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生成AIを使いこなせない本当の理由|経営者が決める3つと、同じ月に始めた2社の実例

使わない理由の1位は42.0%自社ブログ1,170本超を運用2026年8月時点

著者:酒井大輔(ITコーディネータ) | 公開日:2026年8月26日 | 読了目安:約12分

この記事の要点生成AIは入れた。触ってもみた。それなのに、何に使えばいいのか分からないまま止まっている——という声を、支援の現場でもセミナーの会場でもよく聞きます。原因はツールでも社員でもありませんでした。空いた時間の行き先を、経営者が決めていないだけです。この記事では、決めるべき3つと、同じ月に始めて別々の行き先を選んだ2社がいまどうなっているかを、当社の実測とあわせてお話しします。
📌 30秒まとめ生成AIを使いこなせない原因は、性能でも知識でもなく意思決定の不足です。経営者が決めるのは3つだけで、そのうち本当に経営者にしか決められないのは「空いた時間の行き先」1つです。
  • 使わない理由の1位は「活用場面が明らかでない」。まだ使っていない層に絞ると42.0%にのぼります(商工中金・2026年1月・3,892社)。
  • 決めるのは3つ。①自分が何をやめるか ②空いた時間をどこへ向けるか ③何が動かなかったらやめるか。
  • 行き先が違えば、数字が出るまでの時間も違います。同じ月に始めた2社は、片方がサイト、もう片方が営業電話を選びました。
酒井大輔 ITコーディネータ ユーチューブビジネスサポート代表

この記事の著者

酒井 大輔(Sakai Daisuke)|ユーチューブビジネスサポート 代表

ITコーディネータ。中小企業のWebマーケ・動画活用・SEOを支援。2021年から自社ブログを継続運用し公開記事は1,170本以上(2026年6月時点)。著書に『ビジネスユーチューブで売れ!』『経営戦略は動画が最強!』。代表プロフィール

使わない理由の1位は、ツールの問題ではありませんでした

📌 このセクションの要点生成AIを使っていない会社が挙げる理由の1位は、値段でも難しさでもなく「何に使えばいいか分からない」です。つまり足りていないのは道具ではなく、行き先です。

商工中金が中小企業3,892社へ行った調査(2026年1月調査/調査期間 2025年12月19日〜2026年1月16日)で、生成AIを使わない理由の1位は「自社業務における生成AIの具体的な活用場面が明らかでない」でした。全回答者ベースで35.6%、まだ積極的に使っていない層(n=2,522)に絞ると42.0%にのぼります。

ここが大事なところです。「高い」でも「難しい」でも「危ない」でもありません。使い道が見えない。それが1位でした。

図1:42.0%という数字が、どの範囲の話なのか

商工中金2026年1月調査の母集団の入れ子構造。全回答者3,892社のうち、まだ積極的に使っていない層(n=2,522)に絞ると「活用場面が明らかでない」は42.0%になる 全回答者 3,892社(商工中金・2026年1月) 「活用場面が明らかでない」= 35.6%(全体で1位) まだ積極的に使っていない層(n=2,522) 42.0% が「何に使えばいいか分からない」と 答えています
出典:商工中金「中小企業の生成AIの利用にかかる調査(2026年1月調査)」(有効回答3,892社・2026年3月31日公表)をもとに当社作成。原典のPDFを見る

この手の数字は、誰に聞いたのか(母集団)を確かめないと、正反対に読めてしまいます。よく見かける3つを、原典まで当たって整理しました。

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表1:よく見る3つの数字と、原典で確認した実際の中身(2026年8月時点)
数字よく言われている読まれ方原典で確認した中身
74%7割以上がもう使っている商工中金・2026年1月・3,892社。対象は積極的に活用している層だけ全体に換算すると約23%(積極活用層31.1% × 74.0%)
32.4%中小企業の3割が活用中帝国データバンク・2026年3月・10,312社。「非常に活用」と「やや活用」の合計
35.6%使わない理由の1位正しい。ただしまだ使っていない層に絞ると42.0%に上がる

