旅館・ホテルのYouTube活用術|採用も集客も変えた実例で解説
「YouTubeを見て入社」「年間15社超のメディア取材」「口コミ改善」——秋保温泉の旅館の実例から、宿泊業がYouTubeで成果を出す方法を解説します。
【結論】旅館・ホテルでYouTubeが効く3つの理由
- 宿泊業がYouTubeで集客・採用・口コミを変えた実例(秋保温泉「蘭亭」)
- 写真や文章では伝わらない「ありのまま」を動画で届ける考え方
- 旅館・ホテルが撮るべき動画ネタ10選と、始め方・費用の目安
本記事では、宮城県・秋保温泉の旅館「蘭亭」が動画活用で採用・集客・口コミをどう変えたのかという実例を軸に、宿泊業がYouTubeで成果を出す具体的な進め方を解説します。
- 2021年〜
- 蘭亭のYouTube運用開始
- 15社+
- 年間メディア取材数
- ☆4.1→4.2
- 口コミ評価の改善
旅館・ホテルが今かかえる3つの課題
多くの宿泊施設が、次のような構造的な悩みを抱えています。動画活用の話に入る前に、まず現状を整理しておきましょう。
1. OTA(予約サイト)への依存と手数料負担
集客を予約サイトに頼るほど、1予約ごとに手数料が差し引かれ、利益が薄くなります。さらに予約サイトの中では、宿は価格・立地・写真の見栄えで横並びに比較されます。値下げ競争に巻き込まれやすく、「他ではなく、この宿だから選ぶ」という理由を自前で持ちにくいのが実情です。集客チャネルを予約サイト一本に依存している限り、利益率も主導権もサイト側に握られたままになってしまいます。
2. 深刻な人手不足とミスマッチ離職
宿泊業は慢性的な人手不足に直面しています。求人媒体に費用をかけて応募を集めても、入社後に「思っていた職場と違った」というミスマッチが起きると、早期離職につながり、採用コストはそのまま無駄になります。職場の本当の雰囲気や人柄は、求人票の条件面だけでは伝わりません。応募者が入社前に「ここで働く自分」をイメージできる材料を、ほとんどの宿が用意できていないのです。
3. 写真や文章では「雰囲気」が伝わらない
宿の本当の価値は、スタッフの人柄や館内の空気感、おもてなしの温度にあります。ところが、予約サイトも求人サイトもホームページも、多くは写真と文章だけ。しかも、プロが撮った美しいPV動画ですら、見る人に「本当にこんなに良いの?」という疑いを持たせてしまうことがあります。良く見せようとするほど、かえって信じてもらえない——これが、宿が情報発信で抱えるジレンマです。
宿泊業とYouTubeの相性が良い理由
上の課題は、いずれも「動画で、ありのままを伝える」ことで解きほぐせます。宿泊業とYouTubeの相性が良い理由を3つに整理します。
館内・料理・おもてなしは「動画の独壇場」
客室のルームツアー、料理が運ばれてくる様子、スタッフ同士の自然なやり取り。こうした「行ってみないと分からない情報」こそ、動画が最も得意とする領域です。文章や1枚の写真では、瞬間の断片しか切り取れません。動画なら、空間の広がりや音、間、スタッフの表情まで含めて、まるごと届けられます。
検討期間中に「ファン化」できる
旅行先は、予約ボタンを押すまでに何日も比較検討されます。この検討期間こそ動画の出番です。その間に宿の動画を繰り返し見てもらえれば、予約前から「ここに泊まりたい」というファンを育てられます。来館前にファンになってもらうことは、集客において非常に大きな力になります。アーティストのコンサートに会場へ来る人だけでなく、テレビや楽曲で応援するファンがいるのと同じ構造です。
「ありのまま」が、そのまま信頼になる
