ホーム > 生成AI・ITコーディネータ > 生成AIでできる仕事、できないこと
生成AIでできる仕事、できないこと外注に2週間かかっていたものが、1時間で終わるようになりました
- いちばん大きい差は品質ではなく待ち時間です。ブログの外注は案が出るまで最低1週間、修正を頼んでさらに1週間。同じ流れが、いまは1時間以内に終わります。
- 差を作っているのは納期ではなく「確認の往復」です。「納品形態はどうしますか」「2案あるが言い回しはどちらにしますか」という細かい確認が、外注では早くても半日で1ターン。生成AIはその場で進みます。
- それでも人に頼んでいる仕事が3つあります。責任と判断(弁護士・税理士・医者)、勝負どころの品質(本気で受注したいときのチラシのデザイン)、信用と看板(商業出版)。できないから頼むのではなく、そのほうがいいから頼んでいます。
やりたいことと、できることの距離
まず、そもそもなぜ外注していたのか、というところから始めます。ここがはっきりすると、いま何が変わったのかも、すっと入ってくると思います。
たとえば私は音楽が好きですが、作曲はできません。文章を書きたいと思っても、きちんとした文章はライターの方にお願いしたほうがいい。やりたいことと、それを形にするスキルは、別物でした。どれだけ音楽が好きでも、作曲のスキルがなければ曲はできない。これが、生成AIが出てくる前の話です。
図1:「やりたいこと」と「できること」の距離
ホームページを直したいと思ったときも同じでした。これまでは制作会社にお願いするしかなかった。いまは、直したいところを言葉で伝えれば、案が出てきます。しかも、その案を「じゃあ、やってみて」と言えば、そのまま形になります。
ここで大事なのは、スキルが要らなくなったわけではないということです。何を直したいのか、なぜ直したいのかを考えるのは、これまでと変わらず自分の仕事です。変わったのは、考えたことを形にするまでの距離だけでした。
なお、この記事に出てくる仕事は、特定の1つのサービスだけでできたものではありません。ChatGPT・Claude・Geminiなど、どれを使うかで、できる範囲も品質も操作の感覚も変わります。ここでは個別のサービス比較はしませんが、「生成AIなら何でも同じ」ではない、という点だけ先にお伝えしておきます。
変わったのは「頼む理由」です
距離が縮まると、次に起きるのは「では、何を人に頼むのか」という問いです。生成AIの話になると「どこまでできるようになったのか」と聞かれますが、経営者にとって本当に知りたいのは、AIの性能ではないはずです。いま自分が出している外注を、どうすればいいのか。知りたいのはそちらだと思います。
そこでこの記事では、当社が実際に外注していた仕事を並べて、やめたもの・やめなかったものを、日数と往復回数まで出して書きます。先に結論を言うと、こうなりました。
図2:増えたのは「選択肢」です
作曲もホームページも、これまでは専門の方にいい仕事をしてもらってきました。増えたのは、頼まなくても自分でできる、という選択肢です。そして選択肢が増えたぶん、頼む側には「これはどちらでいくか」を決める仕事が新しく生まれました。この記事は、その決め方の話です。
待ち時間の正体は「確認の往復」でした
まず、当社がブログ記事を外注していたときの流れです。誇張はしていません。ごく普通の進み方です。
図3:ブログ記事1本ができるまで(当社が外注していたときと、いま)
本当の差は、細かい確認の1ターンにあります
ただ、これを「外注は遅い」で終わらせると、大事なところを見落とします。外注が遅いのではありません。仕事を前に進めるには細かい確認が必要で、その確認に相手の時間をもらう必要があるから、時間がかかるのです。
たとえば、こういう確認です。納品の形式はどうしますか。2案あるが、この言い回しはどちらでいきますか。ここは表にしますか、箇条書きにしますか。ひとつひとつは1分で決まる話です。でも、メールで聞けば早くても半日で1ターン。相手にも自分の仕事がありますから、それが普通です。
生成AIは、この確認がその場で終わります。差が出ているのは納期そのものではなく、ここです。
※ 横スクロールできます
| 確認したいこと | 人に頼んでいたとき | 生成AIを使ういま |
|---|---|---|
| 納品の形式はどうするか | 早くても半日で1ターン | その場 |