出典:商工中金「中小企業の生成AIの利用にかかる調査(2026年1月調査)」有効回答3,892社(原典PDF)/帝国データバンク「生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」有効回答10,312社(原典PDF)。調査主体も母集団も違うため、これらの数字を足したり並べて比べたりはしていません。

「使いきれない」は、優秀な会社でも起きます

📌 このセクションの要点止まるのは知識が足りないからではありません。やりきった会社ほど、次の行き先を失って止まります。そして、その相手にかかっている費用は、アルバイト2時間分ほどです。

先日のセミナーで、ある参加者の方がこう言われました。生成AIを使って社内のシステムを組み、業務改善をやりきった。ずっとフル活用していた。ところが作り終わった瞬間に、何に使っていいか分からなくなった——と。

この方は、決して使えていない側の人ではありません。むしろ会場で一番使い込んでいた側です。それでも止まりました。

支援の現場でも似たことが起きます。「うちはもうずっと使っています」と言われていた方が、しばらく一緒にやったあとで「正直、全然使えていませんでした」とおっしゃる。これは珍しいことではなく、むしろよくある景色です。

相手にいくら払っているか、一度だけ考えてみてください

ここで一度、お金の話をさせてください。生成AIの有料プランは、月20ドル・日本円でおよそ3,000円です。アルバイト2時間分と考えると、判断しやすくなると思います。

ちなみに当社は、その上を行く月200ドルのプランを契約していますが、それでも足りません。当社の作業量を基準にした実感として、社員5人分ほどの量を任せています。1,200ページ近くあるサイトの点検を「気になるところを全部教えて」と一度に投げられるので、人がやる前提の量ではなくなりました。

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表2:かけている費用と、任せられる量の関係(当社の実感/2026年8月時点)
かけている費用できることたとえるなら
無料質問に答えてもらう。調べものの下書きお試し
月20ドル(約3,000円)作業そのものを任せられる。多くの会社はここで十分アルバイト2時間分
月200ドル超サイト全体の点検、1,000本単位の一括処理社員5人分ほどの量

出典:当社の契約内容と実際の使用感(2026年8月時点)。金額は為替により変動します。

採ろうとしても採れなかった人が、この金額で席に着いている。そう考えると、「何に使っていいか分からない」と言って止まっているのは、ずいぶんもったいない話だと思うのです。

図2:「入れた」と「使いきれている」のあいだにあるもの

生成AIを導入してから使いきれるまでのあいだには、知識ではなく「行き先を決める」という一手が抜けているという図 入れた 触ってもみた 行き先を決める ここが抜けている 使いきれている 売上が動く 足りないのは知識でも予算でもなく、決めることでした
止まっている会社の多くは、道具は持っています。抜けているのは真ん中の一手です。

人のせいに、できなくなりました

📌 このセクションの要点これまで経営者が使えた言い訳は「人が来ない」「時間がない」「お金がない」でした。そのどれも、いまは通りません。ボトルネックは自分だ、と認めるところから始まります。

これまでは、会社が動かない理由を人のせいにできました。人が採れない。いい社員が来ない。教える時間がない。実際そのとおりでしたし、誰も責められませんでした。

ところが、いまは社員はもういます。月3,000円で席に着いていて、疲れも文句も言いません。そうなると、動かない理由は一つに絞られます。ボトルネックが自分になったということです。

図3:これまで通っていた言い訳と、いま通らなくなった理由

人が採れない・時間がない・お金がないという3つの言い訳が、生成AIによってそれぞれ通らなくなったことを示す対照表 これまで通っていた言い訳 人が採れない 教える時間がない お金がない いま通らなくなった理由 もう席に着いている 教えた分だけ、その日から動く 月3,000円から始められる
言い訳が消えると、残るのは経営者の意思決定だけになります。

