ホーム > ITコーディネータ > 生成AIは動画を読むのか
生成AIは動画を読むのか
Google公式の記述と、自社169ページの実測
先に、ひとつお断りしておきます。この記事は「GeminiやChatGPTに動画を要約させる方法」を説明するものではありません。その使い方をお探しなら、別の記事のほうが早く見つかります。この記事が扱うのは、あなたのホームページに置いた動画を、GoogleやAIがどう扱っているかです。
なお「インデックスされない」は、かんたんに言うと「動画を置いたのに、検索に出てこない」という意味です。この記事では、そう書きます。
- 渡せば読む:映像も音声も読むと書いてあります。
- 見に行くときは読まない:読めないものの一覧に「YouTube動画」「動画と音声のファイル」が並んでいます。
- そこで実測:うちのホームページには動画を置いたページが313あります。そのうち206ページ(65.8%)は、動画としては検索に出ていません。
- 名札はきちんと付いていました。それでも出ません。しかも付けた名札239本ぶんのうち71本ぶんは、用意されていない画像を指していました。
Googleは「読む」とも「読まない」とも書いています
お客様が「この会社どう?」とAIに聞くとき、その人はあなたの動画をAIに手渡してはいません。AIのほうが、勝手に見に来ています。つまり、うちの動画に関係があるのは2つ目の場面のほうです。
ここから先は、私の推測ではありません。Googleが自分で公開している説明書に、そう書いてあります。技術者向けに書かれた文書ですが、この部分だけは難しくないので、そのままお見せします。
そして、ここが不思議なところです。これは新しい話ではありません。この線を引いているしくみが正式に公開されたのは2025年8月18日。試験運用版はその3か月前、2025年5月20日です。1年以上前から、そう書いてあります。
しかも放置されているわけでもありません。2枚の説明書は2026年7月30日と7月31日に更新されています(日本語版の表示。英語版の「URL context」はさらに新しく8月17日)。手を入れ続けたうえで、「動画は読まない」という線は、いまも引かれたままです。
そもそも、この2枚は何の文書か
「Gemini API」とは、GoogleのAIを、他社が自分のシステムやアプリに組み込んで使うための入口です。そこにGoogleは、「このAIは何ができて、何ができないか」を書いた説明書を並べています。今回見るのは、そのうちの2枚です。
1枚目「動画理解」
AIに動画を渡したとき、何をどう読むのかが書かれています。渡し方の一覧に「YouTube の URL」も正式に載っています。
2枚目「URL コンテキスト」
AIに「このページを読んできて」と指示するしくみの説明書です。読めるもの・読めないものが具体的に並べてあります。
なぜこの2枚を見るのか。Googleが自社のAIの動きを、公の文書で、はっきり書いている数少ない場所だからです。広報の発表とは性格が違います。開発者はこの記述を前提にシステムを作るので、曖昧に書けません。だから、ここに書いてあることは信用できます。
以下、要約ではなく原文をそのまま載せます。この2枚はクリエイティブ・コモンズ表示4.0ライセンスで公開されており(各ページの末尾に明記)、出典を示せばそのまま引用してよい文書だからです。
図1:AIと動画の関係は、3つの層に分かれる
2枚の説明書の、どこに線が引いてあるのか
① 渡したときは、映像も音声も読む
1枚目「動画理解」から、原文をそのまま引きます。まず、どうやって動画を渡せるかの一覧です。
入力方法/最大サイズ/おすすめの使用例
YouTube の URL|なし|一般公開されている YouTube 動画。
Google「動画理解」(ai.google.dev)2026年8月29日に確認。CC BY 4.0。
YouTubeのURLが、正式な渡し方として表に載っています。しかも最大サイズは「なし」。ファイルを用意しなくても、URLを1本渡せばいい、ということです。
次に、渡したあとどう読むのか。
タイムスタンプは 1 秒ごとに追加されます。
個々のフレーム(1 FPS でサンプリング)/音声: 1 秒あたり 32 トークン。
Google「動画理解」(ai.google.dev)2026年8月29日に確認。CC BY 4.0。
「1 FPS」は1秒に1コマという意味です。つまりAIは、渡された動画を1秒ごとの静止画に切り分けて見て、それとは別に音声も聞いています。ふだんGeminiやChatGPTに動画を要約させている方の実感と、ここは一致するはずです。