| 2案あるが、言い回しはどちらか | 次のメールまで待つ | 両方すぐ出して見比べる |
| ここは表か、箇条書きか | まとめて聞くために保留する | 思いついた時点で試す |
| やっぱり全体の構成を変えたい | 言い出しにくい・費用の話になる | 気兼ねなく言える |
出典:当社(ユーチューブビジネスサポート)が外注していた期間と、生成AI利用後の実感を整理したもの。金額の話ではなく、進行の話です。
4つ目が、意外と効きます。人に頼んでいると「ここまで作ってもらったのに、構成から変えたいとは言いにくい」という気持ちが働きます。その遠慮が、結果として仕事の質を下げていたことに、あとから気づきました。
この話をしている記事が、ほとんどありません
「生成AIでできること・できないこと」で検索して、上位に並ぶ記事のタイトルを見てみました(2026年8月時点)。書かれているのは、文章生成が得意、要約が得意、計算は苦手、最新情報は弱い、といったAIの機能の話です。外注・発注・納期に触れたタイトルは、ひとつもありませんでした。
理由はたぶん、単純です。この話を書けるのは発注する側だけだからです。制作会社も代理店も、自分たちの仕事が減る話は書けません。ここに書いてあることは、当社が発注側として実際に経験したことです。
実際にやってみた3つの仕事
① 会社案内のPDF 半日かかるはずが、1時間以内
当社のプロフィールページには、A4・1枚版とA4・2枚版のPDFを置いています。1枚版は要点だけ、2枚版は経歴や事例まで入れた詳細版です。
これまでの感覚でいえば、この2種類を作るには早くても半日かかります。中身を決めて、レイアウトを整えて、2種類のバランスを取る。実際にやったのは、指示を1回出して、出てきたものを見て直しを伝える、という作業です。作り直しは4〜5回。完成まで1時間以内でした。
図4:会社案内PDF(1枚版・2枚版)ができるまで
ここで大事なのは「一発でできた」ではないことです。4〜5回作り直しています。もしこれを人に頼んでいたら、4〜5回の修正依頼は、それだけで2週間コースになっていたはずです。回数が同じでも、1ターンが数秒か半日かで、終わる日が変わります。
この1時間のあいだ、人がやったのは「何を載せるかを決めること」と「出てきたものを見て、直しを伝えること」の2つだけです。逆に言えば、載せる項目を自分で決められないと、生成AIがあっても止まります。手が速くなっただけで、決めるところは、これまでと同じように人の仕事のまま残りました。
② 自社サイト1,170本の整理 制作会社に頼めば、見積もりから始まる規模
当社は2021年から自社ブログを運用していて、公開記事は1,170本を超えました(2026年6月時点)。ただ、数が増えれば良いというものではありませんでした。そこで、609本を検索結果に出さない設定にし、さらに594本を下書きに戻しました。
図5:自社サイトでやった整理(2026年)

これだけの本数を、1本ずつ人手で判断して設定していくと、とても社内では終わりません。かといって外注するには、まず「何を基準に消すのか」を決めて伝える必要があります。その基準を決めるところから一緒に考えられたのが、いちばん大きかったところです。
③ お客様のECサイト 新しいシステムは入れていません
建材商社の伊勢通様は、2026年5月から取り組みを始められました。7月の実績は、自社ECの売上が前年同月比で約2.5倍。ただ、当社が注目しているのはそこではありません。
3.81%
これまでの平均
(サイトに来た人が買う割合)
→
新しいシステムは
入れていません
6.11%
2026年7月
(サイトに来た人が買う割合)
100人が来て3〜4人しか買っていなかったサイトで、6人以上が買うようになった、ということです。広告を増やしたわけでも、新しいシステムを入れたわけでもありません。伊勢通様がご自身で、サイトに載せる情報を整えられた結果です。
やられたことは、商品の説明を「読んで分かる形」に書き直すことでした。これまでも情報は載っていたのです。ただ、載っていることと、伝わることは違いました。その差を、ご自身の手で埋められた。ここは伊勢通様の事例ページで詳しく書いています。
出典:伊勢通様の実績(2026年7月/前年同月比)。掲載許諾をいただいています。
