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生成AIへの経営相談の使い方|Claudeに「あるべき姿」だけ渡す
- 渡すのは2つ。あるべき姿(片づいたときの状態)と、今の状態(起きていること・分かっている原因)。
- 書かないのは1つ。手法(どうやるか)。書くと、そのやり方の中でしか答えが返ってきません。
- 聞き比べると差が出た。集客・採用・社内の3つの相談で、手法つきは合計19の手、あるべき姿だけは合計45の手が返ってきました(当社の実験・各1回)。
- 決めるのは人。返ってきた案から、自社で小さく試せるものを1つ選び、確かめてから広げます。
目的・あるべき姿・手法の違い|渡すのは2つ、書かないのは1つ
似た言葉が3つ出てくるので、先に分けておきます。目的は「何のために」、あるべき姿は「それが叶ったときの状態」、手法は「どうやるか」です。
目的だけを渡すと、向きは伝わりますが、どこまで行けば片づいたのかが伝わりません。あるべき姿まで渡すと、Claudeはその状態にたどり着く道を、自分で探し始めます。一方で手法を書くと、道が1本に決まってしまいます。
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| 言葉 | 意味 | 例 | Claudeに渡すか |
|---|---|---|---|
| 目的 | 何のために | 現場の事故を減らしたい | 渡してよい |
| あるべき姿 | それが叶ったときの状態 | 事故の起きない月が続き、現場の人が安心して働けている | 必ず渡す |
| 今の状態 | いま起きていること・分かっている原因 | 事故がときどき起きている。連絡の行き違いが原因のことが多い | 必ず渡す |
| 手法 | どうやるか | 社内の連絡の書き方を変えたい | 書かない |
出典:当社の整理。例は業種を問わない一般例です。
なぜ手法を書くと、答えが狭くなるのか
2026年9月17日のAI経営実践会(第2回)で、僕は参加された経営者の方にこう話しました。
「Claudeにやることは、あるべき姿だけを入れてください」
会では、現場の事故を減らしたいという例を使いました。やりがちなのは、連絡の書き方をどう変えればいいか、のように、自分が考えた手法や問題点をそのまま聞くことです。そうすると、Claudeは聞かれたことに答えるだけになります。一方で、事故がときどき起きている、これをなくしたい、となくしたい状態を相談すると、自分の頭の中では1つの角度からしか見ていなかった問題を、別の角度から見た案が返ってきます。僕はこうも話しました。
「あるべき姿を相談することで、今まで発想がつかないようなことで意外とすぐに解決できるかもしれない」
同じ会では、プロンプトの言い回しを集めるのは練習であってゴールではないこと、道具を増やす前にあるべき姿は何かを決めること、も話しています。言い回しや道具より先に、何を渡すかを決めるほうが、返ってくる答えは変わります。
出典:AI経営実践会(2026年9月17日・第2回)での酒井の発言。「」内は発言のまま、それ以外は要旨です。
生成AIは、まだ「判断の手前」で使われている
帝国データバンクが2026年3月に行った調査では、生成AIを業務で活用している企業3,560社に「主にどのような業務で活用しているか」を聞いています。
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| 主な活用業務 | 割合 |
|---|---|
| 文章の作成・要約・校正 | 45.1% |
| 情報収集 | 21.8% |
| 企画立案時のアイデア出し | 11.0% |
| データの集計・分析 | 7.4% |
| コード生成などのプログラミング支援 | 5.9% |
出典:帝国データバンク「生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」(調査期間2026年3月17日〜31日・有効回答1万312社のうち、生成AIを業務で活用している企業3,560社)。2026年9月28日に原典で確認。
同じ調査は、生成AIが「業務判断そのものの代替というより、情報整理や文章化など、判断の手前にある業務の補助として用いられている」とまとめています。文章を整える道具としては使われていても、「これからどうするか」を一緒に考える相手としては、まだあまり使われていないと読めます。
経営の相談に使うときに差がつくのは、道具の性能よりも、何を渡すかです。次の章から、その渡し方を見ていきます。
実験|同じ相談を「手法つき」と「あるべき姿」で聞き比べた
「手法を書くと答えが狭くなる」は本当か。2026年9月28日に、当社で確かめました。条件は次のとおりです。
- Claude(Opus 5.5)のシークレットチャット(会社の決め事や過去の会話を持たない状態)で、毎回新しいチャットを開いて1回ずつ聞いた
- 2つの聞き方は、前半(今の状態)を同じ文にし、後半だけを変えた