「ホームページがしょぼい」の意味が、変わってしまいました

分かりやすい例をひとつ。少し前まで、ホームページが古いままでも仕方がありませんでした。忙しい、お金がかかる、業者に頼む時間がない。それは正当な理由でした。

でも、いまはお金も時間もほとんどかかりません。そうなると、ホームページが放置されていることの意味が変わります。「やる気がない会社」に見えてしまうのです。私自身はそんなふうには見ませんが、そう見る人は確実に増えました。

私自身も、AIに間違えられました。原因は自分の書き方でした

人のせいにできない、という話を、自分の失敗で書きます。

生成AI3社に「ユーチューブビジネスサポートはいつできたか」と聞いてみたことがあります。正解は2017年6月です。結果は次のとおりでした。

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表3:生成AI3社に自社の開業時期を聞いた結果(当社実測)
聞いた相手返ってきた答えそのときの様子
ChatGPT2008年(誤り)そのまま言い切ってきました
Gemini2017年6月正しく答えました
Claude2017年6月「間違えている可能性がある」と添えてきました

出典:当社が実際に3社へ同じ質問をした結果。時期は2026年。

ここで大事なのは、どのAIが賢いかではありません。間違えた原因は、私の書き方でした。

私は「2008年からYouTubeをやっている」という話を、10回以上あちこちに書いていました。一方で「ユーチューブビジネスサポートを始めたのは2017年6月」という事実は、サイトの中にたった1か所しか書いていなかったのです。10回書いたほうが拾われ、1回しか書かなかったほうが埋もれた。それだけの話でした。

そして怖いのは、これがAI相手だけの話ではないということです。AIが間違えるということは、お客様も同じように誤解している可能性が高いということです。私はその指摘を受けて、翌日にはサイトを直しました。

AIのせいにも、業者のせいにも、社員のせいにもできません。書いていなかったのは自分だからです。

経営者が決めるのは、3つだけです

📌 このセクションの要点決めるのは①自分が何をやめるか ②空いた時間をどこへ向けるか ③何が動かなかったらやめるかの3つです。このうち②だけは、経営者にしか決められません

セミナーでいつもお聞きしていることがあります。

ブログの下書きが15分から5分になりました。10分空きました。その10分で、何をしますか。
チラシ作りが1時間から10分になりました。50分空きました。その50分で、何をしますか。

だいたい、会場が静かになります。そして少ししてから「何をしようかな……」という声が出ます。その「何をしよう」を50分考えて、結局1時間使ってしまう。笑い話のようですが、実際に起きていることです。

空いた時間の使い道には、はっきりと段階があります。

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表4:空いた時間の使い方には3つの段階があり、売上に効くのは1つだけ
段階やっていること売上への効き方
1作業が速くなる(15分が5分に)ほとんど効きません。楽にはなります
2空いた時間で、別の作業をする効きません。そして、いちばん多くの人がここで止まります
3空いた時間を「お客様に何をどう伝えるか」に使うここだけが売上に効きます

出典:当社が支援先およびセミナー参加者から聞き取った内容をもとに整理(2026年8月時点)。

私自身、ずっと「じゃあ空いた時間で何をすればいいのか、それも教えてよ」と思っていました。ですが、そこを教えてくれるセミナーには出会えませんでした。だから、そこを埋めようと思っています。

① 何を手放すか

「何をAIに渡すか」ではありません。自分が何をやめるかです。順番が逆だと、渡した先で何が起きても他人事になります。

ひとつ正直に書いておきます。いまでも、外注のほうが品質が高い仕事はたくさんあります。変わったのは品質の順位ではなく、選択肢のほうです。「時間をかけて品質が必要なもの」と「そこまでの品質は要らないもの」を、こちらで選べるようになりました。

