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生成AIでできる仕事、できないこと外注に2週間かかっていたものが、1時間で終わるようになりました

実際にやった仕事で計測自社ブログ1,170本超を運用統計は原典で確認

著者:酒井大輔(ITコーディネータ) | 最終更新:2026年8月 | 読了目安:約12分

この記事の要点「生成AIでどこまでできるのか」を、AIの性能ではなく自分が出している外注の側から整理しました。当社が実際にやめた仕事と、いまも人に頼んでいる仕事を、日数と往復回数まで出しています。外注が悪くなったという話ではありません。むしろ、これまでいい仕事をしてもらってきたからこそ、何が変わったのかをはっきりさせたいと思って書きました。
📌 30秒まとめ生成AIで変わったのは、できることの範囲だけではありません。人に頼む「理由」が変わりました。
  • いちばん大きい差は品質ではなく待ち時間です。ブログの外注は案が出るまで最低1週間、修正を頼んでさらに1週間。同じ流れが、いまは1時間以内に終わります。
  • 差を作っているのは納期ではなく「確認の往復」です。「納品形態はどうしますか」「2案あるが言い回しはどちらにしますか」という細かい確認が、外注では早くても半日で1ターン。生成AIはその場で進みます。
  • それでも人に頼んでいる仕事が3つあります。責任と判断(弁護士・税理士・医者)、勝負どころの品質(本気で受注したいときのチラシのデザイン)、信用と看板(商業出版)。できないから頼むのではなく、そのほうがいいから頼んでいます。
酒井大輔 ITコーディネータ ユーチューブビジネスサポート代表

この記事の著者

酒井 大輔(Sakai Daisuke)|ユーチューブビジネスサポート 代表

ITコーディネータ。中小企業のWebマーケ・動画活用・SEOを支援。2021年から自社ブログを継続運用し公開記事は1,170本以上(2026年6月時点)。この記事の数字は、すべて自社と支援先で実際に起きたことです。代表プロフィール

やりたいことと、できることの距離

📌 このセクションの要点これまで、やりたいことと自分のスキルは別物でした。あいだをつないでいたのが外注です。いまは、あいだにあるのは言葉だけになりました。

まず、そもそもなぜ外注していたのか、というところから始めます。ここがはっきりすると、いま何が変わったのかも、すっと入ってくると思います。

たとえば私は音楽が好きですが、作曲はできません。文章を書きたいと思っても、きちんとした文章はライターの方にお願いしたほうがいい。やりたいことと、それを形にするスキルは、別物でした。どれだけ音楽が好きでも、作曲のスキルがなければ曲はできない。これが、生成AIが出てくる前の話です。

図1:「やりたいこと」と「できること」の距離

生成AI以前と現在で、やりたいこととできることの関係がどう変わったかを示した図 生成AI以前は、やりたいこととできることは別の円で、あいだをスキルや外注や時間がつないでいた。現在は2つの円がほぼ重なり、あいだにあるのは言葉だけになった。 これまで(生成AIの前) やりたいこと できること スキル 外注・時間 別物でした 思いつく → 頼む → 待つ → できあがる いま やりたいこと できること ほぼ重なりました 思いつく → 頼む → できあがる あいだにあるのは、言葉だけになりました。
セミナーでお話ししている図を記事用に作り直したもの。当社の考え方を整理した概念図です。

ホームページを直したいと思ったときも同じでした。これまでは制作会社にお願いするしかなかった。いまは、直したいところを言葉で伝えれば、案が出てきます。しかも、その案を「じゃあ、やってみて」と言えば、そのまま形になります。

ここで大事なのは、スキルが要らなくなったわけではないということです。何を直したいのか、なぜ直したいのかを考えるのは、これまでと変わらず自分の仕事です。変わったのは、考えたことを形にするまでの距離だけでした。

なお、この記事に出てくる仕事は、特定の1つのサービスだけでできたものではありません。ChatGPT・Claude・Geminiなど、どれを使うかで、できる範囲も品質も操作の感覚も変わります。ここでは個別のサービス比較はしませんが、「生成AIなら何でも同じ」ではない、という点だけ先にお伝えしておきます。

変わったのは「頼む理由」です

📌 このセクションの要点外注が要らなくなったのではありません。選べるようになったのです。時間をかけて品質を取る道と、そこそこの品質を今日中に出す道。これまでは前者しかありませんでした。