② 自分で見に行くときは、動画は読まないと書いてある
2枚目「URL コンテキスト」は、AIに「このページを読んできて」と指示するためのしくみの説明書です。ここがこの記事でいちばん大事な引用です。ページの最後にある一節を、丸ごとそのまま載せます。
サポートされているコンテンツ タイプとサポートされていないコンテンツ タイプ
このツールは、次のコンテンツ タイプの URL からコンテンツを抽出できます。
- テキスト(text/html、application/json、text/plain、text/xml、text/css、text/javascript、text/csv、text/rtf)
- 画像(image/png、image/jpeg、image/bmp、image/webp)
- PDF(application/pdf)
次のコンテンツ タイプはサポートされていません。
- ペイウォール コンテンツ
- YouTube 動画(YouTube URL の処理方法については、動画の理解をご覧ください)
- Google Workspace ファイル(Google ドキュメントやスプレッドシートなど)
- 動画ファイルと音声ファイル
Google「URL コンテキスト」(ai.google.dev)2026年8月29日に確認。日本語版の最終更新は2026年7月31日、英語版は8月17日。CC BY 4.0。
カタカナと英語が並んでいますが、読むべきは2つの見出しだけです。「抽出できます」の下と、「サポートされていません」の下。
できるほうに並んでいるのは、文字で書かれたページ・画像・PDF。できないほうの4番目が「動画ファイルと音声ファイル」です。
そして2番目。「YouTube 動画」。ここで終わっていません。括弧の中で「YouTube URL の処理方法については、動画の理解をご覧ください」——さっきの1枚目に案内しているのです。
同じ会社が、同じ文書の中で、線を引いて、その先を案内している。うっかり書き漏らしたのではありません。意図して分けています。
もうひとつ、同じページに書いてあることを引きます。
モデルは、指定した URL のコンテンツのみを取得し、ネストされたリンクのコンテンツは取得しません。
Google「URL コンテキスト」(ai.google.dev)2026年8月29日に確認。CC BY 4.0。
「ネストされたリンク」とは、そのページに貼ってある別ページへのリンクのことです。つまり関連ページまで勝手に読んでくれることはありません。「詳しくはこちら」でつないでいる情報は、AIには届かない可能性がある、ということです。
30秒で、ご自身でも確かめられます
私の引き写しを信じる必要はありません。「URL コンテキスト」のページを開いて、いちばん下までスクロールしてください。「制限事項」という見出しの中のいちばん最後に、「サポートされているコンテンツ タイプとサポートされていないコンテンツ タイプ」があります。ページの最終見出しです。上に引いたとおりの文が、そこにあります。
出典:Gemini API 公式ドキュメント URL context/Video understanding(ai.google.dev)。2026年8月29日に原文を確認しました。日本語版の最終更新は「動画理解」が2026年7月30日、「URL コンテキスト」が2026年7月31日(英語版の「URL context」は2026年8月17日。いずれもUTC表示)。リリース日はGemini APIのリリースノートの記載(試験運用版 2025年5月20日/一般提供 2025年8月18日)によります。
③ 検索やAIの回答の裏側は、どこにも書かれていません
ここが、いちばん誤解が起きやすいところです。①も②も、開発者が使うしくみの話です。Google検索そのものの中身ではありません。
ですから「見に行くときに動画を読まないのだから、AI検索も動画を読んでいない」と決めつけるのは言いすぎです。私はその言い方をしません。今回の調査範囲では、検索やAIの回答の裏側について書かれた公式の記述を確認できませんでした。
それから、日付の話をもう一度。この記事に更新日を書いているのは、親切のためではありません。作法です。
この決まりは変わります。読めないものの一覧も、YouTubeの扱いも、更新されていくものです。半年後にこの記事を読んでいる方は、必ず原文を見直してください。上に確かめ方を書いたのは、そのためでもあります。