ちなみに当社が、いまも人にお願いし続けているのは弁護士と税理士だけです。理由は品質ではなく、専門的な判断そのものが必要だからです。

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表5:手放すもの、手放さないものの仕分け(当社の場合・2026年8月時点)
問い答えが「はい」なら当社の例
専門的な判断と責任が必要か手放さない弁護士・税理士
ここが勝負どころで、品質を落とせないか手放さない本気で受注したい提案の見せ方
量が多く、手作業ではやりきれないか手放す1,000本を超える記事の一括修正
自分がやると、他が止まるか手放す下書き・調べもの・整理

出典:当社の実際の判断(2026年8月時点)。渡し方の具体的な手順は 中小企業の生成AI活用 にまとめています。

② 空いた時間の行き先(ここだけが、経営者にしか決められません)

先に決めておかないと、空いた時間は必ず別の作業で埋まります。振込を思い出したり、たまっていたメールを片づけたり。悪いことではありませんが、売上は動きません。

行き先を決めた例を、2つ挙げます。

当社の場合:コンサルティングの使い方を、3か月で全部変えました

支援先の方に、こうお願いするようにしました。「知りたいことは、まず全部Claudeに聞いてください。それで分からなかったことだけ、私に聞いてください」と。

そして私は、通訳と判断だけに専念するようにしました。結果として、私がいない間にも仕事が進むようになり、次にお会いしたときに出てくる質問の質がまるで変わりました。実際に手を動かした人の質問になるからです。これまで10回かかっていたことが、3回で終わるようになりました。

これはAIに任せた話ではなく、私が自分の役割を決め直した話です。

支援先の場合:営業の電話を、毎回AIに採点させています

ある支援先では、お客様との電話をAIに渡して、毎回100点満点で採点させています。直近の1本は100点中58点でした。

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表6:営業電話をAIに採点させた結果の一例(支援先・社名は伏せています)
項目評価指摘された内容
ヒアリング25.11点よくできている
自社の強みの説明15点説明が不足している
金額の提示前回より前進している
クロージング3点ここがいちばん弱い
合計58点/100点次に直すところが1つに絞れる

出典:支援先が実際に受け取った採点結果(掲載許諾済み・社名は非公開)。

効いているのは点数そのものではありません。「どこが弱いか」が、毎回同じ基準で言葉になることです。社内でロールプレイを見合う方法も悪くありませんが、やる側も見る側も時間を使ううえに、基準が人によって変わります。

通話をAIに渡すなら、この3つは必ず守ってください

  • 録音は、お客様の了解を得たものだけにしてください。了解を取らずに録音したものをAIに渡すことは、おすすめしません。
  • 個人名・電話番号・住所などの個人情報は渡さないでください。渡す前に伏せるか、その部分を外します。
  • 入力した内容が学習に使われない設定・契約のサービスを選んでください。使ってよいAIを1つ決める、入れてよい情報を決める、学習に使わない契約にする。この3点はセットです。

③ いつやめるか

最後は、始める前に決めておくことです。何が、いつまでに動かなかったらやめるのか。

これを決めていないと、続けるか迷い続けることになります。逆に決めてあれば、迷わず続けられます。目安の置き方は 生成AI活用事例10 に、動いた数字と動かなかった数字を並べて書いています。

決めたのに動かないときは、たいてい「渡していない」だけです

行き先を決めても、思ったものが出てこないことがあります。そういうとき、指示の書き方を疑いがちですが、原因は材料のほうにあることがほとんどです。

私にも実例があります。セミナー資料をAIに作らせていたのですが、どうしてもピンときませんでした。データはたっぷり入れているつもりでした。

あるとき、同じ内容を話した2時間分のセミナー録画を、そのまま渡してみました。すると「やりたいことは分かりました」と返ってきて、資料ができあがりました。足りなかったのは指示ではなく、入れるデータのほうでした

図4:経営者が決める3つ(そのまま書き込めます)