距離が縮まると、次に起きるのは「では、何を人に頼むのか」という問いです。生成AIの話になると「どこまでできるようになったのか」と聞かれますが、経営者にとって本当に知りたいのは、AIの性能ではないはずです。いま自分が出している外注を、どうすればいいのか。知りたいのはそちらだと思います。

そこでこの記事では、当社が実際に外注していた仕事を並べて、やめたもの・やめなかったものを、日数と往復回数まで出して書きます。先に結論を言うと、こうなりました。

図2:増えたのは「選択肢」です

生成AIの前と後で、仕事の頼み方の選択肢がどう変わったかを示した2軸図 縦軸が求める品質、横軸がかけられる時間。生成AIの前は「時間をかけて外注する」道しかなく、生成AIの後は「今日中に自分で形にする」という道が加わった。 かけられる時間 少ない 多い 高い 低い 求める品質 人に頼む 時間をかけて品質を取る 前も今も、ここは変わらない 自分でやる そこそこの品質を今日中に ここが新しく増えた これまでは、この道が なかっただけです
生成AIで外注がなくなるのではなく、選択肢が1つ増えたという整理。当社の実感にもとづく概念図です。

作曲もホームページも、これまでは専門の方にいい仕事をしてもらってきました。増えたのは、頼まなくても自分でできる、という選択肢です。そして選択肢が増えたぶん、頼む側には「これはどちらでいくか」を決める仕事が新しく生まれました。この記事は、その決め方の話です。

待ち時間の正体は「確認の往復」でした

📌 このセクションの要点ブログを外注すると、案が出るまで最低1週間、修正を頼んでさらに1週間。同じ流れが生成AIでは1時間以内に終わります。ただし本当の差は納期そのものではなく、細かい確認が1ターンあたり何時間かかるかです。

まず、当社がブログ記事を外注していたときの流れです。誇張はしていません。ごく普通の進み方です。

図3:ブログ記事1本ができるまで(当社が外注していたときと、いま)

ブログ記事1本の制作にかかる時間を、外注時と生成AI利用時で比較した帯グラフ 外注は依頼から案出しまで約1週間、確認と修正依頼を経てさらに約1週間で、最短でも約2週間。生成AIは同じ工程が1時間以内に収まる。 外注していたとき = 最短でも約2週間・往復2回 依頼 → 案出しを待つ 最低1週間 確認して 修正依頼 修正を待つ さらに1週間 いま = 同じ流れが1時間以内 1時間 ── ここが、まるごと空きます ※ 品質が同じという意味ではありません。同じ工程が何日で終わるか、という話です。
当社がブログ記事を外注していたときの標準的な流れと、生成AIを使ういまの流れ。日数は当社の実績にもとづきます。

本当の差は、細かい確認の1ターンにあります

ただ、これを「外注は遅い」で終わらせると、大事なところを見落とします。外注が遅いのではありません。仕事を前に進めるには細かい確認が必要で、その確認に相手の時間をもらう必要があるから、時間がかかるのです。

たとえば、こういう確認です。納品の形式はどうしますか。2案あるが、この言い回しはどちらでいきますか。ここは表にしますか、箇条書きにしますか。ひとつひとつは1分で決まる話です。でも、メールで聞けば早くても半日で1ターン。相手にも自分の仕事がありますから、それが普通です。

生成AIは、この確認がその場で終わります。差が出ているのは納期そのものではなく、ここです。

※ 横スクロールできます

表1:仕事を進めるときの細かい確認が、返ってくるまでの時間(当社の実感)
確認したいこと人に頼んでいたとき生成AIを使ういま
納品の形式はどうするか早くても半日で1ターンその場
2案あるが、言い回しはどちらか次のメールまで待つ両方すぐ出して見比べる
ここは表か、箇条書きかまとめて聞くために保留する思いついた時点で試す
やっぱり全体の構成を変えたい言い出しにくい・費用の話になる気兼ねなく言える

出典:当社(ユーチューブビジネスサポート)が外注していた期間と、生成AI利用後の実感を整理したもの。金額の話ではなく、進行の話です。

4つ目が、意外と効きます。人に頼んでいると「ここまで作ってもらったのに、構成から変えたいとは言いにくい」という気持ちが働きます。その遠慮が、結果として仕事の質を下げていたことに、あとから気づきました。

この話をしている記事が、ほとんどありません

「生成AIでできること・できないこと」で検索して、上位に並ぶ記事のタイトルを見てみました(2026年8月時点)。書かれているのは、文章生成が得意、要約が得意、計算は苦手、最新情報は弱い、といったAIの機能の話です。外注・発注・納期に触れたタイトルは、ひとつもありませんでした。