蘭亭の広報・聖子さんは、入社前に同社のYouTubeを見て「変な編集が入っていない=行ったら実際にあのままなんだろうな」と感じ、入社を決めたと語っています。良く見せようと盛らないこと自体が、疑い深い人にこそ「誠実さ」として伝わるのです。技術的に凝っていないからこそ「実物しか撮れない」という安心感が生まれる——これは宿泊業ならではの強みになります。
「OTA頼みの集客」と「自社YouTube」の違い
予約サイト(OTA)への依存から抜け出す手段としても、自社YouTubeは有効です。両者を整理すると、宿が“資産”と“主導権”を取り戻せることが分かります。
| 観点 | OTA・予約サイト頼み | 自社YouTube(動画経営) |
|---|---|---|
| コスト構造 | 予約ごとに手数料が発生し続ける | 動画は一度作れば資産。追加コストは小さい |
| 比較のされ方 | 価格・写真で横並び比較され値下げ競争に | 雰囲気・人柄で“この宿だから”を伝えられる |
| 顧客との関係 | その場限りになりやすい | 来館前にファン化・指名予約やリピートに |
| 主導権・資産 | サイト側に依存 | 自社にコンテンツとノウハウが蓄積 |
「広告 vs 自社運用」や「SNS(ショート)vs YouTube」の詳しい比較は、YouTube広告と自社チャンネル運用の違いとSNSとYouTubeの違いでも解説しています。
データで見る:経営者の「動画活用」
宿の事例に入る前に、動画活用の大きな流れを示すデータを紹介します。中小企業の経営者189人を対象にした調査では、動画が情報収集・発信の主役になりつつあることが分かります。
- 86.3%
- 情報収集で「動画」を重要視
- 87.2%
- 使う動画は「YouTube」が最多
- 97.8%
- 今後も動画活用に取り組みたい
さらに、経営者が情報収集で実際に見る動画は「商品・サービス説明動画」59.6%・「商品紹介」52.5%が上位。広告的な演出よりも、中身がわかる実用的な動画が求められています。自社の営業・マーケティングにも動画が重要と答えた経営者は85.2%に上りました。宿に置き換えれば、客室・料理・スタッフを“そのまま説明する”動画こそが、見込み客に最も届くということです。
出典:株式会社Suneight「中小企業の動画マーケティングに関する実態調査」(PR TIMESプレスリリース)(2022年10月/従業員300名以下の経営者189人・インターネット調査)。調査結果の詳しい解説はこちら。
【実例】秋保温泉「蘭亭」に学ぶ — 採用・集客・口コミの変化
| 観点 | 秋保温泉「蘭亭」のケース |
|---|---|
| 課題 | OTA(予約サイト)への依存と手数料負担/慢性的な人手不足とミスマッチ離職/写真や文章では宿の雰囲気・人柄が伝わらない。 |
| 施策 | 2021年2月にYouTube運用を開始。客室・料理・スタッフの“ありのまま”をスマホで継続配信し、酒井の研修(1年半で5回)で社内に運用を内製化。リアルタイム情報も日々発信。 |
| 結果 | YouTubeを見ての入社(採用)/年間15社以上のメディア取材(集客)/口コミ評価☆4.1→4.2(満足度)/直接予約の増加・部署を越えた一体感(組織)。 |

広報担当が「YouTubeを見て入社」
転職活動中に偶然見つけた客室紹介や大浴場の動画から、スタッフの人柄や「気軽に質問できそうな空気」を感じ取り入社。他社のプロ撮影PVは逆に信用できなかったと語ります。
▶ 入社の経緯インタビューを読む
年間15社超の取材と口コミ改善
「高級ではない」「露天風呂が広いわけでもない」ことまで包み隠さず配信。過度な期待を持たず宿に合うお客様が集まり、満足度=口コミの改善につながりました。リアルタイム情報でコミュニケーションツール化しています。
▶ 運用で大切にしている事を読む
研修で社内に運用が定着
技術より「心の持ちよう」を整える研修で、スタッフがネタを出し合う習慣が定着。動画づくりが社内コミュニケーションそのものを良くしています。
