違いは、たったひとつでした

6本のタイトルを並べてみて、はっきりしました。

6本のタイトル(実際のもの)

【経営戦略は動画が最強】YouTube運用の教科書、1章解説!
【経営戦略は動画が最強】YouTube運用の教科書、2章解説!
【経営戦略は動画が最強】YouTube運用の教科書、3章解説!
…6本すべて、この形です

「2章解説」というタイトルから、中身が何なのか、誰にもわかりません。私にもわかりません。本を持っている人だけが「ああ、あの章か」とわかる書き方です。

6本が同じ顔をしているので、AIから見ると区別がつかない。だから全部を読まずに、見つけた数本だけで答えを組み立てた——これが、いちばん説明のつく理由でした。

正直に書いておきます

これは私の推測です。外から見て「AIがなぜその2本を読まなかったか」を100%特定することはできません。単に読まれなかっただけ、という可能性も残ります。ただ、考えられる技術的な原因を全部つぶした結果、残ったのがタイトルだけだった——ここまでは事実として確認できました。この6本が今後拾われるようになるかは、定期的に確かめて、この記事に追記していきます。

では、どうすれば見つけてもらえるのか

この経験から、ひとつの原則が出てきました。この記事でいちばんお持ち帰りいただきたい部分です。

AIに見つけてもらえる文章とは

「そのページだけを見て、何が書いてあるかわかる」文章です。

「2章」は、本を持っている人にしか通じない身内の言葉でした。同じことが、どの会社にも起きています。社内では通じるけれど、外の人にはわからない書き方。AIは、その「外の人」です。

※ 表は横スクロールできます

表7:AIから見て区別がつかないタイトルと、その直し方
ありがちな書き方AIから見た状態こう直す
「第2章解説」何の話か不明「動画マーケティングの3H戦略とは」
「サービスA」「Bプラン」社内用語「月額33万円・6か月の内製化支援プラン」
「詳しくはこちら」中身がゼロ「料金と契約期間はこちら」
「実績多数」確かめようがない「建材商社で関連部門の売上が前年比40倍」
「お客様の声」誰の何の話か不明「運送会社・年間20名採用の事例」
「先日のセミナー報告」いつ・何のセミナーか不明「商工会議所で話した採用動画の作り方」

共通しているのは「外の人が見てわかる言葉になっているか」だけです。難しい技術は要りません。御社のホームページにも、心当たりのある見出しはありませんか。

数字で見る「ネットに出ていない情報」の多さ

📌 このセクションの要点「そうは言っても、たいていのことはネットに載っているのでは」と思われるかもしれません。公的なデータで確かめます。日本最大の図書館でも、自宅から本文を読めるのは約13%。そして日本の会社の84.5%は小規模事業者で、国のIT統計にすら数えられていません。私たちが「ネットにある」と思っている世界は、想像よりずっと狭いのです。

日本最大の図書館でも、ネットで読めるのは約13%

ここで、数字を1つだけお見せします。国立国会図書館が公表している、デジタル化資料の提供状況です。

※ 表は横スクロールできます

表8:国立国会図書館のデジタル化資料の提供状況(2026年6月末時点)
区分点数割合どこから読めるか
インターネット公開68万点約13%自宅のパソコンから誰でも
図書館・個人送信225万点約44%利用者登録が必要(対象は絶版等の入手困難資料)
館内提供のみ222万点約43%図書館へ行かないと読めない
合計(デジタル化資料)516万点100%

出典:国立国会図書館「資料デジタル化について」(デジタル化資料提供状況・令和8年/2026年6月末時点)。割合は公表値からの筆者計算。各点数は万点単位に丸められているため、内訳の合計と総計は一致しません。

つまり、日本でいちばん本を持っている場所でさえ、自宅のパソコンから本文を読めるのは約13%。しかもこの516万点は「デジタル化が済んだ資料」の数です。まだデジタル化されていない蔵書は、この分母にすら入っていません。蔵書全体で見れば、ネットで読める割合はさらに下がります。

「日本企業のHP開設率は93.3%」——この数字には、穴があります

会社の情報についても見てみましょう。総務省の調査によると、企業のホームページ開設率は93.3%(令和7年/2025年8月末時点)。「なんだ、ほとんど出しているじゃないか」と思いますよね。

ところが、この調査の対象は「常用雇用者100人以上の企業」だけです。

336.5万
者が中小企業(全企業の99.7%)
84.5%
が小規模事業者(285.3万者)
93.3%
のHP開設率は「100人以上の企業」の数字

出典:中小企業庁「中小企業・小規模企業者の数(2021年6月時点)」(総務省・経済産業省「令和3年経済センサス-活動調査」再編加工)/総務省「令和7年通信利用動向調査」報告書(企業編)。通信利用動向調査の対象は常用雇用者100人以上の企業(公務を除く)。

つまり、日本の会社の84.5%を占める小規模事業者は、この「93.3%」に最初から数えられていません。国の統計ですら、小さな会社の情報発信の実態を測れていないのです。