理由はたぶん、単純です。この話を書けるのは発注する側だけだからです。制作会社も代理店も、自分たちの仕事が減る話は書けません。ここに書いてあることは、当社が発注側として実際に経験したことです。

実際にやってみた3つの仕事

📌 このセクションの要点話だけでは伝わらないので、実際にやったことを3つ出します。会社案内のPDF自社サイト1,170本の整理、そしてお客様がご自身でやられたECサイトの改善です。1つ目は、このサイトから実物をダウンロードして確かめられます。

① 会社案内のPDF 半日かかるはずが、1時間以内

当社のプロフィールページには、A4・1枚版とA4・2枚版のPDFを置いています。1枚版は要点だけ、2枚版は経歴や事例まで入れた詳細版です。

これまでの感覚でいえば、この2種類を作るには早くても半日かかります。中身を決めて、レイアウトを整えて、2種類のバランスを取る。実際にやったのは、指示を1回出して、出てきたものを見て直しを伝える、という作業です。作り直しは4〜5回。完成まで1時間以内でした。

図4:会社案内PDF(1枚版・2枚版)ができるまで

会社案内PDF2種類の制作にかかった時間を、想定と実績で比較した図 従来の想定では半日程度かかる作業だが、生成AIを使い、指示1回と4〜5回の作り直しを経て、1時間以内に完成した。 これまでの感覚 中身を決める → 作る → 2種類のバランスを整える = 早くても半日 実際にやったこと 指示 1回 見て、直しを伝える 4〜5回 完成 合計 1時間以内 ※ 一発でできたわけではありません。4〜5回作り直しています。それでも1時間以内でした。
当社のプロフィールページに掲載しているPDF2種の制作実績。完成したものはページからダウンロードできます。

ここで大事なのは「一発でできた」ではないことです。4〜5回作り直しています。もしこれを人に頼んでいたら、4〜5回の修正依頼は、それだけで2週間コースになっていたはずです。回数が同じでも、1ターンが数秒か半日かで、終わる日が変わります。

この1時間のあいだ、人がやったのは「何を載せるかを決めること」と「出てきたものを見て、直しを伝えること」の2つだけです。逆に言えば、載せる項目を自分で決められないと、生成AIがあっても止まります。手が速くなっただけで、決めるところは、これまでと同じように人の仕事のまま残りました。

② 自社サイト1,170本の整理 制作会社に頼めば、見積もりから始まる規模

当社は2021年から自社ブログを運用していて、公開記事は1,170本を超えました(2026年6月時点)。ただ、数が増えれば良いというものではありませんでした。そこで、609本を検索結果に出さない設定にし、さらに594本を下書きに戻しました。

図5:自社サイトでやった整理(2026年)

自社ブログ1,170本に対して行った整理の内訳を示した図 公開記事1,170本超のうち、609本を検索結果に出さない設定にし、594本を下書きに戻した。いずれも自社で実施した。 1,170本超 公開記事(2026年6月時点) 2021年から積み上げたもの 609本 検索結果に出さない設定に 594本 下書きに戻した この2つは別々の作業です(対象の記事も別)。足したり引いたりできる数字ではありません。 いずれも社内で実施。制作会社に頼めば、まず見積もりから始まる規模です。
自社ブログで実施した整理。本数はいずれも実測値です。
ユーチューブビジネスサポートのWordPress管理画面。公開記事が1,170本以上あることを示す投稿一覧の件数表示
自社ブログの公開記事数(2026年6月時点)。管理画面の実際の表示です。

これだけの本数を、1本ずつ人手で判断して設定していくと、とても社内では終わりません。かといって外注するには、まず「何を基準に消すのか」を決めて伝える必要があります。その基準を決めるところから一緒に考えられたのが、いちばん大きかったところです。

③ お客様のECサイト 新しいシステムは入れていません

建材商社の伊勢通様は、2026年5月から取り組みを始められました。7月の実績は、自社ECの売上が前年同月比で約2.5倍。ただ、当社が注目しているのはそこではありません。

3.81%

これまでの平均
(サイトに来た人が買う割合)

新しいシステムは
入れていません

6.11%

2026年7月
(サイトに来た人が買う割合)

100人が来て3〜4人しか買っていなかったサイトで、6人以上が買うようになった、ということです。広告を増やしたわけでも、新しいシステムを入れたわけでもありません。伊勢通様がご自身で、サイトに載せる情報を整えられた結果です。