経営者が決める3つを書き込むためのワークシート。手放すもの、空いた時間の行き先、やめる基準の3欄 1 自分がやめること 「渡すもの」ではなく「やめるもの」から書きます 2 空いた時間の行き先 ここだけは経営者にしか決められません。お客様への伝え方に向けます 3 やめる基準 何が、いつまでに動かなかったらやめるのかを先に決めます
3つのうち、社員や外部に任せられないのは2番だけです。

「うちの場合、どこへ向ければいいのか」を一緒に決めます

行き先の決め方は、業種と、いまお客様がどこで迷っているかで変わります。当社では、決めるところから実際に手を動かすところまでを一緒に進めています。費用と支援の中身は、こちらに書いています。

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決めないと、社長が現場作業に戻ります

📌 このセクションの要点行き先を決めないままだと、空いた時間は「自分でもできてしまう作業」に吸い込まれます。手は動いていますが、売上には直結しません。

できることが増えると、今まで人に任せていた仕事まで「これも自分でできる」と思えてきます。生成AIでできる仕事、できないこと の最後にも書いた落とし穴ですが、経営者にとってはもう一段深いところにつながります。

私自身がそうです。1日空いていると、あれもこれもと全部お願いしてしまいます。そしてその日のうちに終わらせようとして、結局寝られなくなる。自分で自分の首を絞めて「言いすぎなければよかったな」と反省する、ということが実際にあります。

ただし、名誉のために書いておくと、その1日で2〜3か月分の仕事は進んでいます。だから、たくさんやること自体が悪いわけではありません。悪いのは行き先を決めていないことのほうです。

もうひとつ、正直に書きます。やるべきことが10個あったとして、実際に手をつけるのは1個か、ゼロです。しかもそれが何年も続きます。これは支援先の話ではなく、私自身にも当てはまります。忙しかった、時間がなかった、と言っているうちに1か月が過ぎる。よくあることです。

だからこそ、「できるか」ではなく「やるべきか」で決める必要があります。生成AIが悪いのではなく、考えの整理ができていないだけだからです。

図5:空いた時間は、決めていないと必ずどこかへ吸い込まれます

空いた時間の行き先を決めなかった場合と決めた場合の対比。決めないと社長が現場作業に戻り、決めるとお客様への伝え方に時間が向かう 空いた時間 50分 決めていない場合 振込・メール・自分でもできる作業 = 社長が現場に戻る 手は動いているが、売上は動かない 先に決めてある場合 お客様に何をどう伝えるか = 選ばれる理由が増える ここだけが、あとから数字になって返ってくる
同じ50分でも、先に決めてあるかどうかで行き先が変わります。

同じ月に始めた2社は、決めた行き先が違いました

📌 このセクションの要点同じ月に生成AIを始めた2社を見ています。差は本気度ではありませんでした。決めた行き先が違うと、数字が出るまでの時間も変わります。

当社の支援先に、ほぼ同じ時期に生成AIを本格的に使いはじめた2社があります。進み方はまったく違いますが、片方が熱心でもう片方が怠けている、という話ではありません。決めた行き先が違うだけでした。

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表7:同じ月に始めた2社が選んだ行き先と、いま出ている変化(社名は伏せています)
決めた行き先やっていることいま出ている変化
A社サイトの情報を整えるお客様が知りたいことを、読んで分かる形で書き直したEC月商が前年同月比 約2.5倍/購入率 3.81%→6.11%
B社営業電話の質を上げる了解を得た通話をAIに採点させ、弱いところを毎回つぶしている数字に出るまでには時間がかかる。ただし、いちばんお客様に近い場所から手をつけている

出典:当社の支援先2社の実測(A社は2026年7月・前年同月比/掲載許諾済み)。B社の採点結果は表6に掲載したものです。

A社は、来る人の数を増やしたわけではありません。来ていた人が買うようになったのです。100人来て3人から4人しか買っていなかったサイトで、6人以上が買うようになりました。