▶ 研修2日間の感想を読む
支配人が語る|メディア露出と組織の変化
管理部の伊藤支配人は「コロナ禍で“今、自分たちに何ができるか”を考えて」運用を開始。上司が率先する姿にスタッフが続き、メディア取材が相次ぎました。
▶ 支配人インタビューを読む支配人・伊藤さんの視点 — 経営目線で見たYouTube
蘭亭の運用は、管理部の伊藤支配人が主導して始まりました。きっかけは、コロナ禍でお客様が宿泊を控え、スタッフの仕事が減ってしまった時期に「今、自分たちに何ができるか」を考えたことだったといいます。広報・聖子さんの“現場の熱量”と、支配人の“経営判断”がそろっていたことが、継続の土台になりました。
支配人が語る成果は、組織の面でも表れています。「上司が率先してやる姿を見て、皆がついてきてくれた」と語るとおり、トップが動くことで巻き込みが進み、部署の垣根を越えてスタッフが意見を出し合い、上司に本音を言える風通しのよい職場へと変わっていきました。採用でも、面接で「YouTubeを見て、スタッフが生き生きと楽しそうだったから応募した」という予想外の志望理由が生まれ(この応募者が現在の広報・聖子さんです)、動画で社内の雰囲気を知ってから応募するためミスマッチが減り離職率も低いといいます。
集客面では、運用開始から認知度が一気に上がり、メディアの取材依頼が複数社から相次ぎました。支配人自身も当初は「うちに取材なんて来ない」と半信半疑だったものの、1年で何社もの取材が実現。「お金はあまりかからないのだから、やればいい」という姿勢が、宿全体の挑戦文化につながっています(採用編/運用1年後編)。
採用面でYouTubeが効くのは宿泊業に限りません。運送業では、仕事の実態を動画で見せることで応募前のミスマッチが減り、年間20人の採用につながった事例もあります(1年で20人採用した社長との対談)。動画活用の全体像は動画経営とは(基礎ガイド)、他業種の成果は成功事例まとめもあわせてご覧ください。
研修と「内製化」で運用を根づかせる
蘭亭の成果は、一度きりの動画制作ではなく、社内に運用が根づいたことで生まれています。酒井は1年半にわたり同館を訪れ、研修を重ねてきました(取材時点で5回目)。ここに、宿泊業がYouTubeを続けるためのヒントがあります。
「技術」より先に、「心の持ちよう」を整える
聖子さんは当初、研修では撮影や編集の技術を教わると思っていたそうです。ところが実際に大切だったのは「思っている事を遠慮せず、ありのまま発信していい」と思えるかどうかでした。動画は空気感も含めて伝わってしまうもの。だからこそ、小手先の技術より「誰に・何のために発信するのか」という土台を整えることが先決だと、酒井は伝えています。
1人で抱えず、チームでネタを考える
研修を通じて、ネタを1人で考えるのではなく「これどう思う?」とスタッフ同士で聞き合う習慣が生まれ、職場の横のつながりが強化されたといいます。動画づくりが、結果として社内のコミュニケーションそのものを良くしているのです。
「この宿に合う人」を宿側から発信する
もう一つの要点が、ターゲットの明確化です。蘭亭は「建物の豪華さではなく、スタッフのフレンドリーさやホスピタリティを求める人に最高の宿」だと宿側から発信しています。万人受けを狙わず「合う人」に絞って届けるからこそ、ミスマッチのない集客と高い満足度が実現します。こうした「自社で運用を回せる状態」を半年でつくるのが、内製化コンサルの狙いです。
旅館・ホテルが撮るべき動画ネタ10選
「何を撮ればいいか分からない」という声は多いものですが、宿には素材があふれています。集客・採用・リピートにつながる10のネタを挙げます。
| 動画ネタ | 内容・ポイント | 主な効果 |