やられたことは、商品の説明を「読んで分かる形」に書き直すことでした。これまでも情報は載っていたのです。ただ、載っていることと、伝わることは違いました。その差を、ご自身の手で埋められた。ここは伊勢通様の事例ページで詳しく書いています。

出典:伊勢通様の実績(2026年7月/前年同月比)。掲載許諾をいただいています。

「自社の場合、どこから手をつけるのか」を一緒に整理します

いま出している外注のうち、どれを自分たちでやり、どれを引き続き頼むのか。ここは会社ごとに答えが違います。当社の伴走支援では、その線引きから一緒に決めていきます。

生成AI・LLMO伴走支援を見る

それでも人に頼んでいる仕事と、その理由

📌 このセクションの要点ここが、この記事でいちばん書きたかったところです。当社がいまも人に頼んでいる仕事は3種類あります。できないから頼んでいるのではありません。そのほうがいいから頼んでいます。

「生成AIができないこと」を、AIの機能で説明する記事はたくさんあります。計算が苦手だ、最新情報に弱い、といった話です。でも経営者が知りたいのは、たぶんそこではありません。結局、何を人に頼めばいいのか。そちらだと思います。

当社の場合、いまも人に頼んでいる仕事は、きれいに3つに分かれました。

人に頼んでいる3つの理由

3つの分類
  1. 責任と判断|弁護士・税理士・医者。その判断に責任を負う人が必要な仕事です。体調のことを生成AIに聞く人もいますが、私は信用していないので病院へ行きます。
  2. 勝負どころの品質|本気で受注したいときのチラシのデザイン。いまでも外注のほうが品質が高い仕事です。
  3. 信用と看板|商業出版。個人でも本を出せる時代に、出版社から依頼を受けて書く形を選んでいます。自分でできても、自分ではやらない仕事です。

なお、この3つは「生成AIにはできない」という意味ではありません。できるかどうかとは別に、人に頼む理由があるということです。だからこの記事では「できない仕事」ではなく「頼む理由」という言い方をしています。

図6:それでも人に頼んでいる3種類

生成AIがある現在も人に頼んでいる仕事を3つに分類した図 責任と判断が必要な仕事は弁護士・税理士・医者へ。勝負どころの品質が必要な仕事はデザイナーへ。信用と看板が必要な仕事は出版社へ。いずれもできないからではなく、そのほうがいいから頼んでいる。 ① 責任と判断 弁護士・税理士・医者 その判断に責任を負う人が 必要な仕事です。 体調のことを生成AIに聞く 人もいますが、私は信用して いないので病院へ行きます。 ② 勝負どころの品質 チラシのデザイン 本気で受注したいときの チラシは、いまもプロに 頼んでいます。 正直なところ、外注のほうが 品質が高い仕事はまだ多い。 ③ 信用と看板 本の出版 いまは個人でも本を出せます が、私は出版社から依頼を 受けて書く形を選びます。 自分でできても、 自分ではやらない仕事です。 できないから頼むのではなく、そのほうがいいから頼んでいます。
当社が2026年8月時点で人に頼んでいる仕事の分類。会社によって中身は変わりますが、分け方は使えると思います。

正直に言うと、まだ外注のほうが品質が高い仕事は多いです

ここは、はっきり書いておきます。いまでも、外注したほうが品質が高いものはたくさんあります。本気で受注を取りにいくチラシのデザインは、その代表です。プロのデザイナーが作ったものと、自分が作ったものを並べれば、差は見えます。

だから、全部を自分でやろうという話ではありません。時間をかけて品質を取るべき仕事と、そこまでの品質は要らない仕事を、分けられるようになったというだけです。分けられるようになったこと自体が、大きな変化だと思っています。

「自分でできても、自分ではやらない」という選び方

3つ目の出版は、少し性質が違います。いまはご自身で本を出す方法もあります。文章を書くことだけを考えれば、手段はある。それでも私は、出版社から依頼を受けて書く形を選んでいます。

本という形にすること自体が目的ではなく、出版社が出すと決めた本である、という事実に意味があるからです。ここは、できる・できないの話ではありません。頼む理由が、能力の外側にあるという例です。

この3つを並べて見えてきたことがあります。生成AIで変わったのは「できる範囲」ではなく、「頼む理由」でした。これまでは、できないから頼んでいた。いまは、そのほうがいいから頼んでいます。理由がはっきりしているぶん、頼み方も変わりました。

この記事で使った数字の、正しい読み方

📌 このセクションの要点生成AIの記事でよく見る数字を、原典の資料まで確認しました。すると3件とも、母集団が思っていたものと違いました。数字そのものより、この確認のしかたを持ち帰っていただきたいところです。