B社が選んだのは、サイトではなく電話でした。数字として見えるまでには時間がかかります。ただ、お客様と直接向き合う場所を選んだという意味では、いちばん手前を選んだとも言えます。あと少しで形になるところまで来ています。

図6:行き先の選び方と、数字が出るまでの早さ

生成AIで空いた時間の行き先を3方向に分けた図。サイトの情報、お客様との会話、社内業務で、数字が出るまでの早さが異なる サイトの情報を整える お客様が知りたいことを 読んで分かる形にする 数字が出るのは比較的早い お客様との会話を磨く 電話や商談を採点させ 弱いところを毎回つぶす 効きは深いが、時間がかかる 社内の業務を整える 作業を速くする 仕組みを作る 楽になるが、売上は動きにくい どれが正解ということではありません。ただし「いつ数字になるか」は最初から違います。
行き先を選ぶときは、効きの大きさと、出るまでの時間の両方を見てください。

当社の場合|2026年5月、1,000本を超える記事を一度に書き換えました

私自身が「これはすごい」と実感したのは、2026年5月のことでした。サイト内のプロフィール表記を変える必要が出たのですが、当時すでに記事は1,000本を超えていました。

それまでは、こういう作業は手作業でした。1本ずつ開いて直す。だから正直に言えば、手作業でやるのが前提だった頃は「やらない」と決めていたのです。ところがこのときは、全記事をまとめて自動で書き換えてくれました。

ここで申し上げたいのは「速くなった」ではありません。これまで最初から諦めていたことが、検討の対象に入ったということです。決め方が変わったのではなく、決める対象そのものが変わりました

WordPressの管理画面。ユーチューブビジネスサポートの公開記事が1,170本以上あることを示す投稿一覧(2026年6月時点)
当社サイトの公開記事一覧(2026年6月時点で1,170本以上)。この規模を手作業で直す前提だと、そもそも検討の対象になりませんでした。

ここが、経営者のスタートラインです

📌 このセクションの要点言い訳が消えると、残るのは「全部の責任は自分にある」という自覚だけになります。それはつらいことのようでいて、経営者にとってはむしろ出発点です。

ここまで書いてきたことを、ひとことにまとめます。

使える社員がもう手元にいるのに、何に使っていいか分からないから使いきれない。それは生成AIのせいではありません。優秀な人を使いきれないのは、経営者の実力です。つまり、経営者が育たなければいけない、という話です。

厳しい言い方に聞こえるかもしれませんが、私は自分にも同じことを言っています。人が来ないから、時間がないから、と言えなくなったいま、ボトルネックは自分だと認めるしかありません。

そして不思議なもので、その自覚ができたのは生成AIがあったからこそかもしれない、とも思うのです。人のせいにできなくなったから、覚悟ができた。

そこが、経営者としてのスタートラインなのだと思います。

図7:言い訳が消えたあとに、経営者に残るもの

採用難や時間不足という言い訳が消えたあと、経営者に残るのは意思決定と責任だけになり、そこがスタートラインになることを示す図 人が来ない 時間がない・お金がない 言い訳が消えた 決めることと、責任 これだけが手元に残る ここが、経営者としてのスタートラインです
言い訳が消えることは、悪いことではありません。やっと自分の勝負ができる、ということです。

明日、ひとつだけやるとしたら。「いま自分がやめること」を1つ書いてください。そこから始まります。

よくある質問(FAQ)