- 数えたのは、答えの中で見出しや太字で立てられた「手」の数と、そのうち書いた手法の中の話の数
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| テーマ | 共通の前半(今の状態) | 手法つきの後半 | あるべき姿の後半 |
|---|---|---|---|
| 集客 | 従業員20人ほどの会社を経営しています。いまは紹介頼みで、問い合わせが月によって大きく波があります。 | SNSの投稿を増やして問い合わせを増やしたいです。どうすればいいですか? | 半年後には、問い合わせが途切れずに来ている状態にしたいです。やり方はまだ決めていません。考えられる手を挙げてください。 |
| 採用 | 従業員20人ほどの会社を経営しています。求人を出しても応募が少なく、入っても1年以内に辞めてしまう人が続いています。 | 求人票の書き方を直したいです。どうすればいいですか? | 長く働いてくれる人が、毎年少しずつ入ってくる状態にしたいです。やり方はまだ決めていません。考えられる手を挙げてください。 |
| 社内 | 従業員20人ほどの会社を経営しています。細かいことまで私の判断待ちになっていて、現場が止まることがあります。 | 会議の進め方を変えたいです。どうすればいいですか? | 現場で決められることが、現場で決まる状態にしたいです。やり方はまだ決めていません。考えられる手を挙げてください。 |
図1:返ってきた「手」の数(灰色=手法つき/赤=あるべき姿だけ)
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| テーマ | 手法つき | あるべき姿だけ | あるべき姿で増えた手の例 |
|---|---|---|---|
| 集客 | 6(うちSNSの話2) | 13(うちSNSの話1) | アウトバウンド営業、セミナー・勉強会・展示会、検索広告、比較サイトへの掲載、業務提携・相互紹介、代理店制度 |
| 採用 | 8(うち求人票の話6) | 20(うち求人票の話1) | 辞める時期を並べて原因を見る、職場見学・体験入社、相談役の先輩、年間の採用計画、社員紹介の制度 |
| 社内 | 5(うち会議の話3) | 12(うち会議の話0〜1) | 裁量予算、判断基準の言語化、過去の判断を事例に残す、失敗してよい範囲を決める、あえて不在の時間をつくる |
| 合計 | 19(うち書いた手法の話11) | 45(うち書いた手法の話2〜3) | — |
出典:当社の実験(2026年9月28日・Claude Opus 5.5・シークレットチャット・各1回。実施=当社(Claudeによるブラウザ操作)・数え方は当社判定)。社内の「0〜1」は、「判断をまとめて行う時間を週1回つくる」を会議の話に数えるかどうかの違いです。
分かったこと
手法つきでも前提には触れた
3本とも冒頭で「投稿を増やすだけでは問い合わせはあまり増えない」「応募の少なさと早期離職は根っこがつながっている」「根っこは誰が何を決めていいかが曖昧」と返してきました。手法を書いたら手法しか返ってこない、というわけではありません。
それでも中心は書いた手法
手法つきの答えは、19の手のうち11が書いた手法の中の話でした。前提に触れたあとも、答えの大半はSNS・求人票・会議の話に戻っています。
あるべき姿だと手が2倍以上
手の数は19から45へ。書いた手法の話は1割未満になり、集客は「効く速さの順」、採用は「5つの段階」、社内は「4つの分類」と、整理された形で返ってきました。
もう1つ共通していたのは、6本とも最後に「業種は?」「お客様は法人ですか、個人ですか?」のように聞き返してきたことです。今の状態を足すほど、案は自社向けに絞られていきます。
なお、これは各1回の結果です。同じ文面でも、聞くたびに答えは少しずつ変わります(集客のあるべき姿は、人数の抜けた文で送った別の回では11の手でした)。モデルや時期によっても変わるので、数字そのものより「答えの中心がどこにあるか」の違いを見てください。
当社の実例|1行の方針を渡したら、全体の設計が返ってきた
2026年9月22日、当社は「中小企業の集客・採用をYouTubeとClaudeで解決する」という1行の方針を決めました。これが当社の方針です。
Claudeにはこの方針と、それが叶った状態(中小企業が自社で集客・採用を回せている)、今のサイトの状態を渡し、全体の戦略から見直してサイトの記事の見直しと修正まで進めるよう、順番だけを頼みました。どの記事をどう直すか、どんな見出しにするかは書いていません。
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| 区分 | 中身 |
|---|---|
| 渡したもの | 方針の1行と、それが叶った状態(あるべき姿)、今のサイトの状態、見直しの順番(戦略→記事の見直し→修正) |
| 書かなかったもの | どの記事をどう直すか。見出しや言い回しの指定 |
| 返ってきたもの | 肩書の案/記事の柱の分け方/記事から無料診断・相談までの導線/既存記事ごとの扱い(残す・題名を直す・保留)の案 |