「自社の場合、どこから手をつけるのか」を一緒に整理します
いま出している外注のうち、どれを自分たちでやり、どれを引き続き頼むのか。ここは会社ごとに答えが違います。当社の伴走支援では、その線引きから一緒に決めていきます。
それでも人に頼んでいる仕事と、その理由
「生成AIができないこと」を、AIの機能で説明する記事はたくさんあります。計算が苦手だ、最新情報に弱い、といった話です。でも経営者が知りたいのは、たぶんそこではありません。結局、何を人に頼めばいいのか。そちらだと思います。
当社の場合、いまも人に頼んでいる仕事は、きれいに3つに分かれました。
人に頼んでいる3つの理由
- 責任と判断|弁護士・税理士・医者。その判断に責任を負う人が必要な仕事です。体調のことを生成AIに聞く人もいますが、私は信用していないので病院へ行きます。
- 勝負どころの品質|本気で受注したいときのチラシのデザイン。いまでも外注のほうが品質が高い仕事です。
- 信用と看板|商業出版。個人でも本を出せる時代に、出版社から依頼を受けて書く形を選んでいます。自分でできても、自分ではやらない仕事です。
なお、この3つは「生成AIにはできない」という意味ではありません。できるかどうかとは別に、人に頼む理由があるということです。だからこの記事では「できない仕事」ではなく「頼む理由」という言い方をしています。
図6:それでも人に頼んでいる3種類
正直に言うと、まだ外注のほうが品質が高い仕事は多いです
ここは、はっきり書いておきます。いまでも、外注したほうが品質が高いものはたくさんあります。本気で受注を取りにいくチラシのデザインは、その代表です。プロのデザイナーが作ったものと、自分が作ったものを並べれば、差は見えます。
だから、全部を自分でやろうという話ではありません。時間をかけて品質を取るべき仕事と、そこまでの品質は要らない仕事を、分けられるようになったというだけです。分けられるようになったこと自体が、大きな変化だと思っています。
「自分でできても、自分ではやらない」という選び方
3つ目の出版は、少し性質が違います。いまはご自身で本を出す方法もあります。文章を書くことだけを考えれば、手段はある。それでも私は、出版社から依頼を受けて書く形を選んでいます。
本という形にすること自体が目的ではなく、出版社が出すと決めた本である、という事実に意味があるからです。ここは、できる・できないの話ではありません。頼む理由が、能力の外側にあるという例です。
この3つを並べて見えてきたことがあります。生成AIで変わったのは「できる範囲」ではなく、「頼む理由」でした。これまでは、できないから頼んでいた。いまは、そのほうがいいから頼んでいます。理由がはっきりしているぶん、頼み方も変わりました。
この記事で使った数字の、正しい読み方
この記事を書くにあたって、生成AIの利用状況の統計をいくつか調べました。よく引用されている数字ばかりです。ところが、元の調査報告書まで当たってみると、意味が思っていたものと違っていました。
※ 横スクロールできます
| よく見る言い方 | 原典 | 実際の中身 |
|---|---|---|
| 中小企業の74%が メールや議事録に使っている | 商工中金 2026年1月調査(3,892社) | 対象は「積極活用層」だけ。全体に換算すると約23% |
| 中小企業の32.4%が 実際に活用している | 帝国データバンク 2026年3月調査(10,312社) | これは中小企業の数字として正しい。ただし「非常に」+「やや」の合計 |
| 使わない理由の1位は 使いどころが分からない | 商工中金 2026年1月調査(3,892社) | 正しい。35.6%で1位。まだ使っていない層に絞ると42.0% |
出典:商工中金「中小企業の生成AIの利用にかかる調査(2026年1月調査)」/帝国データバンク「生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」。いずれも各社の公表資料を2026年8月に確認。
図7:「74%」の正体
なぜこんな話を記事に入れたかというと、これは生成AIの使い方そのものだからです。生成AIに聞けば、統計はいくらでも出てきます。出てきた数字をそのまま使うか、原典に当たって母集団を確かめるか。ここが、使い慣れている人とそうでない人の差になります。