そして、私がこの記事の主役を「説明書の解説」ではなく「自分のサイトで測った結果」に置いているのも、同じ理由です。説明書は変わりますが、自分のサイトで何が起きたかという記録は、変わりません。
では、経営者にとって何を意味するか
ここまでが、Googleが自分で認めている事実です。では、その先はどうなのか。検索やAIの回答が、あなたの動画をどう扱っているのか。それはどこにも書かれていません。日本語でこの問いに答えている記事も、今回の調査範囲では確認できませんでした。
ここで、日本の会社全体の状況を1つだけ。総務省の『令和8年版 情報通信白書』によると、「生成AIに社内データを学習させたり、生成AIが参照可能なデータベースを構築したりしている」と答えた日本企業は24.5%。米国は57.2%です(日本 n=326/米国 n=276)。つまり自社の情報をAIが読める形に置いている会社は、日本ではまだ4社に1社ということになります。動画は、その中でもいちばん「置いてあるのに読める形になっていない」情報だと私は考えています。
出典:総務省『令和8年版 情報通信白書』(概要)p.9「生成AIによる業務変革に関する環境整備の状況(国別)」。白書のページ/概要PDF(直リンク)。※この設問に答えた企業数は日本326社・米国276社で、白書の他の設問(日本515社・米国309社)とは異なります。
そこで、自分のサイトでやってみることにしました。動画のあるページに、その動画が何の動画かを説明する「名札」を全部付ける。そのうえで、Googleがそれをどう扱ったかを前と後で比べる。これなら、どこにも書いていないことでも自分の目で確かめられます。
この「名札」は、正式には構造化データ(VideoObject)と呼ばれるものです。以下、この記事では「名札」と書きます。
※ AI時代に動画そのものにどんな意味があるのか、経営判断としての整理はAI時代に動画は意味があるか|AIが読むのは映像ではなく文字にまとめています。この記事はその続きで、実際に手を動かしたらどうなったかを担当します。
だから、自社の169ページで確かめました
うちのサイトは、こうなっています
まず前提です。この記事の数字は、すべて自社サイト(ytbs.jp)を実際に数えたものです。公開しているページを1件残らず取得しました。
※ 横スクロールできます
| 項目 | 実測値 | 数え方 |
|---|---|---|
| 公開しているページ | 674 | 記事650+固定ページ24 |
| 動画に名札を付けたページ | 169 | 名札の数では239本ぶん |
| 動画の見本画像を置いているページ | 158 | 枚数では223枚 |
| 使っている動画の本数 | 190 | 同じ動画は1本と数えています |
数え方:ytbs.jpの公開全674ページを2026年8月29日に自分で全部取得して集計。ページ数はWordPressが返す公開件数(記事650・固定24)と一致することを確認しています。
「動画がインデックスされない」——名札を付けても、65.8%は出ませんでした
Googleは、サイトの持ち主向けにSearch Console(サーチコンソール)という無料の管理画面を用意しています。そこに「動画のインデックス登録」という項目があり、Googleが動画のあるページだと認識したページのうち、実際に検索に出ているのは何ページかが分かります。うちの結果はこうでした。
ページ
ページ
169ページに名札を付けたうえで、この数字です。付ければ拾われる、とは書けませんでした。
自分が付けた数と、Googleが見ている数は別物です
ここは、はじめに整理しておかないと混乱します。65.8%の分母は、私が名札を付けた169ページではありません。107+206=313ページ。これはGoogleが「動画のあるページ」だと認識した数です。
つまり313は、私が名札を付けた169よりも、見本画像を置いた158よりも多い。Googleは、こちらが名札を付けていないページでも動画を見つけています。しかも、この数は日々増えます。
※ 横スクロールできます
| 時点 | 検索に出ている | 出ていない | 合計 |
|---|---|---|---|
| 2026年8月13日(一括で付けた当日) | 86 | 202 | 288 |
| 2026年8月14日(翌日) | 104 | 204 | 308 |
| 最新(レポート更新 8月27日) | 107 | 206 | 313 |
「◯%ができていない」という数字を見たら、まず「何のうちの◯%か」を確かめてください。自分が手を入れた数と、Googleが見ている数は、別々に動きます。ここを混ぜると、自分がやったことの効果を読み違えます。