この記事を書くにあたって、生成AIの利用状況の統計をいくつか調べました。よく引用されている数字ばかりです。ところが、元の調査報告書まで当たってみると、意味が思っていたものと違っていました。

※ 横スクロールできます

表2:よく引用される数字と、原典で確認した実際の中身(2026年8月に各調査の公表資料で確認)
よく見る言い方原典実際の中身
中小企業の74%が
メールや議事録に使っている
商工中金
2026年1月調査(3,892社)
対象は「積極活用層」だけ。全体に換算すると約23%
中小企業の32.4%が
実際に活用している
帝国データバンク
2026年3月調査(10,312社)
これは中小企業の数字として正しい。ただし「非常に」+「やや」の合計
使わない理由の1位は
使いどころが分からない
商工中金
2026年1月調査(3,892社)
正しい。35.6%で1位。まだ使っていない層に絞ると42.0%

出典:商工中金「中小企業の生成AIの利用にかかる調査(2026年1月調査)」/帝国データバンク「生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」。いずれも各社の公表資料を2026年8月に確認。

図7:「74%」の正体

商工中金調査の74.0%という数字の母集団を図解したもの 調査対象3,892社のうち生成AI積極活用層は約31%で、74.0%はその積極活用層のなかでの割合。全体に換算すると約23%になる。 調査に答えた中小企業 3,892社 積極活用層 約31% まだ積極的には使っていない 約69% 「74.0%」が指しているのは、この左側のなかだけ 74.0% 3,892社全体に直すと 約23% ※ 複数回答の設問です。「中小企業の74%が使っている」と読むと、実際の3倍ほど多く見積もることになります。
商工中金の調査報告書で設問の対象を確認した結果。数字は正しくても、母集団を見ないと意味が変わります。

なぜこんな話を記事に入れたかというと、これは生成AIの使い方そのものだからです。生成AIに聞けば、統計はいくらでも出てきます。出てきた数字をそのまま使うか、原典に当たって母集団を確かめるか。ここが、使い慣れている人とそうでない人の差になります。

ちなみに、この確認自体も生成AIにやらせています。「この数字の原典と、設問の対象を確認して」と頼めば、報告書のPDFまで当たってくれます。人がやるべきなのは、確認しろと言うことのほうです。

落とし穴|できるから、全部やってしまう

📌 このセクションの要点やれることが増えると、全部やりたくなります。1日で2〜3か月分の仕事が進むこともありますが、そうなると自分で自分の首を絞めます。これは生成AIの問題ではありません。

正直な話も書いておきます。1日空いていると、思いついたことを片っ端から指示してしまうことがあります。出てきたものは、その日のうちに見て返さないと止まる。結果、寝られなくなる。「言いすぎなければよかった」と反省します。

ただ、その1日で進んだ量は、これまでの感覚でいうと2〜3か月分だったりします。だから、悪いことばかりでもありません。問題は量ではなく、やることの優先順位を決めていないことのほうです。

起きること

今まで人に任せていた仕事まで「これも自分でできる」と思えてしまい、手元の仕事が増える。増えた仕事は、たいてい売上に直結しない。

対処

「できるか」ではなく「やるべきか」で決める。生成AIが悪いのではなく、考えの整理ができていないだけです。

この話は、経営者にとってもう一段深いところにつながります。優秀な人手が急に手に入ったとき、それを何に使うかを決めるのは経営者の仕事だからです。そこはまた別の記事で書きます。

明日、ひとつだけやること

📌 このセクションの要点いま出している外注を1つ選んで、「初稿が出るまで何日か」と「往復が何回あるか」を数えてみてください。判断はそれからで間に合います。

いきなり外注をやめる必要はありません。まず、いま出している外注を1つ思い浮かべて、次の2つを数えるところからで十分です。

表3:いま出している外注を1つ選んで、数えてみる
数えること見かた
最初の案が出るまで何日か1週間を超えているなら、自分でやる選択肢を検討する価値があります
やりとりが何往復あるか往復が多い仕事ほど、手元でやったときの差が大きく出ます
その仕事に、勝負どころの品質が要るか要るなら、これまでどおり頼むのが正解です
その判断に、責任を負う人が必要か必要なら、迷わず専門家に頼んでください

上の2つが大きくて、下の2つが「いいえ」なら、その仕事は一度自分でやってみる価値があります。やってみて、品質が足りなければ戻せばいいだけです。試すのに費用はかかりません。