ちなみに、この確認自体も生成AIにやらせています。「この数字の原典と、設問の対象を確認して」と頼めば、報告書のPDFまで当たってくれます。人がやるべきなのは、確認しろと言うことのほうです。
落とし穴|できるから、全部やってしまう
正直な話も書いておきます。1日空いていると、思いついたことを片っ端から指示してしまうことがあります。出てきたものは、その日のうちに見て返さないと止まる。結果、寝られなくなる。「言いすぎなければよかった」と反省します。
ただ、その1日で進んだ量は、これまでの感覚でいうと2〜3か月分だったりします。だから、悪いことばかりでもありません。問題は量ではなく、やることの優先順位を決めていないことのほうです。
起きること
今まで人に任せていた仕事まで「これも自分でできる」と思えてしまい、手元の仕事が増える。増えた仕事は、たいてい売上に直結しない。
対処
「できるか」ではなく「やるべきか」で決める。生成AIが悪いのではなく、考えの整理ができていないだけです。
この話は、経営者にとってもう一段深いところにつながります。優秀な人手が急に手に入ったとき、それを何に使うかを決めるのは経営者の仕事だからです。そこはまた別の記事で書きます。
明日、ひとつだけやること
いきなり外注をやめる必要はありません。まず、いま出している外注を1つ思い浮かべて、次の2つを数えるところからで十分です。
| 数えること | 見かた |
|---|---|
| 最初の案が出るまで何日か | 1週間を超えているなら、自分でやる選択肢を検討する価値があります |
| やりとりが何往復あるか | 往復が多い仕事ほど、手元でやったときの差が大きく出ます |
| その仕事に、勝負どころの品質が要るか | 要るなら、これまでどおり頼むのが正解です |
| その判断に、責任を負う人が必要か | 必要なら、迷わず専門家に頼んでください |
上の2つが大きくて、下の2つが「いいえ」なら、その仕事は一度自分でやってみる価値があります。やってみて、品質が足りなければ戻せばいいだけです。試すのに費用はかかりません。
次に読む
よくある質問(FAQ)
Q生成AIがあれば、外注はもう必要ないのですか?+
Q生成AIで作ったものは、外注より品質が落ちませんか?+
Q外注と生成AIで、いちばん大きい差は何ですか?+
Qなぜ、そこまで速くなるのですか?+
Q生成AIに任せてはいけない仕事はありますか?+
Q生成AIにできる仕事には、どんなものがありますか?+
Q反対に、任せ切らないほうがいい仕事は何ですか?+
Q生成AIなら、どれを使っても同じですか?+
Qパソコンが苦手でも使えますか?+
Q何から始めればいいですか?+
Q生成AIを使うと、社内の仕事は増えませんか?+
この考え方は、2冊の本にまとめています
どちらもYouTubeと動画活用の本で、生成AIの本ではありません。ただ、外に向けて情報をどう出すかという考え方は、この記事と同じです。
まとめ
- 生成AIで変わったのは、できる範囲より「頼む理由」です。できないから頼むのではなく、そのほうがいいから頼む形になりました。
- いちばん大きい差は品質ではなく待ち時間。当社のブログ記事は案出しに1週間、修正にさらに1週間かかっていましたが、同じ流れが1時間以内に終わります。
- 差を作っているのは納期ではなく確認の往復です。細かい確認が、半日で1ターンか、その場か。ここが積み重なります。
- それでも人に頼む仕事は3つ。責任と判断(弁護士・税理士・医者)、勝負どころの品質(チラシのデザイン)、信用と看板(商業出版)。
- いまでも外注のほうが品質が高い仕事は多くあります。全部を自分でやる話ではなく、時間をかける仕事とそうでない仕事を分けられるようになった、という話です。
- 統計は原典まで確認してください。よく見る「74%」は積極活用層のなかの割合で、全体では約23%でした。
- 明日やることは1つ。いま出している外注を1つ選び、初稿までの日数と往復回数を数えることです。
どれを自分でやり、どれを頼み続けるか。一緒に線を引きます
会社によって、答えは変わります。いま出している外注の内容をうかがって、手元に戻せるもの・戻さないほうがいいものを整理するところからお手伝いします。売り込みはしません。
※ ITコーディネータ・酒井大輔が対応します。





