名札はきちんと付いていました。それでも出ません
206ページが出ていないと分かったとき、私が最初に疑ったのは「名札に書き漏らしがあるのだろう」でした。そこで239本ぶんの名札を、1本ずつ開いて中身を数えました。結果は、予想と逆でした。
※ 横スクロールできます
| 名札に書く項目 | 書いてあった | 割合 |
|---|---|---|
| 動画のタイトル | 238 / 239 | 99.6% |
| 見本の画像の置き場所 | 239 / 239 | 100% |
| 公開した日 | 237 / 239 | 99.2% |
| 動画の説明文 | 238 / 239 | 99.6% |
| 再生時間 | 215 / 239 | 90.0% |
この表の正式な項目名(担当の方へ)
この名札はVideoObjectという構造化データです。上から name/thumbnailUrl/uploadDate/description/duration。上の3つがGoogleの必須項目、下の2つが推奨項目です。ほかに contentUrl(動画そのものの場所)が237/239、embedUrl(埋め込み用の場所)が239/239 で入っていました。説明文の平均は109文字です。
必須の3つは、ほぼ100%書いてありました。まとまって抜けていたのは再生時間だけで、24本ぶん(10.0%)が空でした。それでも、206ページは出ていません。書き漏らしは、主な原因ではありませんでした。
Googleの点検ツールは「動画は有効です」と答えます
Googleは、名札の書き方が正しいかを確かめる無料の点検ツール(リッチリザルトテスト)を用意しています。当社の動画を置いたページで実際に試すと、こう出ます。
それでも、当社の206ページは検索に出ていません。
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。「点検を通ったから大丈夫」とは言えません。ツールが見るのは書き方です。書いてある中身が正しいか、指している先に本当に画像があるかまでは、見てくれません。
そのうち71本ぶんは、用意されていない画像を指していました
見本の画像の置き場所は、239本ぶんすべてに書いてありました。では、そこを実際に開いたらどうなるのか。1本ずつ画像を読み込んで、返ってきた画像の大きさを測りました。
書いてあった名札
灰色の四角だった
ページ数
原因は、指定していた画像の大きさにありました。239本ぶんのうち218本ぶんが、いちばん大きいサイズを指していました。ところがこの大きいサイズは、すべての動画に用意されているわけではありません。無いときはエラーにならず、小さな灰色の四角が「正常」として返ってきます(このしくみは後半でくわしく書きます)。
※ 横スクロールできます
| 指定していた大きさ | 名札の数 | 実際に返ってきたもの |
|---|---|---|
| いちばん大きいサイズ | 218 | あれば1280×720。無ければ120×90の灰色 |
| 中くらいのサイズ | 17 | 480×360。すべての動画にある |
| 小さいサイズ | 3 | 320×180。すべての動画にある |
| 自分で用意した画像 | 1 | アップロード済みの画像 |
名札は付いている。書き方も正しい。点検も通る。それでも、指した先に画像がない。名札が付いているかは数えれば分かりますが、その指し先に本当に画像があるかは、数を数える点検では分かりません。
同じタイトルが、別々の動画に付いていました
もうひとつ。動画のタイトルは239本ぶんのうち238本に書いてありましたが、中身がすべて違ったわけではありません。違う名前だったのは212本ぶんでした。そして4つのタイトルが、別々の動画に使い回されていました。
Googleの説明書が「動画ごとに、その動画だけの文にすること」と2回書いているのは、まさにここです。まとめて自動で作ると、項目は埋まったまま、この1点だけを外します。
図2:動画がGoogleに登録されるまでには、4つの関門がある
206ページが出ない理由は、全部おなじ1行でした
出ていない206ページについて、Googleが返してきた理由はばらばらではありませんでした。全部おなじ1行です。
「動画再生ページに動画がありません」。
最初に見たときは、意味が分かりませんでした。動画はある。サムネイルも出ている。クリックすれば再生される。それでも「ありません」と言われる。理由は、うちが使っている表示方式にありました。
図3:クリックしてから読み込む方式(ファサード)だと、Googleには動画が見えない