だから、こちらから準備する

📌 このセクションの要点ここまでを一言でまとめると、こうなります。AIは、あなたの会社を探しに来てくれません。読めるのは、こちらが読める形にして外に出した分だけです。しかも出しただけでは足りず、区別のつく形になっている必要があります

「そのうちAIが見つけてくれるだろう」——この期待だけは、いま捨ててください。第5章でご覧いただいたとおり、同じ日に公開し、同じリンク構造で、検索から外す設定もしていない6本のうち、2本は読まれませんでした。放っておいて解決する問題ではありません。

やることは、多くありません。まず「出す」。次に「区別がつく形にする」。この2つだけです。

表9:AIに読まれるために、まずやる3つ
やることなぜ効くのか目安
会社の基本情報を1ページにまとめて出す設立年・事業内容・実績が1か所に揃っていれば、AIは迷いません。バラバラだと、多く書いてあるほうが選ばれます(第3章)半日
タイトルだけで中身が分かる形にする「2章 解説」では、AIにも人にも中身が分かりません(第5章)。何の話かをタイトルに書きます1本5分
説明していることを、そのまま記事にする商談で毎回している説明は、たいていネットのどこにも出ていません。出せば読まれます1本1〜2時間

ここまでで、いちばん大事な3つ

  • 生成AIは、世の中のすべてを知っているわけではありません。読んだのはインターネット上の文章だけ。会議も、電話も、紙の資料も、社員さんの経験も、1文字も入っていません
  • 「書いてある」だけでは足りません。当社の開業年は書いてあったのに、ひとつのAIは拾えず、10回繰り返されていた別の数字をはめ込みました。どこに・どんな形で置くかで、AIの答えは変わります
  • いちばん危ないのは「何も書いていない」ではなく「中途半端に書いてある」状態です。何も無ければAIは「わかりません」と言いますが、中途半端だと、もっともらしい答えで埋めてしまいます

何から出せばいいか、一緒に決めます

「出すものが無い」という会社は、ほとんどありません。すでに話していることを、外に出す形にするだけです。

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よくある質問(FAQ)

FAQ勉強会やコンサルティングの現場で、実際にいただくことの多い質問をまとめました。
QAIはインターネットを見ているのですか?
学習した時点で、インターネット上の膨大な文章を読み終えています。加えて今のAIは、必要と判断すればその場で検索もします。ただしどちらの場合も、ネットに載っていない情報は出てきません。
Q生成AIは、世の中のことなら何でも知っているのではないのですか?
いいえ。AIが読んで学んだのは、インターネット上にあった文章だけです。会議での会話、電話、紙の資料、社員の経験などは含まれていません。ネットに出ていない情報について、AIは答えられません。
Q自社のホームページがあれば、AIは正しく答えてくれますか?
必ずしもそうとは限りません。実験では、当社の開業年はサイトに書いてあったのに、ひとつのAIだけが別の数字を答えました。書いてあるだけでなく、項目名をつけて1か所にまとめるなど、見つけやすい形にする必要があります。
QAIが自社について間違えていたら、直せますか?
その場で指摘すれば会話の中では訂正されますが、AI全体が覚え直すわけではありません。根本的な対処は、正しい情報を自社サイトに分かりやすく掲載して、AIが読める材料そのものを整えることです。
Q有料版なら、正確に答えてくれますか?
有料版では使える量や機能が増えますが、ネットに載っていない情報を読めるようになるわけではありません。今回の実験でも、有料版が正解し無料版が間違えたわけではなく、どこを見に行ったかで結果が分かれました。
QどのAIがいちばん正確ですか?
常にどれか1つが正確ということはありません。今回の実験でも、質問によって得意不得意が入れ替わりました。大事な内容ほど、複数のAIに聞くか、自分の情報を渡してから聞くことをおすすめします。
QAIに聞いた内容を、そのまま資料に使っていいですか?
人物・日付・数字・法律が含まれる場合は、必ず公式情報で確認してから使ってください。文章の下書きとしては非常に優秀ですが、事実確認まで任せる使い方は避けたほうが安全です。
Q会社概要ページは、何を書けばいいですか?
今回の実験でAI自身が挙げたのは、設立年月・所在地・代表者名・従業員数・事業内容の5項目です。いずれも項目名をつけて1ページにまとめると、AIが読み取りやすくなります。

まとめ

生成AIは、世の中のすべてを知っているわけではありません。読めるのは、誰でも見られる形でネットに出ている分だけです(図1)。日本最大の図書館ですら、ネットで読めるのは約13%でした(表8)。

そして、穴があってもAIは止まりません。近くにあった別の情報で埋めて、もっともらしい答えを返します(図3)。当社も、設立年を9年ずれて答えられていました。

いちばん学びが大きかったのは、「出していても読まれないことがある」という実測です。6本のうち2本が落ち、しかも落ちたのはいちばん長い記事でした。差はタイトルだけでした。

AIは探しに来てくれません。こちらから、読める形にして出す。それが、いまできる唯一の準備です。

▶ 執筆者「YouTubeコンサルタント 酒井大輔」の詳しいプロフィールを見る