|---|---|---|
| 1. 客室ルームツアー | タイプ別に広さ・眺め・アメニティを正直に紹介。予約前の不安を解消し、指名予約の決め手に。 | 集客リピート |
| 2. 料理・食事の裏側 | 仕入れ・調理・盛り付け・配膳まで。シズル感と作り手の想いがそのまま予約動機に。 | 集客 |
| 3. 大浴場・温泉の紹介 | 泉質や時間帯ごとの雰囲気を盛らずにそのまま。清掃日など実用情報も添えると親切。 | 集客 |
| 4. 女将・スタッフの1日密着 | 人柄が伝わり、集客にも採用にも効く万能ネタ。 | 集客採用 |
| 5. 周辺観光・アクセス案内 | 「現地の人が教える」情報は検索でも強く、滞在価値を高める。 | 集客 |
| 6. 季節・天気のリアルタイム情報 | 服装の助言や積雪状況など、来館前の不安を先回りで解消。 | 集客リピート |
| 7. 休館日・清掃日などの定期案内 | 「知らなかった」を防ぎ、宿の親切さが伝わる。 | リピート |
| 8. よくある質問への回答 | チェックイン時間・子連れ・ペット・アレルギー対応など。 | 集客 |
| 9. スタッフ紹介・採用メッセージ | 職場の雰囲気を見せ、入社後のミスマッチ離職を防ぐ。 | 採用 |
| 10. お客様の声・口コミ紹介 | 第三者の言葉が信頼を補強し、検討中の人の背中を押す。 | 集客 |
共通して大切なのは、プロ並みの編集より「ありのまま」と「お客様目線」です。スマートフォン撮影でも十分に始められます。完璧な1本より、続けられる仕組みを優先しましょう。
始め方3ステップと費用の目安
初めての宿でも、次の3ステップで無理なく立ち上げられます。
誰に向けるか決め、まず撮る
「どんな人に合う宿か」を言語化し、客室ツアーやスタッフ紹介など撮りやすいネタからスマホで撮影。完璧より、ありのままを出すことが第一歩です。
続けられる仕組みをつくる
属人化させず、撮影・投稿を日々の業務に組み込みます。お客様の疑問を「ネタ」として貯め、リアルタイムに配信する習慣がファンを育てます。
数字を見て改善する
視聴データ・コメント・口コミ・予約・応募の動きを見ながら内容を磨きます。「これで満点」はなく、改善し続けることが運用のコツです。
私たちのコンサルの特徴 — 「YouTube上の数字」ではなく「売上・利益」を狙う
ユーチューブビジネスサポートのコンサルは、再生回数やチャンネル登録者数を増やすことを目的にしていません。狙うのは、宿の売上・利益・採用です。
立ち上げを伴走するチャンネル作成プラン(66万円)と、半年で社内に運用を根づかせる内製化コンサル(198万円)を用意しています。詳しくはコンサルプランの内容・料金をご覧ください。
よくある質問
旅館・ホテルのYouTubeで、本当に予約や応募につながりますか?
登録者が少なくても効果はありますか?
スマホだけでも始められますか?
悪い口コミや炎上が心配です。
旅館・ホテルはどんな動画を撮ればいいですか?
成果が出るまでどのくらいかかりますか?
費用はどのくらいかかりますか?
顔出しは必要ですか?
OTA(予約サイト)に頼らずに集客できますか?
著者について
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まとめ|結論
旅館・ホテルにとってYouTubeは、写真や文章では伝わらない「雰囲気」と「人柄」を届け、OTA依存を脱し、採用のミスマッチまで減らせる手段です。鍵は、盛らずに「ありのまま」を、お客様目線で発信し続けること。
蘭亭の実例が示すとおり、登録者の多さより“濃いファン”を育てることが、集客・採用・口コミの好循環を生みます。
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