Googleが動画を見つけられる置き方は、4通りだけです
Googleの説明書には、動画だと認識できるページの書き方が4通りだけ挙げられています。それ以外の置き方をしていると、そこに動画があるとは判断されません。
加えて条件が2つあります。見本画像の置き場所が変わらないこと。そしてお客様が何も操作しなくても、動画が読み込まれること。うちが引っかかったのは、この2つ目でした。
出典:Google検索セントラル 動画の SEO ベスト プラクティス(2026年8月29日確認)。
4通りの正式な書き方(担当の方へ)
Googleが動画として認識するのは video/embed/iframe/object の4つのタグです。加えて、サムネイル画像のURLが安定していること、そしてユーザー操作なしで動画が読み込まれることが条件として挙げられています。
名札に必ず書く項目は3つだけ。ただし「動画ごとに違う文で」
名札に必ず書かなければいけない項目は3つだけです。動画のタイトル、見本画像の置き場所、公開した日。これに、説明文・再生時間などを足すと、Googleが薦める形をひととおり満たします。
見落とされがちなのは、説明書が「動画ごとに、その動画だけの文にすること」と、わざわざ2回書いている点です。まとめて自動で作ると、ここが真っ先に崩れます。実際、うちも崩れていました。その話は後半に書きます。
出典:Google検索セントラル 動画(VideoObject、Clip、BroadcastEvent)スキーマ マークアップ(2026年8月29日確認)。
一括で付けた翌日、86ページが104ページになりました
2026年8月13日に、動画のあるページへ名札を一括で付けました。翌日の画面がこれです。検索に出ているページが86 → 104。1日で18ページ増えました。一方、出ていないページは202 → 204でほぼ横ばい。つまり新しく見つけてもらった分が、そのまま検索に出たという読み方ができます(これは私の解釈で、Googleが説明しているわけではありません)。
検索での見え方も比べました。実装前の8月3日〜12日と、実装後の8月14日〜23日。同じ10日間どうしの比較です。
※ 横スクロールできます
| 指標 | 実装前(8/3〜8/12) | 実装後(8/14〜8/23) | 変化 |
|---|---|---|---|
| クリック数 | 29 | 33 | +13.8% |
| 表示回数 | 1,910 | 3,580 | +87.4% |
| 平均掲載順位 | 23.8 | 19.0 | 4.8ポイント上昇 |
| クリック率(CTR) | 1.5% | 0.9% | 下がった |
この数字は、お金に直すといくらか
「107」という数字は、そのままでは経営の数字ではありません。言い換えるとこうなります。うちのサイトには、動画を置いたページが313ある。そのうち、検索結果に動画として出られるのは107ページ。残りの206ページは、動画を置いてあるのに、Googleから見ると動画が無いことになっている。
撮影にかけた費用を、この206で割ってみてください。その分は、いまのところ動画としては誰にも見つけられていません。直せば取り戻せる可能性がある、という意味でもあります。私が「まず数を見てください」と言うのは、この割り算が15分でできるからです。
表示回数が87%増えて、順位も4.8ポイント上がりました。クリックは29から33へ。ここだけ見れば、うまくいった話です。
ただし、公平に書いておきます。クリック率は1.5%から0.9%に下がっています。表示が増えたぶん、クリックに結びつかない表示も増えた、ということです。そして何より、この時点でも206ページは未登録のままです。効いたのは、あくまでその外側の話でしかありません。
「名札を付けたから順位が上がった」と書けるかというと、それも言い切れません。同じ時期にサイト全体でほかの作業もしていますし、10日間は短すぎます。いま言えるのは「付けた前後で、動画としての表示が倍近くになった」までです。これは仮説として置いておき、28日たったところで答え合わせをします。外れていたら、外れたと書きます。
ここから後半です。残りは4つ
- うちで起きた3つの失敗:どれも、よくある点検では見つかりません。
- 数え方の落とし穴:測り方を間違えると「異常0件」に見えます。
- 経営者が決めるのは3つだけ:お急ぎなら、ここだけ読んでいただければ十分です。
- 今日やること3つ:全部0円でできます。
うちで起きた3つの失敗
失敗① 見本画像が用意されていない動画が53本ありました