FAQセミナーや支援の場で、経営者の方から実際にいただくことの多い質問をまとめました。
Q生成AIを入れたのに、社内で使われません。何から変えればいいですか。
全員に広げる前に、経営者ご自身が「空いた時間を何に使うか」を決めてください。使わない理由の1位は「活用場面が明らかでない」で、まだ使っていない層では42.0%にのぼります。足りないのは道具ではなく行き先です。
Q何に使えばいいか分からないとき、最初に決めることは何ですか。
3つだけです。自分が何をやめるか、空いた時間をどこへ向けるか、何が動かなかったらやめるか。このうち2番目だけは経営者にしか決められません。渡し方の手順は、そのあとで構いません。
Q無料プランのままでも大丈夫ですか。
空いた時間を売上に向けたいなら、月20ドル(およそ3,000円)程度の有料プランをおすすめします。アルバイト2時間分の費用です。当社は上位のプランでも足りず、当社の作業量を基準にした実感として社員5人分ほどの量を任せています。
Q生成AIを使っている中小企業は、実際どのくらいですか。
帝国データバンクの2026年3月調査(10,312社)で32.4%です。ただし「非常に活用している」と「やや活用している」の合計なので、本格的に使っている会社はこれより少なくなります。
Q「7割以上がもう使っている」という数字を見ましたが、本当ですか。
商工中金の2026年1月調査(3,892社)にある74%は、積極的に活用している層だけを対象にした数字です。全体に換算すると約23%(積極活用層31.1%×74.0%)になります。母集団を確かめてから読んでください。
Q営業の電話をAIに採点させても大丈夫ですか。
お客様の了解を得た通話だけにしてください。そのうえで個人名や連絡先は渡さず、入力内容が学習に使われない設定のサービスを選ぶ必要があります。この3つを守れば、弱いところが毎回同じ基準で言葉になります。
Q決めたのに、思ったものが出てきません。
指示の書き方ではなく、渡した材料が足りていないことがほとんどです。当社は資料が作れなかったとき、同じ内容を話した2時間分の録画をそのまま渡したところ、一度で形になりました。
Q社長ひとりで始めても意味がありますか。
むしろ社長から始めてください。行き先を決めるのは経営者にしかできない仕事で、社員に渡すのはそのあとです。当社の支援先も、最初は経営者おひとりから始まっています。

動画の本を2冊書きました。行き着いた考え方は、この記事と同じでした

📌 このセクションの要点どちらもYouTubeと動画の本ですが、書いていることの中心は「お客様の立場に立って、伝わる形にする」です。手段が生成AIに変わっても、決めるのは経営者だという点は変わりませんでした。
著書『ビジネスユーチューブで売れ!』の書影(2021年6月発売)
『ビジネスユーチューブで売れ!』(2021年6月発売)
著書『経営戦略は動画が最強! 集客・採用・売上の課題解決!YouTube運用の教科書』の書影(セルバ出版・2026年1月発売)
『経営戦略は動画が最強!』(セルバ出版・2026年1月発売)

まとめ

  • 生成AIを使わない理由の1位は「活用場面が明らかでない」。まだ使っていない層では42.0%にのぼります。
  • 止まるのは知識不足ではありません。やりきった会社ほど、次の行き先を失って止まります。
  • 人が来ない・時間がない・お金がない。その3つとも、いまは言い訳になりません。
  • 経営者が決めるのは3つ。そのうち「空いた時間の行き先」だけは、経営者にしか決められません。
  • 決めないと、空いた時間は自分でもできる作業に吸い込まれ、社長が現場に戻ります。
  • 同じ月に始めた2社の差は本気度ではなく、選んだ行き先の違いでした。行き先が違えば、数字が出るまでの時間も違います。
  • 決めたのに動かないときは、渡した材料が足りていないだけのことがほとんどです。
  • 明日やることは1つ。「いま自分がやめること」を1つ書く。
中小企業の経営者の方へ

「うちは、どこへ向ければいいのか」から一緒に決めます

行き先の決め方は、業種と、いまお客様がどこで迷っているかで変わります。決めるところから実際に手を動かすところまで、ITコーディネータが伴走します。まずは支援の中身と費用をご覧ください。

※ ITコーディネータ・酒井大輔が対応します。

▶ 執筆者「YouTubeコンサルタント 酒井大輔」の詳しいプロフィールを見る