| 人がしたこと | 案を読んで、採るものを決めた |
出典:当社の運用(2026年9月22日)。
もし最初に「この記事の題名をこう直して」と手法で頼んでいたら、返ってくるのは題名の案の範囲に収まります。1行の方針を渡したから、肩書や導線のように、頼んだ言葉の外にある案まで返ってきました。最後に採るものを決めたのは僕です。Claudeは案を出し、決めるのは人、という分け方は変わりません。
Claudeへの相談の入れ方|そのまま使える文面
次の文面の〈 〉の中を、自社のことに置き換えて使ってください。
そのまま使える相談の文面
いま〈起きていること〉が続いています。〈分かっている原因や、手元の数字〉。半年後には〈あるべき姿〉になっていたいです。やり方はまだ決めていません。考えられる手を、私が考えていなさそうな角度も含めて挙げてください。使える予算は〈金額〉、動ける人は〈人数〉です。

ポイントは、「やり方はまだ決めていません」と一言入れることです。当社の聞き比べでも、あるべき姿とこの一言を入れた聞き方のほうが、手法を1つに絞らずに、いくつかの道を段階や分類に分けて並べて返してきました。
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| 入れるもの | 入れないもの |
|---|---|
| あるべき姿(片づいたときの状態) | 「◯◯のやり方で」という手法の指定 |
| 起きていること・分かっている原因 | 「◯◯のツールで」という道具の指定 |
| 予算・人手・期限(今の状態として) | 答えの形の決めつけ(「3つに絞って」など) |
| 自社の事業や強みの説明 | 社外に出せない情報(名前・取引先など) |
自社の事業や強みを毎回説明するのが手間なら、自分のことをClaudeに覚えさせておく方法があります。Claudeに自社データを学習させる前ににまとめました。社外に出せない情報の線引きは、生成AIに入力してはいけない情報を見てください。
返ってきた案の選び方|決めるのは人
あるべき姿で相談すると、案がたくさん返ってきます。全部をやろうとせず、次の順で選んでください。
図2:返ってきた案の選び方
1案を並べる
返ってきた案を一覧にして、自分では思いつかなかったものに印を付けます。
2小さく試せる1つを選ぶ
自社の人手とお金で、すぐ試せるものを1つだけ選びます。
3確かめてから広げる
1つ試して、結果を自分の目で確かめてから広げます。
しっくりこないとき
手法を足して聞き直すのではなく、あるべき姿のほうを言い直して、もう一度相談します。
この「1つで試す→目で確かめる→段階で広げる」は、当社がサイトの作業で毎回守っている順番と同じです。まとめて一度に変えると、どこでうまくいかなかったのかが分からなくなります。
そして、どの案を採るかを決めるのは人です。Claudeは自社の現場を見ていません。現場を知っている人が選ぶから、案が使えるものになります。
記事づくりの指示との違い
記事を作るときの指示でも、考え方は同じです。当社は記事づくりで「縛るのは目的、開けておくのは方法」と決めています。詳しくはClaudeの記事作成プロンプトに書きました。
違いは、経営の相談では「今の状態」を細かく渡すと、返ってくる案が自社に合ったものになることです。現状はできるだけ細かく、手法は入れない。この組み合わせが、経営の相談での使い方です。
今日やること3つ
1困りごとを1つ選ぶ
いま一番なくしたい困りごとを、1つだけ選びます。
2片づいた状態を1文で書く
その困りごとが片づいたとき、会社がどうなっているかを1文で書きます。これがあるべき姿です。
3文面で1回聞く
この記事の相談の文面でClaudeに1回聞き、自分が考えていなかった案に印を付けます。
自社の「あるべき姿」を、一緒に言葉にしてみませんか
60分のオンライン無料診断では、集客・採用の今の状態を伺いながら、Claudeへの相談の入れ方と、次に試す1つを一緒に整理します。
※ ITコーディネータ・酒井大輔が対応します。
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よくある質問(FAQ)
Q生成AIに経営の相談をするとき、何を書けばいいですか?+
Q「目的」と「あるべき姿」は何が違いますか?+
Qやり方を書くと、なぜいけないのですか?+
Q手法を書いて聞くと、Claudeの答えは悪くなりますか?+
Q会社の数字や事情は、どこまで入れていいですか?+
Q返ってきた案が多すぎて選べません。+
QChatGPTなど他の生成AIでも同じですか?+
まとめ
- 生成AIに経営の相談をするとき、Claudeに渡すのは「あるべき姿」と「今の状態」の2つ。手法は書きません。
- 手法を書くと、答えの中心はそのやり方の中にとどまります。当社の聞き比べでは、あるべき姿で聞いたほうが返ってきた手が2倍以上(19→45)でした。
- 返ってきた案は、小さく試せる1つを選び、確かめてから広げる。決めるのは人です。





