YouTubeの見本画像にはいくつかの大きさがあり、いちばん大きいものはすべての動画に用意されているわけではありません。
やっかいなのは、無いときの返り方です。「見つかりません」ではなく「正常です」と返ってきて、中身は120×90ピクセルの灰色の四角です。つまり、リンク切れを探す点検ツールではぜんぶ正常と表示されます。
うちの動画190本を1本ずつ確かめたところ、53本(27.9%)がこの灰色でした。名札の側で数えると239本ぶんのうち71本ぶん(29.7%)が、この灰色を指していたことになります(表4)。下が実物です。


やったこと:大きい画像がある動画だけ大きい画像を使い、無い動画は1つ下の大きさに切り替える。判定は「返ってきた画像の幅が120ピクセルかどうか」で自動的にできます。
失敗② 1つの説明文が、34本の別々の動画に付いていました
画像には、それが何の画像かを文字で説明する「説明文」を付けます(正式には代替テキスト、altと呼びます)。動画の見本画像も画像なので、ここがAIとGoogleに動画の中身を伝える数少ない場所になります。説明書が「動画ごとに、その動画だけの文にすること」と2回書いているのは、そういう理由です。
うちのサイトを調べたら、1つの説明文が、34本の別々の動画に付いていました。枚数にして57枚、15ページ。しかも中身は「YouTubeアイコンの作り方」を説明する文で、それが製造業のページにも、運送会社の採用ページにも、経営のページにも同じように付いていました。
223枚すべての説明文を数えると、こうなっていました。
※ 横スクロールできます
| 項目 | 実測 | 読み方 |
|---|---|---|
| 説明文が空っぽ | 0枚 | 「空っぽを探す」点検では1件も出ない |
| 説明文の平均の長さ | 32文字 | いちばん短い9文字〜長い53文字 |
| 同じ文が別々の動画に付いていた | 57枚 | 15ページ・34本の動画にまたがる |
| 再生ボタンの読み上げ文に再生時間が入っている | 7枚 / 223枚 | 残り216枚は時間が分からない |
ここが厄介なところです。説明文が空っぽの画像は0枚でした。つまり「説明文が入っていない画像を探す」という、いちばんよくある点検では1件も引っかかりません。「同じ文が使われているページの数」を数えても見つかりません。見つけるには「同じ文が、別々の動画に付いていないか」という探し方をする必要がありました。
対処:2026年8月27日に検知し、動画ごとに固有の説明文へ書き直しています。57枚を一度に置き換えると、失敗したときに57枚まとめて壊れます。ですから1件で表示を確かめ、5件で確かめ、それから残りという順で進めています。一括で直すときほど、最初の1件を人の目で見てください。
失敗③ 速くするための工夫が、動画を検索から遠ざけていました
これは前半に書いた「動画再生ページに動画がありません」の話です。クリックされるまで動画を読み込まないという方式にしていました。ページの表示は速くなります。実際、速さの指標はよくなりました。
ただしGoogleは、「お客様が操作しなくても動画が読み込まれるようにしてください」と書いています。速さのための工夫が、そのまま検索に出ない理由になっていたわけです。
これは失敗というより、トレードオフです。だから「どちらかに寄せる」ではなく、どのページで速度を優先し、どのページで動画の登録を優先するかを決める問題として扱っています。全ページで同じにする必要はありません。
【担当の方へ】数え方を2つ間違えると「異常0件」に見えます
担当の方へ|私が実際に引っかかった2つの落とし穴(コードつき)
落とし穴① 画像の大きさを測ると、いつも0になる
表示を速くするために、多くのサイトは画像の遅延読み込みを入れています。このとき、画像の本当のURLはsrcからdata-srcへ退避され、srcには1×1ピクセルの透明画像が入ります。
この状態で画像の実寸を測ると、結果はいつも0です。「サムネイルの異常は0件」と読んでしまいます。測るべきは退避されたほうです。
[...document.querySelectorAll('.ytbs-video-facade img')].map(i => i.dataset.src || i.src)ブラウザの検証ツールで実行すると、そのページの動画サムネイルの本当のURLが一覧で出ます。クラス名はご自身のサイトのものに置き換えてください。
落とし穴② ページの一覧を取ると、件数が水増しされることがある
WordPressから全ページの一覧を取るとき、100件ずつに区切って何回かに分けて取得します。このとき、同じページが2回返ってくることがあります。