よくある質問(FAQ)

FAQ外注と生成AIの使い分けについて、経営者の方からよくいただく質問をまとめました。
Q生成AIがあれば、外注はもう必要ないのですか?
必要です。当社もいまだに弁護士・税理士・デザイナー・出版社に頼んでいます。変わったのは頼む理由で、できないから頼むのではなく、そのほうがいいから頼む形になりました。
Q生成AIで作ったものは、外注より品質が落ちませんか?
落ちる仕事はあります。とくにデザインは、いまでも外注のほうが品質が高いと感じています。そのかわり、そこまでの品質が要らない仕事を今日中に形にできるようになりました。
Q外注と生成AIで、いちばん大きい差は何ですか?
待ち時間です。当社の場合、ブログ記事は案が出るまで最低1週間、修正でさらに1週間かかっていました。同じ流れが1時間以内に終わります。
Qなぜ、そこまで速くなるのですか?
細かい確認がその場で終わるからです。納品形式をどうするか、2案のどちらにするかといった確認は、人に頼むと早くても半日で1ターンかかります。この積み重ねが日数の差になります。
Q生成AIに任せてはいけない仕事はありますか?
その判断に責任を負う人が必要な仕事です。法務・税務・医療がこれにあたります。当社は体調のことは病院で診てもらいますし、税務は税理士にお願いしています。
Q生成AIにできる仕事には、どんなものがありますか?
やってほしいことを言葉で説明できる仕事です。当社の場合は、ブログ記事の下書き、会社案内のPDF、サイトの文章の書き直し、1,170本を超える記事の整理などを社内でやっています。
Q反対に、任せ切らないほうがいい仕事は何ですか?
3つあります。責任を負う人が必要な仕事(法務・税務・医療)、勝負どころの品質が要る仕事(本気で受注したいときのデザイン)、信用や看板が意味を持つ仕事(商業出版)です。
Q生成AIなら、どれを使っても同じですか?
同じではありません。ChatGPT・Claude・Geminiなど、どれを使うかで、できる範囲も品質も操作の感覚も変わります。この記事の事例は、特定の1つのサービスだけで成立したものではありません。
Qパソコンが苦手でも使えますか?
やることは、やってほしいことを言葉で伝えることだけです。専門用語も操作の知識も要りません。むしろ、何をやりたいかがはっきりしている経営者のほうが向いています。
Q何から始めればいいですか?
いま出している外注を1つ選び、初稿が出るまでの日数とやりとりの往復回数を数えてみてください。日数が長く往復が多い仕事ほど、自分でやったときの差が大きく出ます。
Q生成AIを使うと、社内の仕事は増えませんか?
増えることがあります。できることが増えると、全部自分でやりたくなるためです。これは生成AIの問題ではなく、やるべきことの優先順位を決めていないだけなので、先に整理してから使うのがおすすめです。

この考え方は、2冊の本にまとめています

どちらもYouTubeと動画活用の本で、生成AIの本ではありません。ただ、外に向けて情報をどう出すかという考え方は、この記事と同じです。

書影 ビジネスユーチューブで売れ! 酒井大輔 著(2021年6月発売)

ビジネスユーチューブで売れ!2021年6月発売。書籍ページ

書影 経営戦略は動画が最強! 集客・採用・売上の課題解決!YouTube運用の教科書 酒井大輔 著(2026年1月発売)

経営戦略は動画が最強!セルバ出版・2026年1月発売。書籍ページ

まとめ

  • 生成AIで変わったのは、できる範囲より「頼む理由」です。できないから頼むのではなく、そのほうがいいから頼む形になりました。
  • いちばん大きい差は品質ではなく待ち時間。当社のブログ記事は案出しに1週間、修正にさらに1週間かかっていましたが、同じ流れが1時間以内に終わります。
  • 差を作っているのは納期ではなく確認の往復です。細かい確認が、半日で1ターンか、その場か。ここが積み重なります。
  • それでも人に頼む仕事は3つ。責任と判断(弁護士・税理士・医者)、勝負どころの品質(チラシのデザイン)、信用と看板(商業出版)。
  • いまでも外注のほうが品質が高い仕事は多くあります。全部を自分でやる話ではなく、時間をかける仕事とそうでない仕事を分けられるようになった、という話です。
  • 統計は原典まで確認してください。よく見る「74%」は積極活用層のなかの割合で、全体では約23%でした。
  • 明日やることは1つ。いま出している外注を1つ選び、初稿までの日数と往復回数を数えることです。
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