私はこれで674ページを678ページと数え、サムネイルの枚数も223枚を227枚と多く数えました。気づいたきっかけは、WordPressが返す総件数(投稿650・固定24)と自分の集計が合わなかったことです。
const r = await fetch('/wp-json/wp/v2/posts?per_page=1'); r.headers.get('X-WP-Total');これで本当の総件数が取れます。集めたページはIDで重複を除いてから数え、必ずこの数字と突き合わせてください。
共通しているのは、どちらも「エラーが出ない」ことです。だから静かに間違えます。私は「異常0件」という結果が出たときほど、測り方のほうを疑うようにしています。
経営者が決めるのは、3つだけです
① 外に出すか、自分たちでやるか
正直に言うと、この仕事は見積もりが取りにくい種類のものです。「動画に名札を付けてください」と頼んだとき、付けて終わりなのか、付けたあと結果を確かめて直すところまでなのかで、まったく別の作業量になります。
そして今回の実測が示しているのは、付けて終わりでは65.8%が出ないままだったということです。頼むなら「付ける」ではなく「付けて、Search Consoleで確かめて、理由ごとに直すところまで」と言葉にしてください。ここを言葉にできるかどうかが、社長側の仕事です。
② どこまでやれば十分か
※ 横スクロールできます
| 段階 | やること | だいたいの費用 | 手を動かす時間 |
|---|---|---|---|
| 1. 測る | Search Consoleで「動画のインデックス登録」を開き、出ている数・出ていない数・その理由を見る | 0円 | 15分 |
| 2. 整える | 動画ごとに違う説明文を付ける。見本画像が本当にあるか確かめる。動画の読み込み方をページごとに決める | 月3,000円前後(生成AIの一般的な個人向けプラン) | 動画1本あたり数分 |
| 3. 続ける | 新しい動画を出すたびに同じ手順を回し、月に一度Search Consoleで確かめる | 数万円(本数と頻度による) | 月1〜2時間 |
いきなり3段目を目指す必要はありません。まず1段目で自社の数字を見て、動画に力を入れている会社だけが2段目へ進む。それで十分だと考えています。
では、どの会社が2段目まで進むべきか。私は本数ではなく「動画が何の代わりをしているか」で見ています。お客様が発注前に確かめたいことを動画が肩代わりしている会社ほど、直したときの効き方が大きくなります。工場の中や現場の様子を見せている、社員がどんな人か分かるようにしている、施工や加工の手順を見せている——こういう動画は、その内容が文字になっていないと、AIにも検索にも存在しないのと同じになります。逆に、季節のあいさつやイベントの記録が中心なら、1段目で止めて構いません。
参考までに、当社がどこに動画を置いているかの内訳も出しておきます。自社に当てはめるときの目安になるはずです。
※ 横スクロールできます
| 置いている場所 | 枚数 | お客様が確かめたいこと |
|---|---|---|
| 書籍と連動した解説記事 | 65 | この人の言っていることは本当か |
| 業種別のページ | 40 | うちの業種でも通用するのか |
| 採用のページ | 19 | どんな人が働いているのか |
| ITコーディネータ・生成AI | 17 | 実際に使えているのか |
| YouTube運用の解説 | 15 | やり方が具体的に分かるか |
| お客様の事例 | 13 | 本当に成果が出たのか |
| サービス案内 | 13 | 頼んだら何をしてくれるのか |
| ショート動画・その他 | 41 | — |
右の列を見てください。どれもお客様が発注前に確かめたいことです。これが動画でしか説明されていないと、AIにも検索にも届きません。2段目まで進むべきかどうかは、この列に自社の動画が当てはまるかで判断できます。
③ いくらかけるか
費用の考え方は上の表のとおりですが、いちばん大きいのはお金ではなく「誰がやるか」です。1段目は社長ご自身が15分で終わります。2段目からは、社内で動画を触っている方に渡してください。この記事の後半(失敗3つと数え方)は、その方にそのまま読んでいただける内容にしてあります。
自社の数字だけ、先に見てみませんか
Search Consoleの「動画のインデックス登録」を開くだけなら、費用はかかりません。開き方が分からない、開いたが読み方が分からない、という段階からのご相談も承っています。
生成AI活用サポートを見る今日やること3つ(全部0円)
1. 数を見る
Search Consoleを開き、左のメニューから「動画のインデックス登録」を選びます。検索に出ている数と、出ていない数をメモしてください。この2つを足した数が、Googleがあなたのサイトで動画を見つけたページ数です。
2. 理由を見る
出ていない数のところをクリックすると理由が出ます。うちは1種類だけでした。何種類あるか、いちばん多い理由は何かを見てください。理由によって、やることが変わります。
3. 1本だけ確かめる
自社のページを1つ開き、動画の見本画像に付いている説明文を担当の方に見せてもらってください。他のページと同じ文が使われていないか。1本見れば、だいたいの傾向は分かります。
この3つで、外注に出すべきかどうかの判断材料はそろいます。直すのは、そのあとです。
この記事に置いた2本にも、同じ手当てをしました
2本とも、私が話しているものです。動画と生成AI、どちらも実務でやっている立場から書いているということが、いちばん伝わると思います。
1本目:AIに動画をつくらせる(NotebookLM)
「7-8 NotebookLMでの効果的な、動画作成方法を解説!」14分46秒/2026年5月31日公開。手順の記事はこちら
AIに動画をつくらせる側の話です。この記事は「つくった動画をAIにどう伝えるか」なので、ちょうど裏表になります。
2本目:ITコーディネータ協会での講座
「動画ウェブマーケティング導入実践講座、ITコーディネータ協会」8分15秒/2023年10月9日公開
ITコーディネータ協会の研修担当の方に、この講座がなぜ生まれたのかを聞いた対談です。私が講師を務めています。
この2本に、何をしたか
※ 横スクロールできます
| やったこと | この記事の2本 | 本文のどこで書いたか |
|---|---|---|
| 見本画像が本当にあるか確認 | 2本とも大きい画像の実在を確認済み(1280×720) | 失敗① |
| 説明文を1本ずつ別に書く | 2本とも別の文。使い回しなし | 失敗② |
| 読み込み時に動画が置かれているか | あえて直していません(下に理由) | 失敗③ |
| 再生ボタンの読み上げ文に再生時間 | 2本とも入れた(14分46秒/8分15秒) | 表6 |
| 名札に必ず書く3項目 | 2本とも記入(タイトル・見本画像・公開日) | 表3 |
3つ目だけ、あえて直していません。この記事はページの表示速度を優先していて、クリックするまで動画を読み込まない方式のままです。本文に書いたとおり、これは失敗ではなくトレードオフだからです。
つまりこの2本も、Googleからは「動画が無いページ」に見えている可能性があります。それでも私はこの選び方をしました。全ページで同じにする必要はない——第10章に書いたのは、こういう意味です。
「うちの動画、AIに届いていますか」に、数字で答えます
Search Consoleの見方から、動画の説明文の整え方まで。中小企業の現場に合わせて、ITコーディネータがご相談を承ります。押し売りはいたしません。
※ ITコーディネータ・酒井大輔が対応します。
よくある質問(FAQ)
QAIは、うちの会社の動画を見てくれているのですか+
Q何から始めればいいですか+
Qこれは自社でできますか。それとも外注ですか+
Qいくらかかりますか+
Qどのくらいで結果が出ますか+
Q動画の本数は、多いほうがいいですか+
QSearch Consoleで動画が「未登録」と出ます。原因は何ですか+
Q構造化データを入れれば、必ず登録されますか+
まとめ
- 渡せば読む。Googleは自分の説明書に、動画を渡せば映像も音声も読むと書いています。
- 見に行くときは読まない。読めないものの一覧に「YouTube動画」「動画と音声のファイル」が並んでいます。
- 検索の裏側は書かれていません。そこを決めつけず、自社の169ページで測りました。
- 名札を付けても、313ページのうち206ページは出ませんでした。必ず書く3項目はほぼ100%。書き漏らしが原因ではありません。
- 「付いている」と「効いている」は別。239本ぶんのうち71本ぶんは、用意されていない画像を指していました。点検ツールはエラー0件と出ます。
- 出ない理由は1種類だけ。「動画再生ページに動画がありません」。速さのための工夫が、検索から遠ざけていました。
- 社長が決めるのは3つ。外に出すか自分たちでやるか、どこまでやるか、いくらかけるか。まず15分・0円で自社の数字を見てください。





















